登録販売者 第3章 主な医薬品とその作用 問66:主な医薬品とその作用(漢方処方製剤・生薬)
漢方処方の「証(しょう)」と「しばり」表現に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア漢方では「証」は体質・体力・症状を総合的に判断したものであり、同じ病名でも証が異なれば用いる処方は異なる。
- イ「虚実(きょじつ)」は体力・体質の軸で、体力が充実して抵抗力が強い状態を「実証」、体力が虚弱で疲れやすい状態を「虚証」という。
- ウ一般用漢方製剤の添付文書に記載される「しばり」とは、処方に適した体質・症状を示す言葉であり、「体力中等度以下のものの〜」のような表現で示される。
- エ「陰陽(いんよう)」は体の状態を分類する軸の一つで、活動性が高く体が熱を帯びた状態を「陰証」、体が弱って熱が低い状態を「陽証」という。正答
- オ「寒熱(かんねつ)」は症状の性質を示す軸で、冷えを特徴とする状態を「寒証」、熱・炎症・のぼせを特徴とする状態を「熱証」という。
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正答はエ(誤っているもの)です。
「陰陽」の説明が逆になっています。正しくは、活動性が高く体が熱を帯びた状態が「陽証」、体が弱って熱が低い・冷える状態が「陰証」です。エの文は陰と陽を入れ替えて記述しているため誤りです。
語呂で覚えるなら「陽→太陽→明るく活発→熱い・実証寄り」「陰→陰気→暗く沈んで→冷え・虚証寄り」。
漢方の証を整理すると:
- 虚実: 体力が強い(実)↔弱い(虚)
- 陰陽: 活動的・熱い(陽)↔弱って冷える(陰)
- 寒熱: 冷えが中心(寒証)↔熱・のぼせが中心(熱証)
これらの組み合わせで処方が決まります。
漢方の「証」の3軸と「しばり」の読み方:
| 軸 | 定義 | 陽側(正方向) | 陰側(逆方向) | 実務の判断例 |
|---|---|---|---|---|
| 虚実 | 体力・体質の総合的強さ | 実証(体力充実・抵抗力強) | 虚証(体力虚弱・疲れやすい) | 体力があるか?→実証/虚証 |
| 陰陽 | 体全体の活動性・代謝の状態 | 陽証(活動的・熱性・代謝活発) | 陰証(沈静・冷え・代謝低下) | 体が熱いか?→陽証/陰証 |
| 寒熱 | 症状の性質(熱か冷えか) | 熱証(炎症・のぼせ・充血) | 寒証(冷え・痛みが熱で改善) | 症状が熱を帯びているか?→熱証/寒証 |
「しばり(証)表現」の例と読み方:
| しばり表現 | 解釈 |
|---|---|
| 「体力中程度以上のものの〜」 | 実証寄りの人向け(虚弱な人には不向き) |
| 「体力中等度以下のものの〜」 | 虚証寄りの人向け(体力のある人には向かない) |
| 「体力虚弱なものの〜」 | 明確な虚証向け(体力のある人には禁忌に近い) |
| 「体力に関係なく〜」 | 虚実を問わず広く使える(大黄甘草湯等) |
各選択肢の解説:
- ア(正): 証は病名でなく体質・症状の総合評価。同じ「かぜ」でも、体力があれば葛根湯、虚弱なら桂枝湯など処方が変わる(同病異治)。
- イ(正): 虚実の定義として正しい。体力充実・抵抗力強=実証、体力虚弱・疲れやすい=虚証。
- ウ(正): 添付文書の「しばり」は証を日常的な表現で示したもの。「体力中等度以下のものの」という定型表現が多用される。
- エ(誤・正答): 陰陽の定義が逆。「活動性が高く熱を帯びた」状態は陽証、「体が弱って熱が低い」状態は陰証。
- オ(正): 寒熱の定義として正しい。冷え=寒証、熱・のぼせ・充血=熱証。寒証には温める処方(附子・乾姜含有)、熱証には冷ます処方(黄連解毒湯等)が向く。
【漢方医学の「証」の体系:陰陽・虚実・寒熱・表裏の4軸】
漢方の「証」は4つの軸(八綱弁証・はちこうべんしょう)で構成されます:
| 軸 | 陽/実/熱/表側 | 陰/虚/寒/裏側 | 判断のポイント |
|---|---|---|---|
| 陰陽 | 陽証(代謝活発・熱産生)| 陰証(代謝低下・冷え体質)| 全体的な活動性・代謝 |
| 虚実 | 実証(体力充実・正気強い)| 虚証(体力虚弱・正気弱い)| 体力・抵抗力の総合評価 |
| 寒熱 | 熱証(熱感・炎症・のぼせ)| 寒証(冷え・温めると改善)| 症状に伴う熱/冷えの性質 |
| 表裏 | 表証(病邪が体表にある)| 裏証(病邪が体内深部にある)| 疾患の位置・進行度 |
これらを組み合わせて証が決まります。例えば「実証・熱証・裏証」なら、大黄黄連瀉心湯等の強い清熱瀉下薬が適し、「虚証・寒証・裏証」なら人参湯等の温補薬が適します。
【「気・血・水」の三要素と証との関係】
漢方では体の構成要素を「気(き)・血(けつ)・水(すい/津液)」の三つで説明します:
| 要素 | 定義 | 過不足の状態 | 代表的な処方 |
|---|---|---|---|
| 気 | 生命エネルギー・機能・動力 | 気虚(不足)・気滞(停滞)・気逆(逆流) | 補中益気湯(気虚)・半夏厚朴湯(気滞)・苓桂朮甘湯(気逆) |
| 血 | 栄養・潤い・精神安定(血液に相当) | 血虚(不足)・瘀血(停滞・凝固) | 四物湯(血虚)・桂枝茯苓丸(瘀血) |
| 水(津液) | 体内の水分・体液 | 水滞/水毒(停滞)・津液不足(乾燥) | 五苓散・苓桂朮甘湯(水滞)・麦門冬湯(津液不足) |
【「しばり」表現が実務で重要な理由と誤使用リスク】
添付文書の「しばり」は単なる目安ではなく、証に合わない処方を服用した場合の具体的なリスクを示しています:
実証(体力充実)の人に虚証向け処方を使うリスク:
- 体力があるのに補気・補血薬を使う→「実実」という過剰補充→のぼせ・興奮・熱証の悪化
虚証(体力虚弱)の人に実証向け処方を使うリスク:
- 体力がないのに攻撃系(清熱・瀉下・発散)薬を使う→正気を傷つける→副作用増大・全身倦怠・下痢
例: 葛根湯(体力中程度以上)を虚弱な高齢者に使うと、マオウの交感神経刺激が過剰になり、心臓への負担・不眠・血圧上昇が起きやすい。
【登録販売者が証を判断する実務的フロー】
購入者相談時の証確認フロー:
1. 体力全般の評価: 「普段疲れやすいですか?」「体力はある方ですか?」
→ 充実→実証寄り / 疲れやすい・虚弱→虚証寄り
2. 症状の熱/冷え: 「のぼせや赤ら顔がありますか?」「冷えやすいですか?」
→ のぼせ・熱感→熱証寄り / 冷える→寒証寄り
3. 胃腸の状態: 「胃腸は丈夫ですか?」
→ 弱い→虚証向け処方・健胃成分が必要
4. 購入希望処方のしばりと一致するか確認
「証が合わない」と感じた場合の対応:
- 「この処方はあなたの体力・体質に合っているか確認が必要です」
- 「漢方専門店や医師・薬剤師への相談をお勧めします」
- 1〜2週間試してみて改善しない・悪化するなら中止・受診
上位資格への接続: 漢方の「証」と「辨証論治(べんしょうろんち)」の体系は薬剤師国家試験・漢方専門医試験の中心テーマ。「同病異治(同じ病でも証が違えば処方が違う)」「異病同治(違う病でも証が同じなら同じ処方)」という概念は漢方の根幹。また近年のEBM(根拠に基づく医療)との統合において、「証」を客観的に評価するためのスコアリング研究(漢方証スコア)や、機能的MRI・バイオマーカーを用いた証の客観化研究が進んでいる。登録販売者はこのような最新動向も含め、「証に基づく処方選択の案内」という独自の専門的価値を認識して業務にあたることが重要。
<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): 正答エ(陰陽の定義が逆=誤り)は正しく一意。手引きの定義は陽証=活動性が高く熱を帯びた状態、陰証=体が弱って熱が低い状態であり、エは陰陽を入れ替えているため誤りで確定。ア(同病異治・証の総合判断)・イ(虚実の定義)・ウ(しばり=証を日常語で示した表現)・オ(寒熱の定義)はいずれも手引き第3章の漢方の基本概念に整合し正。生薬含有を問う設問ではないためYMYL生薬リスクなし。気血水・八綱弁証の枠組みも手引き準拠。出典: 試験問題作成に関する手引き 第3章 漢方処方製剤・生薬製剤(令和8年4月版)。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第3章 第15節「漢方処方製剤・生薬製剤」 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。