登録販売者 第3章 主な医薬品とその作用 問57:主な医薬品とその作用(漢方処方製剤・生薬)
安中散(あんちゅうさん)と人参湯(にんじんとう・別名:理中丸)に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア安中散は体力が虚弱な人から中等度の人に向き、冷え・胃痛・胃酸過多・胸やけなど胃の弛緩状態に伴う症状に用いられる。
- イ人参湯(理中丸)は体力が虚弱な人に向き、冷えが強く胃腸の機能が衰えている人の腹痛・腹部膨満・下痢に用いられる。
- ウ安中散はカンゾウ(甘草)を含むため、偽アルドステロン症や低カリウム血症に注意が必要である。
- エ人参湯はダイオウ(大黄)を含む処方であり、腸管を刺激して下痢症状の改善に用いられる。正答
- オ安中散と人参湯はいずれも胃腸の冷えに対する処方であるが、人参湯は胃腸の機能がより衰えた虚弱な状態に向くとされる。
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正答はエ(誤っているもの)です。
人参湯(理中丸)にはダイオウ(大黄)は含まれていません。人参湯の構成生薬はニンジン(人参)・ビャクジュツ(白朮)・カンキョウ(乾姜)・カンゾウ(甘草)の4種類で、下剤成分は含みません。むしろ下痢を「止める」方向に作用します。
語呂で覚えるなら「安中(あんちゅう)=弛緩した胃を安定させる」「人参(にんじん)湯=ニンジンが胃腸虚弱を補う」。安中散は胃の弛緩(胃酸過多・胸やけ)、人参湯は胃腸がより弱った虚弱状態に向きます。どちらも「冷え」が共通キーワードです。
安中散と人参湯の証・組成比較:
| 項目 | 安中散 | 人参湯(理中丸) |
|---|---|---|
| 体力の目安(証) | 虚弱〜中等度(虚証〜中間) | 虚弱(虚証) |
| 主な適応 | 胃痛・腹痛・胸やけ・胃酸過多・げっぷ・食欲不振(胃弛緩型) | 腹痛・腹部膨満・下痢・嘔吐・冷えが強い胃腸機能低下 |
| 冷えの有無 | あり(冷えによる胃の症状) | あり(強い冷え・四肢の冷え) |
| カンゾウ含有 | あり | あり |
| マオウ含有 | なし | なし |
| ダイオウ含有 | なし | なし ← エの誤りの根拠 |
| 代表生薬 | ケイヒ・エンゴサク・ボレイ・ウイキョウ・シュクシャ・カンゾウ・リョウキョウ(7生薬) | ニンジン・ビャクジュツ・カンキョウ・カンゾウ(4生薬) |
各選択肢の解説:
- ア(正): 安中散は虚弱から中等度の人に用いる。胃の弛緩(蠕動が弱く胃酸が逆流する状態)・胃痛・胸やけ・げっぷに適する。
- イ(正): 人参湯は虚弱な人向け。冷えが強く四肢が冷たく、胃腸機能が衰えた状態(腹部が冷たく柔らかい)の腹痛・下痢・嘔吐に用いる。
- ウ(正): 安中散はカンゾウを含む。偽アルドステロン症・低カリウム血症(手足のだるさ・筋力低下)への注意が必要。
- エ(誤・正答): 人参湯にダイオウは含まれない。ダイオウは刺激性瀉下成分で「下痢症状の改善」には使わない(むしろ便秘に使う)。人参湯はカンキョウ(乾燥生姜)による温熱作用・ニンジンによる補気で胃腸機能を高めて下痢を止める方向に働く。
- オ(正): 両処方とも冷え型の胃腸症状に使うが、人参湯はより虚弱・冷えが強い人向け。安中散は胃弛緩(弛緩型胃炎)、人参湯は虚弱な胃腸機能低下という使い分けが重要。
【安中散の構成生薬と胃弛緩への薬理機序】
安中散の7生薬の役割:
| 生薬 | 主な薬理 |
|---|---|
| ケイヒ(桂皮): シナモン樹皮 | 温熱・健胃・鎮痙(胃腸の痙攣緩和)・抗菌(Helicobacter pylori抑制の報告あり) |
| エンゴサク(延胡索): ケシ科の塊茎 | 鎮痛(テトラヒドロコプチシンがD₂受容体遮断・μオピオイド受容体作動)・鎮痙 |
| ボレイ(牡蛎): イタボガキの貝殻 | 制酸(CaCO₃主体)・収斂・鎮静 |
| ウイキョウ(茴香): セリ科のフェンネル果実 | 芳香健胃・鎮痙・駆風(胃腸のガスを除く) |
| シュクシャ(縮砂): ショウガ科の果実 | 芳香健胃・理気・温中(胃腸を温める) |
| カンゾウ(甘草) | 鎮痙・抗炎症・粘膜保護・調和諸薬 |
| リョウキョウ(良姜): ショウガ科ハナミョウガ属の根茎 | 温胃止嘔(胃を温め吐き気を抑える)・健胃・鎮痛 |
胃弛緩(胃アトニー)への作用機序: エンゴサクの鎮痛鎮痙作用・ケイヒの鎮痙・ウイキョウやシュクシャのアネトール等による胃腸蠕動調整・リョウキョウの温胃作用が複合的に働き、冷え・痛みのある胃弛緩状態を緩和する。ボレイ(炭酸カルシウム主体)が胃酸を中和する制酸効果も持ち合わせるため、胃酸過多・胸やけにも有効。
【人参湯(理中丸)の構成生薬と虚寒証への薬理】
人参湯の4生薬(最小構成)の役割:
| 生薬 | 主な成分・薬理 |
|---|---|
| ニンジン(人参): ウコギ科高麗人参の根 | サポニン(ジンセノシド)による免疫調節・抗疲労・補気(気を補う)・健胃促進 |
| ビャクジュツ(白朮): キク科オオバナオケラ等の根茎 | 健脾(脾胃の機能強化)・利水(体内余分な水分除去)・乾燥・止瀉 |
| カンキョウ(乾姜): ショウガを乾燥させたもの | 温裏(内部を温める)・温熱・健胃・止瀉(腸管を温めて冷えによる下痢を止める) |
| カンゾウ(甘草) | 鎮痙・粘膜保護・調和諸薬 |
カンキョウ(乾姜)とショウキョウ(生姜)の違い: ショウキョウ(生)は主に発散・温表(体表を温める)作用。カンキョウ(乾燥加工)は温裏(内部・腹部を温める)作用が強くなる→人参湯の強い冷え改善には乾燥した生姜(カンキョウ)が使われる。
【安中散・人参湯の使い分けと登録販売者の実務判断】
購入者の訴えと処方の対応:
| 訴えのパターン | 適する処方 | 不向きな処方 |
|---|---|---|
| 胃がもたれる・むかつく・食べると胃が重い・げっぷが多い | 安中散 | 人参湯(下痢向き) |
| 冷えると腹痛・下痢・冷え体質で消化器が弱い | 人参湯 | 安中散(弛緩型向き) |
| 胃酸が上がる・胸やけ | 安中散(ボレイの制酸) | — |
| 口呼吸・四肢が冷えて元気がない・胃腸が弱い | 人参湯(補気補脾) | — |
どちらの処方でも確認すべき事項:
- カンゾウ含有のため、他に漢方・カンゾウ含有医薬品を使用していないか
- 体力が充実した実証の人には向かない(どちらも虚証〜中間向け)
- 症状が続く・改善しない場合は受診勧奨(消化器器質疾患の除外)
上位資格への接続: 人参湯は「四君子湯(ニンジン・ビャクジュツ・ブクリョウ・カンゾウ)」と近い構成で、消化器系を補う処方群の基本となる。現代医学的にはニンジン(高麗人参)のジンセノシドRb1・Rg1が腸管上皮の増殖促進・免疫調節・腸管蠕動改善に関与する可能性が研究されている。安中散はH. pylori(ピロリ菌)除菌治療の補助として胃粘膜の保護目的に用いられることもあり、漢方と現代医療の統合的活用の場面が増えている。
<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): 正答エ(人参湯=ダイオウ含有→下痢改善は誤り)は正しく一意。人参湯4生薬(ニンジン・ビャクジュツ・カンキョウ・カンゾウ)はダイオウ非含有・止瀉方向で確定。安中散の構成生薬を訂正: 標準7生薬は「ケイヒ・エンゴサク・ボレイ・ウイキョウ・シュクシャ(縮砂)・カンゾウ・リョウキョウ(良姜)」。作問時の「ショウキョウ・チンピ」は誤りでstandard表・advanced表の2箇所を訂正。安中散・人参湯ともカンゾウ含有・マオウ/ダイオウ非含有は正。出典: ツムラ5安中散・ツムラ32人参湯添付文書、一般用漢方製剤承認基準。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第3章 第15節「漢方処方製剤・生薬製剤」 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。