登録販売者 第3章 主な医薬品とその作用 問58:主な医薬品とその作用(漢方処方製剤・生薬)
平胃散(へいいさん)に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア平胃散は体力が虚弱な人(虚証)に適しており、食欲がない・疲れやすいなど消化器が全体的に弱い人の胃腸を補う処方である。
- イ平胃散は食べ過ぎ・飲み過ぎによる胃もたれ・消化不良・食欲不振に用いられ、体力が中等度の人を目安とする処方である。正答
- ウ平胃散はマオウ(麻黄)を含む処方であり、心臓病・高血圧の人は使用前に相談が必要である。
- エ平胃散はダイオウ(大黄)を多量に含み、食べ過ぎの際の便秘解消を主な目的とする瀉下薬として用いられる。
- オ平胃散と六君子湯はほぼ同じ証(体力虚弱)に用いられ、いずれも胃腸が弱い人に第一選択とされる処方で互いに代替可能である。
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正答はイ(正しいもの)です。
平胃散のキーワードは「食べ過ぎ・飲み過ぎ」です。体力中等度の人が食事の過剰摂取で胃がもたれる・消化不良になる場合に向きます。
平胃散と六君子湯の違いを覚えるなら「平胃(へいい)散=食べ過ぎの胃をへい(平)らかに」「六君子(りくくんし)湯=虚弱な胃腸を6つの生薬で補う」。平胃散は実寄り(食べ過ぎ型)、六君子湯は虚弱型です。
ア(虚弱向き)は六君子湯の説明、ウ(マオウ含有)・エ(ダイオウ含有)は誤り、オ(同じ証・代替可能)も誤りです。平胃散・六君子湯にはマオウもダイオウも含まれません。
平胃散と六君子湯の証・組成比較:
| 項目 | 平胃散 | 六君子湯 |
|---|---|---|
| 体力の目安(証) | 中等度(実寄り・食べ過ぎ型) | 中等度以下(虚弱〜中間) |
| 主な適応 | 食べ過ぎ・飲み過ぎによる胃もたれ・消化不良・食欲不振・胃部膨満 | 胃弱・食欲不振・胃もたれ・吐き気・疲れやすい(慢性的な胃腸虚弱) |
| カンゾウ含有 | あり | あり |
| マオウ含有 | なし | なし |
| ダイオウ含有 | なし | なし |
| 代表生薬 | ソウジュツ・コウボク・チンピ・カンゾウ・ショウキョウ・タイソウ(6生薬) | ニンジン・ビャクジュツ・ブクリョウ・ハンゲ・チンピ・カンゾウ(+ショウキョウ・タイソウ)(8生薬) |
各選択肢の解説:
- ア(誤): 虚弱な人の胃腸を補う処方は六君子湯。平胃散は体力中等度の実寄りの人向けで、食べ過ぎ・飲み過ぎという実証的な状態に用いる。
- イ(正): 食べ過ぎ・飲み過ぎによる胃もたれ・消化不良・食欲不振(過食後)に体力中等度の人に用いるのが平胃散の正しい説明。
- ウ(誤): マオウは含まれない。心臓病・高血圧への注意はマオウ含有処方に限られる。
- エ(誤): ダイオウは含まれない。平胃散は食べ過ぎ・消化不良に用いる処方で、瀉下(便秘解消)を主目的とした処方ではない。
- オ(誤): 平胃散(食べ過ぎ・中等度)と六君子湯(虚弱な胃腸)は証が異なり代替不可。証に合わない使用は効果が低下したり副作用リスクが高まる。
平胃散の中核生薬ソウジュツの役割: 燥湿健脾(余分な湿気を取り除き脾胃を整える)→食べ過ぎで胃に「湿」が滞っている状態を改善。コウボクが気の滞り(気滞)を解消してチンピが消化促進する。
【平胃散の構成生薬詳細と「湿邪」除去の薬理】
平胃散の6生薬の役割:
| 生薬 | 基原・成分 | 主な薬理 |
|---|---|---|
| ソウジュツ(蒼朮) | キク科ホソバオケラ(Atractylodes lancea)の根茎 | 健脾燥湿(過剰な消化液・胃内の「湿」除去)・胃腸蠕動促進・利水 |
| コウボク(厚朴) | モクレン科ホオノキ等の樹皮 | 理気(気の滞りを解消)・鎮痙・胃腸蠕動改善 |
| チンピ(陳皮) | ミカン科ウンシュウミカン等の成熟果皮(陳久のもの) | 芳香健胃・理気・袪痰・消化酵素分泌促進 |
| カンゾウ(甘草) | マメ科カンゾウ(Glycyrrhiza uralensis等)の根 | 鎮痙・抗炎症・粘膜保護・調和諸薬 |
| ショウキョウ(生姜) | ショウガ科ショウガの根茎(生) | 健胃・鎮吐・末梢循環改善 |
| タイソウ(大棗) | クロウメモドキ科ナツメの果実 | 滋養強壮・安神・調和諸薬・胃腸保護 |
ソウジュツとビャクジュツの違い(試験での区別ポイント):
- ソウジュツ(蒼朮): 燥湿の作用が強い→実証・過食型の湿邪除去に
- ビャクジュツ(白朮): 補気健脾の作用が強い→虚証・虚弱型の胃腸強化に
平胃散がソウジュツを使い六君子湯がビャクジュツを使う理由は、この証の違いを反映しています。
【六君子湯との相違点を深堀り:四君子湯系との比較】
六君子湯は「四君子湯(ニンジン・ビャクジュツ・ブクリョウ・カンゾウ)」に「二陳湯(ハンゲ・チンピ)」を加えた処方です。
六君子湯の薬理:
- ニンジン(ジンセノシド): 補気・免疫調節・グレリン(食欲増進ホルモン)分泌促進(現代研究)
- ビャクジュツ(アトラクチロジン): 脾胃補強・止瀉
- ブクリョウ(β-パキマン): 利水・鎮静・免疫調節
- ハンゲ(ハンゲアルカロイド): 鎮吐・制嘔
六君子湯の現代的応用: 機能性ディスペプシア(FD)・胃がん術後の胃腸機能回復・化学療法による食欲不振改善の補助として医療用漢方でも使用される。グレリン分泌促進による食欲改善効果が複数の臨床研究で示されている。
【登録販売者による購入者へのカウンセリング実践】
平胃散が適する購入者像:
- 「昨日食べ過ぎ・飲み過ぎて胃が重い・もたれる」(一時的な過食後)
- 「お腹がいっぱいでも食べてしまう・その後胃がもたれる」
- 体力があり、普段は健康な人の胃の一時的な不調
六君子湯が適する購入者像:
- 「慢性的に胃腸が弱い・食欲がない・疲れやすい」
- 「少し食べただけで胃が重くなる・消化に時間がかかる」
- 体力が低め・虚弱体質の人
カンゾウ含有の注意(両処方共通):
- 他の漢方を複数服用していないか確認(グリチルリチン酸の重複チェック)
- 長期連用(1ヶ月以上)の場合は偽アルドステロン症の初期症状(手足のだるさ・むくみ・血圧上昇)に注意するよう伝える
- 1ヶ月以上使用しても改善しない場合は受診勧奨
上位資格への接続: 平胃散は日本漢方の「胃散(いさん)」系製品(太田胃散等に配合される生薬群)の源流ともなる処方で、江戸時代には広く民間で使われた歴史がある。現代では生薬製剤(チンピ・コウボク・ソウジュツなどを含む胃腸薬)として大衆薬市場にも多く存在する。薬剤師国家試験・漢方専門医では「過食後の湿証」「脾胃の湿困(しつこん)」として出題され、食生活の乱れ・現代病(ドカ食い・飲み過ぎ)への対応として漢方の現代的意義が問われる。
<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): 正答イ(平胃散=食べ過ぎ・飲み過ぎ・体力中等度)は正しく一意。平胃散6生薬(ソウジュツ・コウボク・チンピ・カンゾウ・ショウキョウ・タイソウ)はカンゾウ含有・マオウ/ダイオウ非含有で確定。一般用漢方製剤承認基準の平胃散にダイオウは含まれないため、作問時の「一部にダイオウを少量添加した製品が存在」という紛らわしい但し書きを削除(誤答エの一意性を確保)。アは六君子湯の説明(虚弱向き)、オ(証が同一・代替可能)も誤りで確定。出典: ツムラ79平胃散・ツムラ43六君子湯添付文書、一般用漢方製剤承認基準。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第3章 第15節「漢方処方製剤・生薬製剤」 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。