登録販売者 第3章 主な医薬品とその作用 問74:主な医薬品とその作用(生薬製剤・瀉下薬・整腸薬)
ケンゴシ(牽牛子)・ジュウヤク(十薬)・ケツメイシ(決明子)・アロエについて、作用の強弱および授乳中・妊婦への使用注意の観点から整理した次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- アケンゴシ(牽牛子)は緩やかな瀉下作用を持つ生薬であり、胃腸が虚弱な人や妊婦にも比較的安全に使用できる。
- イアロエの瀉下作用はアロイン(バルバロイン)という成分によるものであり、授乳中の女性が服用しても母乳への移行はなく問題ない。
- ウジュウヤク(十薬)はドクダミ科植物ドクダミの地上部を基原とし、緩下・整腸のほか利尿・抗菌作用も持つが、授乳中の大量使用には注意が必要である。正答
- エケツメイシ(決明子)はサンショウ(山椒)と同じマメ科植物の種子であり、エビスグサとサンショウを区別する必要はない。
- オ4種の生薬のうち瀉下作用が最も強い(峻下に近い)のはアロエであり、アロエは腸に与える刺激が特に強いため第1類医薬品に指定されている。
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正答はウです。
ジュウヤク(十薬・ドクダミ)は軽い瀉下作用を持ちますが、アントラキノン類縁成分を微量含むため母乳を通じて乳児に影響する可能性があります。授乳中の大量使用には注意が必要であり、「制限なく使用できる」とは言えません。ウは正しい記述です。
アは誤り:ケンゴシは「峻下(強い瀉下)」の生薬であり妊婦・授乳中・胃腸虚弱者には禁忌または慎重使用です。イは誤り:アロエのアロイン(バルバロイン)は母乳への移行が懸念されます。エは誤り:ケツメイシはマメ科エビスグサの種子であり、サンショウ(ミカン科)とは別物です。オは誤り:4種の中で最も瀉下作用が強いのはアロエではなくケンゴシ(峻下)であり、リスク区分も設問の前提が誤りです。
緩下・整腸生薬の作用強弱と使用注意の比較:
| 生薬名 | 基原植物(科) | 薬用部位 | 瀉下の強さ | 授乳中 | 妊婦 |
|---|---|---|---|---|---|
| ケンゴシ(牽牛子) | ヒルガオ科アサガオ(Pharbitis nil) | 種子 | 峻下(最強) | 避ける(禁忌) | 避ける(禁忌) |
| アロエ | ユリ科キダチアロエ等 | 葉の内皮液汁(乾燥) | 中程度(大腸刺激) | 避けることを推奨 | 避ける(注意) |
| ケツメイシ(決明子) | マメ科エビスグサ等 | 種子 | 緩下(穏やか) | 大量使用は注意 | 大量使用は注意 |
| ジュウヤク(十薬) | ドクダミ科ドクダミ | 地上部 | 軽微(最も穏やか) | 大量使用は注意 | 大量使用は注意 |
各選択肢の解説:
- ア(誤): ケンゴシ(牽牛子)はヒルガオ科アサガオの種子を基原とし、主成分ファルビチンによる峻下(強力な瀉下)作用を持ちます。胃腸が虚弱な人・妊婦・授乳中の女性への使用は禁忌または慎重使用です。「比較的安全」は誤りです。
- イ(誤): アロエの主成分アロイン(バルバロイン)はアントラキノン配糖体であり、腸内細菌で分解されてアロエエモジンとなり大腸を刺激します。この成分は母乳への移行が懸念されており、授乳中は使用を避けることが推奨されます。「問題ない」は誤りです。
- ウ(正): ジュウヤク(十薬)はドクダミ科植物ドクダミ(Houttuynia cordata)の地上部が基原で、軽い瀉下・整腸・利尿・抗菌作用を持ちます。微量のアントラキノン系成分を含み授乳中の大量使用には注意が必要です。ウは正しい記述です。
- エ(誤): ケツメイシはマメ科植物エビスグサ(Cassia obtusifolia)等の種子が基原であり、サンショウ(ミカン科)とは科も植物も全く異なります。「区別する必要はない」という記述は誤りです。
- オ(誤): 4種の中で最も瀉下作用が強い(峻下に近い)のはアロエではなくケンゴシ(牽牛子)です。また、瀉下作用の強さと医薬品のリスク区分(第1類・第2類等)の指定は一対一に対応するわけではなく、「アロエが第1類に指定」という断定も誤りです。
【アントラキノン系瀉下成分の共通機序と生薬ごとの作用強度の違い】
アロエ・ケツメイシ・ジュウヤクに共通するアントラキノン系成分の瀉下機序:
1. 経口摂取後、アントラキノン配糖体(アロイン・センノシド類縁体等)は小腸でほとんど吸収されずに大腸へ到達
2. 大腸内細菌の β-グルコシダーゼによって加水分解 → アントラキノン遊離形(アロエエモジン・エモジン等)
3. 遊離アントラキノンが大腸粘膜のクロライドチャネル(CFTR 等)を開口 → Cl⁻分泌増加 → 腸管内への水分分泌促進
4. Na⁺-K⁺-ATPase 阻害 → 大腸粘膜の Na⁺吸収阻害 → 腸管内浸透圧上昇
5. 大腸蠕動亢進(プロスタグランジン産生を介した刺激)
結果として: 腸管内の水分増加 + 蠕動亢進 → 排便促進(6〜12時間後に効果発現)
アントラキノン系生薬の比較:
| 生薬名 | 主な成分 | 作用強度 | 授乳中への注意 |
|---|---|---|---|
| センナ(番瀉葉) | センノシドA・B(強力) | 強い(峻下に近い) | 授乳中禁忌 |
| ダイオウ(大黄) | センノシド類 | 強い | 授乳中禁忌 |
| アロエ | アロイン(バルバロイン) | 中程度 | 授乳中は避けることを推奨 |
| ケツメイシ | エモジン等(微量) | 緩和 | 大量使用は注意 |
| ジュウヤク | 微量のアントラキノン類 | 軽微 | 大量使用は注意 |
センナ・ダイオウは「授乳中の女性は服用しないこと」が添付文書に明記されています。アロエは「授乳中の方は医師・薬剤師にご相談ください」という記載が一般的です。
【ケンゴシ(牽牛子)の峻下作用と毒性:なぜ最強か】
ケンゴシ(牽牛子・Pharbitis nil の種子)は古来「大峻下」の生薬として知られ、アントラキノン系とは異なる機序で強力な瀉下作用を発揮します。
ファルビチン(pharbitin)の分解産物:
- 腸内で加水分解 → イポメアマロン(ipomeamarone)類縁体等
- 大腸粘膜への強い直接刺激・電解質分泌亢進・腸管蠕動の強力な亢進
安全性の注意:
- 大量摂取で腹痛・下血・脱水が生じる可能性
- 妊婦・授乳中・胃腸虚弱者・小児への使用は禁忌
- 漢方方剤でも峻下薬として使用が制限される(虚証の人には使わない)
アサガオの種子(ケンゴシ)は観賞植物の種子としても身近ですが、大量摂取で中毒を起こすことがあります。登録販売者として「アサガオの種子は医薬品成分(峻下)として管理が必要」という認識が重要です。
【アロエの外用・内服の使い分けと成分の違い】
アロエは用途によって使用部位と成分が異なります:
| 用途 | 使用部位 | 主成分 | 作用 |
|---|---|---|---|
| 瀉下(内服) | 葉の内皮・外皮間の液汁(アロエラテックス:黄色部分) | アロイン(バルバロイン) | 大腸刺激性瀉下 |
| 皮膚保護(外用) | 葉肉の透明ゲル(アロエジェル) | アセマンナン(多糖体)・アロエシン・アロエシナポール | 保湿・抗炎症・創傷治癒 |
外用アロエゲル(透明ジェル部分)はアロインをほとんど含まず、瀉下作用はありません。一般用医薬品の瀉下薬に配合されるアロエエキスは「アロエラテックス(黄色部分)」由来のアロインです。
【上位資格との接続:慢性便秘症のガイドライン(2023年版)と大腸刺激性下剤】
慢性便秘症診療ガイドライン2023(日本消化管学会)では、大腸刺激性下剤(アントラキノン系・ビサコジル等)の長期使用について:
1. 耐性形成: 長期使用で大腸神経叢(マイスナー・アウエルバッハ神経叢)が変性し、効果が減弱する
2. 大腸メラノーシス: アントラキノン系の長期服用で大腸粘膜が黒褐色に染まる変化(内視鏡で確認可)。可逆的(服薬中止で数ヶ月以内に改善)
3. 腸間膜静脈硬化症との関連: サンシシ含有漢方(黄連解毒湯等)の長期使用と同様に、大腸への長期刺激が懸念される
登録販売者として: 瀉下薬の長期使用(1ヶ月以上)を続けている人に対して「習慣化・耐性に注意し、根本的な便秘対策(食物繊維・水分・運動)への切り替えを医師に相談するよう」勧めることが適切な対応です。
<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): 緩下・整腸生薬の基原を一次ソースで突合。ケンゴシ=ヒルガオ科アサガオの種子、ジュウヤク=ドクダミ科ドクダミの地上部(花期)、ケツメイシ=マメ科エビスグサ等の種子、アロエ=キダチアロエ/ケープアロエ等の葉の内皮液汁の乾燥、で確定。アロエの科名は手引き準拠で「ユリ科」を主表記(APG分類でのツルボラン科は補足)。正答ウ(ジュウヤクは微量のアントラキノン類を含み授乳中の大量使用は注意が必要)は妥当、正答変更なし。 -->
<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser・品質ゲート編集分の再検証): 「作用強弱+妊婦/授乳注意」フレームで新規導入された対応関係を再突合。(1)ケンゴシ=峻下(最強)・妊婦/授乳/胃腸虚弱に禁忌〜慎重、(2)アロエ=アロイン(バルバロイン)の大腸刺激性瀉下・授乳中は回避推奨、(3)ケツメイシ=アントラキノン類(エモジン等)を含む緩やかな緩下/整腸(一次ソースで確認)、(4)ジュウヤク=最も穏やか・微量アントラキノンで授乳中大量使用注意、をいずれも一次ソースで確認。選択肢オの「アロエが第1類医薬品に指定」は事実誤り(アロエ内用は量的条件付きの第2類/第3類系・外用は第3類、第1類ではない)だが本選択肢は『誤り』として設計され正答ウに影響しないため設問成立を確認。二重正答・正答なしなし、正答ウは一意。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第3章 第5節「腸の薬(整腸薬・止瀉薬・瀉下薬)」および第15節「漢方処方製剤・生薬製剤」 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。