登録販売者 第3章 主な医薬品とその作用 問55:主な医薬品とその作用(漢方処方製剤・生薬)
柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア柴胡桂枝湯は体力が中等度またはやや虚弱の人に用いられ、発熱・寒気・頭痛・吐き気などを伴う感冒の中期から後期に適するとされる。
- イ柴胡桂枝湯はカンゾウ(甘草)を含むため、長期服用で偽アルドステロン症が生じるおそれがある。
- ウ柴胡桂枝湯はダイオウ(大黄)を含む処方であり、妊婦・授乳婦への使用は禁忌とされている。正答
- エ柴胡桂枝湯のまれな重篤副作用として間質性肺炎が知られており、空咳や息切れ等の症状が出た場合は直ちに使用を中止して受診する必要がある。
- オ柴胡桂枝湯のまれな重篤副作用として肝機能障害(黄疸を含む)が知られており、疲れやすい・食欲不振・皮膚や白目が黄色くなる等の症状に注意が必要である。
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正答はウ(誤っているもの)です。
柴胡桂枝湯にはダイオウ(大黄)は含まれていません。ダイオウを含む処方は防風通聖散・大黄甘草湯・麻子仁丸などです。「ダイオウを含む=妊婦禁忌」の暗記セットはよく出ますが、柴胡桂枝湯はこれに当てはまりません。
語呂で覚えるなら「柴胡(さいこ)=サイコ(サイコロ)の中間」→体力が「中等度またはやや虚弱」という中間の証が特徴です。感冒の初期を超えた中期以降・胃腸症状も伴うかぜに向きます。重篤副作用として間質性肺炎と肝機能障害(エ・オ)は正しい記述で、柴胡系漢方の重要注意点です。
柴胡桂枝湯の基本情報:
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 体力の目安(証) | 中等度またはやや虚弱(中間証) |
| 主な適応 | 感冒中期〜後期・発熱・寒気・吐き気・胃腸症状(下痢・腹痛)を伴うかぜ |
| カンゾウ含有 | あり(甘草)→偽アルドステロン症リスク |
| マオウ含有 | なし |
| ダイオウ含有 | なし ← ウの誤りの根拠 |
| 重篤副作用 | 間質性肺炎・肝機能障害 |
柴胡桂枝湯は小柴胡湯(しょうさいことう)と桂枝湯(けいしとう)を合わせた処方です。小柴胡湯の間質性肺炎・肝機能障害のリスクは手引きで特記されており、柴胡桂枝湯にも同様の注意が必要です。
各選択肢の解説:
- ア(正): 柴胡桂枝湯の証は中等度またはやや虚弱(中間証)で、感冒の初期より少し後の段階(中期〜後期)に向く。発熱・寒気・頭痛・吐き気・腹痛などを伴う場合に用いられる。
- イ(正): カンゾウを含むため偽アルドステロン症のリスクがある。長期服用や他のカンゾウ含有漢方との重複使用に注意。
- ウ(誤・正答): ダイオウを含まない。「ダイオウ含有→妊婦禁忌・授乳婦注意」というルールは正しいが、柴胡桂枝湯はダイオウ非含有処方なのでこの記述は誤り。
- エ(正): 柴胡を含む処方には間質性肺炎のまれな重篤副作用がある。空咳・発熱・息切れが出たら即中止・受診が必要。
- オ(正): 肝機能障害(黄疸を含む)もまれな重篤副作用として知られる。倦怠感・食欲不振・皮膚・白目の黄染(黄疸)が初期症状。
【柴胡(サイコ)の薬理と柴胡系漢方の副作用機序】
柴胡桂枝湯の核心生薬であるサイコ(柴胡)の基原: セリ科ミシマサイコ(Bupleurum falcatum L.)の根。主成分はサイコサポニン群(a・b・c・d型)。
サイコサポニンの薬理作用:
- 抗炎症(副腎皮質ホルモン分泌促進・プロスタグランジン合成抑制)
- 免疫調節(マクロファージ活性化・NK細胞活性化)
- 肝保護(CCl₄誘発肝障害モデルで肝細胞保護)
- 鎮静・鎮痛・解熱
間質性肺炎の機序(柴胡系漢方に共通):
機序は完全に解明されていないが、主に2つの説が提唱されています:
1. 免疫学的機序(アレルギー性): サイコサポニン・漢方成分に対するT細胞感作→遅延型過敏反応→肺の間質に炎症細胞(リンパ球・マクロファージ)が浸潤→間質性肺炎。特に小柴胡湯では1990年代に間質性肺炎の副作用報告(死亡例を含む)が相次ぎ、医療用小柴胡湯の添付文書に重大な注意(インターフェロン製剤との併用禁忌、肝硬変・肝癌患者への投与回避等)が追記された経緯がある。
2. 直接障害: 一部の生薬成分が肺胞上皮細胞・毛細血管内皮細胞に直接ダメージを与える可能性。
初期症状と対応:
- 初期: 乾いた咳(空咳)・発熱・息切れ・倦怠感
- 進行: 低酸素血症・拡散障害(胸部画像でスリガラス影・浸潤影)
- 対応: 発症初期でも疑ったら即中止→受診(ステロイド治療が有効なことがある)
肝機能障害の機序(柴胡系漢方):
1. 薬物代謝性肝障害(代謝毒性型): 漢方成分(特に複数生薬の複合体)がCYP3A4等の代謝酵素で活性化された代謝産物が肝細胞ミトコンドリア機能障害・脂質過酸化を引き起こす。
2. アレルギー性肝障害(免疫性): 漢方成分をハプテンとしたT細胞依存性の免疫反応→肝炎像(好酸球浸潤・肉芽腫形成を伴うこともある)。
症状の進行:
- 初期: 疲れやすい・食欲不振・腹部違和感・悪心
- 進行: AST・ALT・ALP・γ-GTP上昇(血液検査で明確)→黄疸(ビリルビン上昇→皮膚・白目の黄染)→重症では肝不全
登録販売者が確認すべき事項(柴胡系漢方購入者に対して):
1. 既に肝臓病の診断・治療を受けていないか
2. 現在インターフェロン(肝炎治療)を使用していないか(小柴胡湯との併用→間質性肺炎リスク増大)
3. 乾いた咳・息切れ・黄疸の初期症状がないか
4. 他の肝機能に影響する医薬品・アルコールの過剰摂取がないか
【小柴胡湯との違いを踏まえた柴胡桂枝湯の使い分け】
| 項目 | 小柴胡湯 | 柴胡桂枝湯 |
|---|---|---|
| 証 | 中等度(少陽病期) | 中等度またはやや虚弱 |
| 主な使用場面 | 胃腸症状・肝炎補助・微熱が続く感冒後期 | 感冒中期〜後期・腹痛・下痢を伴う |
| 桂枝湯(ケイヒ・シャクヤク等)成分の追加 | なし | あり→体表の発散と胃腸保護を強化 |
| 間質性肺炎注意 | あり(手引きで明記) | あり(同様の注意) |
| 肝機能障害注意 | あり | あり |
上位資格への接続: 柴胡桂枝湯は漢方医学の「少陽病(太陽と陽明の中間)」に位置し、外邪が体表から半表半裏(少陽)に移行した状態に対応する。薬剤師国家試験では「柴胡剤(柴胡含有処方群)」として間質性肺炎・肝機能障害のリスクが横断的に問われる。登録販売者の実務では「乾いた咳が続く」「黄疸らしき症状」を訴える顧客が漢方を使用している場合、まず服用中の漢方を確認し受診勧奨を行うことが最重要の対応となる。
<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): 正答ウ(柴胡桂枝湯=ダイオウ含有→妊婦禁忌は誤り)は正しく一意。柴胡桂枝湯はカンゾウ含有・マオウ/ダイオウ非含有、重篤副作用に間質性肺炎・肝機能障害(手引きで柴胡剤・小柴胡湯系に特記)で確定。アの「中等度またはやや虚弱」「感冒の中期から後期」も手引きのしばり範囲内で正。小柴胡湯の副作用報告の具体例数(旧「約188例」)は手引き範囲外の数値断定のため、添付文書改訂の経緯(インターフェロン併用禁忌追記)を中心とした記述に置換。出典: 一般用漢方製剤承認基準・医療用小柴胡湯添付文書。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第3章 第15節「漢方処方製剤・生薬製剤」 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。