登録販売者 第3章 主な医薬品とその作用 問75:主な医薬品とその作用(生薬製剤・漢方処方製剤)
シャクヤク(芍薬)・ボタンピ(牡丹皮)・サンシシ(山梔子)の基原と作用に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- アシャクヤク(芍薬)はキンポウゲ科植物シャクヤクの根を基原とし、鎮痙・鎮痛・抗炎症作用を持ち、芍薬甘草湯等の処方において筋肉の痙攣(こむらがえり等)を緩和する。
- イボタンピ(牡丹皮)はバラ科植物ボタンの根皮を基原とし、主成分パエオノールが消炎・鎮痛・鎮静・解熱作用を示す。
- ウサンシシ(山梔子)はアカネ科植物クチナシの果実を基原とし、長期服用によって腸間膜静脈硬化症を引き起こすことがある。正答
- エシャクヤク(芍薬)とボタンピ(牡丹皮)は同じキンポウゲ科に属し、主成分も同一であるため、漢方処方では同量・同目的で相互に代替可能である。
- オサンシシ(山梔子)の着色成分クロシンは食品着色料(黄色)として利用されており、医薬品としての作用は持たない。
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正答はウです。
「サンシシ(山梔子)はアカネ科植物クチナシの果実を基原とし、長期服用によって腸間膜静脈硬化症を引き起こすことがある」という記述は正しいです。
主な誤りを確認しましょう。アはシャクヤクの薬用部位(根)・作用は正しいものの、科名を「キンポウゲ科」としている点が現行の植物分類(ボタン科 Paeoniaceae)と異なり、正確とは言えません。イのボタンピはバラ科ではなくボタン科(旧分類ではキンポウゲ科に含めた)のボタンの根皮が基原です。エのシャクヤクとボタンピは同科ですが主成分・部位・作用が異なり相互に代替できません。オのサンシシのクロシンは着色料利用に加え医薬品としての作用も持ちます。これらに対し、ウ(サンシシ=アカネ科クチナシの果実・腸間膜静脈硬化症の警告)は完全に正しく、正答はウです。
暗記ポイント: 「サンシシ→アカネ科・クチナシ・果実・腸間膜静脈硬化症の警告」。
抗炎症・収斂生薬の基原・成分・作用まとめ:
| 生薬名 | 基原植物(科名) | 薬用部位 | 主な有効成分 | 主作用 |
|---|---|---|---|---|
| シャクヤク(芍薬) | ボタン科(旧キンポウゲ科)シャクヤク(Paeonia lactiflora) | 根 | パエオニフロリン(ペオニフロリン)・ペオニシジン | 鎮痙・鎮痛・抗炎症・収斂 |
| ボタンピ(牡丹皮) | ボタン科(旧キンポウゲ科)ボタン(Paeonia suffruticosa) | 根皮(根の皮) | パエオノール・パエオニフロリン等 | 消炎・鎮痛・鎮静・解熱・活血 |
| サンシシ(山梔子) | アカネ科クチナシ(Gardenia jasminoides) | 果実 | ゲニポシド(イリドイド配糖体)・クロシン(カロテノイド) | 消炎・解熱・利胆・止血 |
各選択肢の解説:
- ア(誤): シャクヤクの薬用部位(根)・鎮痙・鎮痛作用、芍薬甘草湯でのこむらがえり緩和の記述は正しいものの、科名を「キンポウゲ科」としている点が誤りです。シャクヤク(Paeonia lactiflora)は現行の植物分類でボタン科(Paeoniaceae)に分類されます(かつてはキンポウゲ科に含めていたが独立した科として扱われる)。本問は「正しいもの」を選ぶ設問であり、科名が不正確なアは正答になりません。
- イ(誤): ボタンピ(牡丹皮)の基原はバラ科ではなくボタン科(旧キンポウゲ科)植物ボタン(Paeonia suffruticosa)の根皮です。主成分パエオノール(paeonol)の消炎・鎮痛・鎮静・解熱作用は正しいですが、科名が誤りです。
- ウ(正・正答): サンシシ(山梔子)の基原はアカネ科植物クチナシ(Gardenia jasminoides)の果実です。サンシシを含む漢方処方(黄連解毒湯・防風通聖散・加味逍遙散等)の長期服用(多くは5年以上)が腸間膜静脈硬化症(大腸の石灰化・線維化)と関連することが報告され、2020年に厚生労働省が添付文書改訂を指示しています。
- エ(誤): シャクヤクとボタンピは同科(ボタン科)に属しますが、主成分・使用部位・主な作用が異なります。シャクヤクは根全体・鎮痙が主目的。ボタンピは根の皮・活血(血行促進)・消炎が主目的。漢方では相互代替はできません。
- オ(誤): サンシシの着色成分クロシン(crocin:カロテノイド配糖体)は食品着色料として利用される面もありますが、医薬品としての作用(消炎・解熱・利胆・止血)も持ちます。「医薬品としての作用は持たない」は誤りです。
【腸間膜静脈硬化症とサンシシ含有処方の詳細】
腸間膜静脈硬化症(mesenteric phlebosclerosis:MPS)は大腸の腸間膜静脈・腸壁の石灰化と線維性硬化を特徴とする疾患で、1991年に日本で初めて報告されました。
サンシシとの関連が確認された主な漢方処方(2020年厚労省改訂対象):
- 黄連解毒湯(オウレン・オウゴン・オウバク・サンシシ)
- 防風通聖散(ダイオウ・マオウ・ボウフウ・サンシシ等18種)
- 加味逍遙散(サンシシ・トウキ・シャクヤク・ブクリョウ等)
- 竜胆瀉肝湯(サンシシ・リュウタン等)
- 温清飲(サンシシ・当帰等)
MPS の症状と診断:
- 主症状: 腹痛(右側または臍周囲)・下痢・便秘・腹部膨満感(慢性的・繰り返す)
- 大腸内視鏡所見: 粘膜の暗紫色〜黒褐色変化、腸管壁の硬化
- CT 所見: 腸間膜静脈・腸壁の石灰化(特徴的)
- 血液検査: 炎症反応の上昇(軽度)
MPS の発症機序(推定):
ゲニポシド(genipioside)の腸内細菌による代謝産物ゲニピン(genipin)が腸管壁に蓄積し、コラーゲン架橋形成(組織硬化)を促進するという説が有力です。ゲニピンはコラーゲン・アミノ酸・タンパク質と架橋結合する性質(食品の天然架橋剤として研究)があり、長期曝露で腸管組織の硬化が起こります。
登録販売者の対応(2020年改訂後の必須知識):
1. サンシシ含有漢方処方を購入する人に「5年以上の長期使用では腸間膜静脈硬化症のリスクがある」と伝える
2. 慢性的な腹痛・下痢・便秘が続く場合は「漢方の長期服用との関連を医師に相談する」よう勧める
3. CT・大腸内視鏡で MPS と診断されたら服薬中止(中止後の改善例あり)
【シャクヤクのパエオニフロリンとこむらがえり緩和の機序】
芍薬甘草湯(シャクヤク・カンゾウの2生薬のみ)はこむらがえり・筋肉の急な痙攣に有効な漢方処方として広く知られています。
パエオニフロリン(paeoniflorin)の作用機序:
1. TRPV1(カプサイシン受容体)の調整: 過剰なカルシウム流入抑制 → 筋肉の過緊張緩和
2. NO(一酸化窒素)産生促進: 平滑筋弛緩
3. アデノシン受容体(A1)の活性化: 中枢・末梢での鎮静・鎮痛
4. カンゾウ(甘草)との相乗作用: カンゾウの成分グリチルリチン酸がカリウムチャネルを調整し、筋弛緩を補助
芍薬甘草湯の注意点:
- カンゾウ(甘草)を含むため、長期服用で偽アルドステロン症(低カリウム血症・高血圧・浮腫)のリスク
- 「芍薬甘草湯 + 他のカンゾウ含有製品」の重複服用は偽アルドステロン症リスクを高める
【ボタンピの活血作用と婦人科系漢方との関係】
ボタンピ(牡丹皮)は「活血(血の滞りを解消する)」作用を持つ生薬として、婦人科系の漢方処方に多用されます。
ボタンピを含む代表的漢方処方:
| 処方名 | 主な適応 |
|---|---|
| 桂枝茯苓丸(ケイヒ・ブクリョウ・ボタンピ・シャクヤク・モモノ仁) | 月経不順・月経痛・肩こり・のぼせ |
| 加味逍遙散(ボタンピ・サンシシ・トウキ等) | 更年期障害・月経前症候群 |
| 大黄牡丹皮湯(ダイオウ・ボタンピ等) | 下腹部の炎症・便秘 |
ボタンピの活血作用(血流促進・抗血小板・子宮収縮刺激)から、妊婦への使用は禁忌(流産誘発のリスク)。登録販売者として妊婦の可能性がある女性へのボタンピ含有製品の販売では「妊娠中は使用前に医師・薬剤師にご相談ください」という注意が必須です。
<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): 基原を一次ソースで突合。シャクヤク=ボタン科(Paeoniaceae)シャクヤクの根、ボタンピ=ボタン科ボタンの根皮、サンシシ=アカネ科クチナシの果実、で確定。シャクヤク・ボタンピは現行植物分類で「ボタン科」(旧くはキンポウゲ科に含めた)。選択肢ア(シャクヤクをキンポウゲ科とする)の科名は不正確なため「正しいもの」を選ぶ本問では正答にならず、選択肢イ(ボタンピをバラ科とする)も誤り。正答ウ(サンシシ=アカネ科クチナシの果実、長期服用で腸間膜静脈硬化症=2020年厚労省添付文書改訂指示)は完全に正しく一意であることを確認。曖昧だったアの判定(「一部表現が正確でない」「分類変更の意見もあり」)を確定的な誤り判定に是正。正答変更なし。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第3章 第15節「漢方処方製剤・生薬製剤」、および腸間膜静脈硬化症に関する添付文書改訂(2020年) 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。