登録販売者 第3章 主な医薬品とその作用 問63:主な医薬品とその作用(漢方処方製剤・生薬)
芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア芍薬甘草湯は体力が充実した実証の人に向く処方であり、虚弱・高齢者への使用は禁忌とされている。
- イ芍薬甘草湯はカンゾウ(甘草)を含まない処方であり、こむらがえり・筋肉のけいれんに即効性があるとして知られている。
- ウ芍薬甘草湯はカンゾウを比較的多く含む処方であり、偽アルドステロン症(低カリウム血症・血圧上昇・むくみ)が生じるおそれがあるため、長期連用を避ける必要がある。正答
- エ芍薬甘草湯はダイオウ(大黄)を含む瀉下成分が主体の処方で、こむらがえりに伴う腸管の痙攣にも有効とされる。
- オ芍薬甘草湯の「証」は体力が中等度以上に限定されており、体力が低下した高齢者・虚弱者には別の処方が必要とされる。
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正答はウ(正しいもの)です。
芍薬甘草湯のキーワードは2つ:「こむらがえり(筋肉のけいれん)への即効性」と「カンゾウが多い→偽アルドステロン症に注意」です。
芍薬甘草湯はシャクヤク(芍薬)とカンゾウ(甘草)の2生薬だけで構成された非常にシンプルな処方ですが、その分カンゾウの比率が高い。偽アルドステロン症(むくみ・血圧上昇・低カリウム血症)のリスクが高まるため、長期連用は避けるのが大原則です。
ア(実証限定・虚弱禁忌)は誤り、イ(カンゾウ非含有)は真逆で誤り、エ(ダイオウ含有)は誤り、オ(中等度以上限定)も誤りです。
芍薬甘草湯の基本情報:
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 体力の目安(証) | 虚実に関係なく広く使用(特に体力に関係なし) |
| 主な適応 | こむらがえり・筋肉のけいれん・腹痛(急性の筋肉痙攣全般) |
| カンゾウ含有 | あり(甘草・シャクヤクと2成分のみ)→比率が高い |
| マオウ含有 | なし |
| ダイオウ含有 | なし |
| 最大の特徴 | 即効性(筋肉痙攣に素早く効く)・カンゾウ大量による偽アルドステロン症注意 |
グリチルリチン酸(カンゾウ由来)の1日摂取量の問題:
芍薬甘草湯はカンゾウ(甘草)の比率が他の漢方に比べて高く、1日量のグリチルリチン酸が多くなる傾向があります。グリチルリチン酸の1日摂取上限目安は40mgであり、芍薬甘草湯を他のカンゾウ含有漢方と重ねて使うと容易に超えます。
各選択肢の解説:
- ア(誤): 証は「虚実に関係なく」広く使える。虚弱・高齢者にも使用可能。「禁忌」ではない。
- イ(誤): カンゾウは必ず含む(処方名の「甘草」がカンゾウそのもの)。カンゾウなしでは芍薬甘草湯にならない。
- ウ(正): カンゾウ比率が高い→偽アルドステロン症(低カリウム血症・むくみ・血圧上昇・筋力低下)のリスク。長期連用を避け、症状が出たら中止・受診が必要。正しい記述。
- エ(誤): ダイオウを含まない。瀉下成分なし。腸管痙攣(腹痛)にはシャクヤクの鎮痙作用で効果があるが、ダイオウによるものではない。
- オ(誤): 証の制限はなく、高齢者・虚弱者にも使用できる。ただし高齢者は偽アルドステロン症(低カリウム血症性ミオパチー)に特に注意が必要。
こむらがえりの即効性の理由: シャクヤクのペオニフロリン(モノテルペン配糖体)が神経筋接合部の調節・筋肉の弛緩に関与し、カンゾウのグリチルリチン酸・フラボノイドが筋肉のけいれんを和らげるよう働く。
【芍薬甘草湯の2生薬の詳細薬理:シャクヤクとカンゾウの協働】
シャクヤク(芍薬: ボタン科ボタン属 Paeonia lactiflora の根)の成分と薬理:
| 成分 | 薬理 |
|---|---|
| ペオニフロリン(芍薬の主成分) | 平滑筋・骨格筋の弛緩(Ca²⁺拮抗・中枢性)・鎮痛・抗けいれん |
| ペオノール | 抗炎症(COX阻害)・抗血小板 |
| 没食子酸 | 収斂・抗菌 |
筋肉痙攣(こむらがえり)への機序:
1. Ca²⁺拮抗作用: 筋細胞内Ca²⁺流入を抑制→筋収縮の持続が緩和
2. GABA模倣: 中枢・脊髄でGABA様の筋弛緩効果
3. 神経筋接合部: アセチルコリン放出抑制→神経性の過剰収縮を抑制
カンゾウ(甘草: Glycyrrhiza uralensis等の根)の成分と作用:
- グリチルリチン酸は抗炎症・11β-HSD2阻害(偽アルドステロン症の機序)
- フラボノイド(リクイリチン等)は神経保護・鎮静・血管保護
シャクヤクとカンゾウの相互作用(薬理学的):
- シャクヤクのペオニフロリン+カンゾウのグリチルリチン酸の組み合わせは単剤より強い鎮痙作用を示す(協同作用)
- 「芍甘」の組み合わせは漢方において「酸甘化陰(さんかんかいん)」と呼ばれ、陰(潤い・栄養)を生み出して筋肉を養うとされる
【偽アルドステロン症の詳細機序と芍薬甘草湯特有のリスク】
芍薬甘草湯のカンゾウ比率:
- 芍薬甘草湯はシャクヤク6g+カンゾウ6g(日局エキス剤の標準例)
- 他の多生薬処方(葛根湯・六君子湯等)ではカンゾウは1〜3g程度
- 芍薬甘草湯は漢方処方中でも高濃度のカンゾウを含む部類
偽アルドステロン症の進行:
グリチルリチン酸→11β-HSD2阻害→コルチゾール→アルドステロン受容体結合→Na+貯留・K+排泄
初期症状(見逃しやすい): 手足のだるさ・脱力感・筋力低下
中等度: 下肢のこわばり・血圧上昇・浮腫(体重増加)
重症: 低カリウム血症性ミオパチー(筋崩壊・横紋筋融解症に進展する場合がある)
特に高リスクな状況:
1. こむらがえりが頻繁→長期連用
2. 他のカンゾウ含有薬(外用消炎剤・胃腸薬・他の漢方)を重ねている
3. 高齢者(腎機能低下でK+排泄が遅れる)
4. 利尿薬・ループ利尿薬(サイアザイド)服用中(相乗的K+低下)
【こむらがえりの現代医学的管理と芍薬甘草湯の位置づけ】
こむらがえり(有痛性筋痙攣)の主な原因:
- 電解質異常: Mg²⁺不足・K+不足(長時間の運動・発汗・透析後)
- 末梢血流不足: 下肢動脈硬化(閉塞性動脈硬化症)
- 神経障害: 腰部脊柱管狭窄症・糖尿病性神経障害
- 夜間の冷え・脱水・過労
管理の選択肢:
| 選択肢 | 特徴 |
|---|---|
| 芍薬甘草湯(漢方) | 即効性・頓服使用可能・偽アルドステロン症リスクあり(長期不可) |
| Mg補給(食事・サプリ) | 根本的なMg不足の改善・副作用少 |
| 運動・ストレッチ | 予防的・非薬物療法 |
| 医療用薬(クロナゼパム等) | 医師処方が必要 |
登録販売者の実務ポイント:
- 「こむらがえりが頻繁」→芍薬甘草湯は頓服(その都度使用)に留め、長期連用は勧めない
- 「毎日飲んでいる」という顧客には偽アルドステロン症の初期症状を説明し、症状がなくても月1回程度の受診を勧奨
- 高齢者・利尿薬服用中はリスクが高いため特に慎重に対応
上位資格への接続: 芍薬甘草湯はこむらがえりへの漢方の中で唯一「即効性が認められている」とされ、薬剤師国家試験でも「頓服使用・偽アルドステロン症リスク・長期連用禁止」がセットで出題される。近年の透析患者のこむらがえり管理において、芍薬甘草湯とマグネシウム補給の効果比較研究も進んでおり、個別の患者背景に応じた選択が重要な実臨床テーマとなっている。
<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): 正答ウ(カンゾウを比較的多く含む→偽アルドステロン症→長期連用を避ける)は正しく一意。芍薬甘草湯はシャクヤク・カンゾウの2生薬(標準でシャクヤク6g・カンゾウ6gと甘草比率が高い)、マオウ/ダイオウ非含有、しばりは「体力に関わらず」で確定。ア(実証限定・虚弱禁忌)・オ(中等度以上限定)はしばり誤り、イ(カンゾウ非含有)・エ(ダイオウ含有)は生薬有無で誤りと確定。手引きでも偽アルドステロン症の重点警告処方。advancedのシャクヤク成分の誤った括弧書き「ペオニフロリン(ベンゾイルパルミチン酸)」を訂正(ペオニフロリンはモノテルペン配糖体)。出典: ツムラ68芍薬甘草湯添付文書・一般用漢方製剤承認基準・医薬品安全性情報。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第3章 第15節「漢方処方製剤・生薬製剤」 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。