登録販売者 第3章 主な医薬品とその作用 問8:主な医薬品とその作用(瀉下薬・止瀉薬)
瀉下薬(下剤)および止瀉薬(下痢止め)に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- アロペラミド塩酸塩は15歳未満の小児にも安全に使用でき、下痢症状があれば年齢制限なく使用可能である。
- イ酸化マグネシウムは、大腸粘膜を直接刺激して腸の蠕動を促進させることで瀉下作用を発揮する刺激性瀉下薬である。
- ウセンナ(センノシド含有)は大腸刺激性の瀉下薬であり、妊婦・妊娠していると思われる人は使用前に相談することとされ(大量服用で流早産を誘発するおそれ)、長期連用で大腸が薬に依存しやすくなる。正答
- エビサコジルは小腸粘膜を刺激して蠕動を促進するため、大腸には作用しない。
- オタンニン酸は腸管内で腸粘膜のタンパク質を溶解し、粘膜の透過性を高めることで下痢を改善する。
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正答はウです。
センナはダイオウと同じく大腸刺激性瀉下薬であり、大量服用で子宮収縮を誘発し流早産のおそれがあるため、妊婦・妊娠していると思われる人は使用前に「相談すること」とされています(手引きの別表では「してはいけないこと」=禁忌ではなく「相談すること」に分類)。また長期連用すると腸が薬がないと動かなくなる「習慣性便秘(下剤依存)」が生じます。
アは誤りで、ロペラミドは15歳未満の小児への使用が禁忌です。イは誤りで、酸化マグネシウムは浸透圧性瀉下薬(腸管内に水分を引き込む機序)であり刺激性ではありません。エは誤りで、ビサコジルは大腸粘膜を刺激します。オは誤りで、タンニン酸は腸粘膜タンパクと結合して「収れん作用」(粘膜を引き締める)を示し下痢を止めます。
瀉下薬の分類と代表成分:
| 分類 | 機序 | 代表成分 | 特記事項 |
|---|---|---|---|
| 大腸刺激性 | 大腸粘膜直接刺激→蠕動亢進 | センナ・ダイオウ・ビサコジル・ピコスルファートNa | 妊婦は相談(大量服用で流早産のおそれ)・長期依存 |
| 浸透圧性 | 腸内浸透圧上昇→腸管水分保持 | 酸化マグネシウム・塩化マグネシウム | Mg蓄積(腎機能低下者) |
| 膨潤性 | 腸内で膨潤→便量増加 | カルメロースNa・プランタゴ・オバタ | 水分とともに服用必須 |
止瀉薬の代表成分:
| 成分 | 機序 | 特記事項 |
|---|---|---|
| ロペラミド塩酸塩 | オピオイド受容体→腸管蠕動抑制 | 15歳未満禁忌・感染性下痢に注意 |
| タンニン酸 | 収れん作用→粘膜保護 | 安全性高い |
| 塩化ベルベリン | 殺菌・腸管分泌抑制 | 食中毒下痢に有効 |
各選択肢の解説:
- ア(誤): ロペラミド塩酸塩はオピオイド受容体(μ受容体)に作用して腸管蠕動を抑制する強力な止瀉成分ですが、15歳未満の小児には中枢神経抑制作用のリスクから禁忌とされています。また感染性腸炎(細菌性下痢)では腸管内での細菌・毒素の排出を妨げるため、発熱・血便を伴う下痢には使用禁止です。
- イ(誤): 酸化マグネシウムは腸管内で水分を引き込んで浸透圧を上昇させ(浸透圧性)、腸管内の含水量を増やして便を軟らかくする機序で作用します。大腸粘膜を直接刺激する刺激性瀉下薬ではありません。
- ウ(正): センナに含まれるセンノシドは腸内細菌でセンナジン(アグリコン)に変換され、大腸粘膜を直接刺激して蠕動を亢進させます。腸管蠕動亢進が子宮収縮を誘発し流早産を招くおそれがあるため、妊婦・妊娠していると思われる人は大量服用を避け、使用前に医師・薬剤師・登録販売者に「相談すること」とされています(手引きの別表では「相談すること」に分類。瀉下成分を一律「してはいけないこと=禁忌」とはしていない点に注意)。長期連用で腸管神経叢(アウエルバッハ神経叢)の機能低下が生じ、薬なしでは便が出なくなる「習慣性便秘」が問題になります。
- エ(誤): ビサコジルは大腸粘膜を刺激して蠕動を亢進させる刺激性瀉下薬です。小腸ではなく大腸が主な作用部位です。坐薬としても使用でき(直腸粘膜刺激)、経口薬は消化管を通過して大腸で作用します。
- オ(誤): タンニン酸(収れん成分)は腸粘膜のタンパク質と結合し、不溶性の層を形成して粘膜を「引き締め」(収れん)、過剰な分泌・刺激に対して粘膜を保護します。透過性を「高める」のではなく「低下させる」(バリア強化)のが正しい作用機序です。
【センノシドの代謝と大腸選択性の機序】
センナ(Cassia senna)の活性成分はセンノシドA・Bというアントラキノン配糖体です。経口摂取後に小腸では吸収されずに大腸に到達し(腸肝循環なし)、大腸内の腸内細菌(主にBacteroides splanchnicus・Clostridium等)によってアグリコン(レインアンスロン)に加水分解されます。このレインアンスロンが大腸粘膜の上皮細胞に直接作用します:
1. 腸粘膜の水・電解質輸送阻害: 塩化物チャネル(CFTR)活性化→Cl⁻分泌増加・Na⁺吸収低下→水分が腸管内に保持
2. プロスタグランジン産生増加: 蠕動促進ホルモン様物質の遊離を促す
3. 腸管神経叢への直接刺激: アウエルバッハ神経叢の5-HT(セロトニン)遊離→蠕動亢進
この「大腸選択性」がセンノシドの特徴で、小腸(吸収・分解なし)を経て大腸で活性化します。服用から作用発現まで6〜12時間かかる(就寝前服用で翌朝排便)のはこの遅延代謝活性化のためです。
【刺激性瀉下薬の長期使用問題と大腸メラノーシス】
センノシド・ダイオウを長期(数ヶ月〜年単位)で使用すると、大腸メラノーシス(melanosis coli)が生じることがあります。アントラキノン色素が大腸粘膜マクロファージに蓄積し、内視鏡でタイガースキン様の褐色斑紋が観察されます。さらに重要な問題として、長期刺激により腸管神経叢の機能が低下し「習慣性便秘(下剤依存)」が生じます。登録販売者は連続使用日数(通常1週間以内)を超えた購入者に対して使用状況を確認し、必要に応じて医師への受診を勧める義務があります。
【ロペラミドの薬理と感染性下痢への禁忌】
ロペラミド塩酸塩は腸管壁のμオピオイド受容体に作用します(中枢への移行はほとんどない):
- 腸管平滑筋: 蠕動運動を抑制→腸管通過時間を延長→水分吸収時間増加
- 腸管分泌細胞: 腸液(水・電解質)の分泌を抑制
- 肛門括約筋緊張: 括約筋の緊張を高める
感染性下痢(細菌性腸炎:サルモネラ・O157・キャンピロバクター等)でロペラミドを使用すると:
- 腸管蠕動抑制→病原体・毒素(内毒素・外毒素)が腸内に停滞・増殖
- 腸管内毒素の吸収増加→全身性感染・菌血症のリスク
- 溶血性尿毒症症候群(HUS)の誘発(O157感染では特に危険)
このため発熱・血便・粘血便を伴う下痢(感染性の可能性が高い)にはロペラミド使用を避け、医師受診を勧めることが重要です。
【浸透圧性瀉下薬(酸化マグネシウム)の長所と腎機能低下の問題】
酸化マグネシウムは腸管内でMg²+イオンを遊離し、浸透圧の差で腸管から水分を腸内に保持します(ランクス・リン酸塩との吸収競合も一部)。刺激性がないため習慣性がつきにくく、妊婦・高齢者・長期使用者に選択されることが多いです。
しかし腎機能低下者(eGFR < 30 mL/min/1.73m²)では排泄されないMg²+が体内蓄積し、高マグネシウム血症を起こします:
- 初期: 悪心・嘔吐・潮紅・倦怠感
- 中等度: 筋力低下・低血圧・徐脈
- 重篤: 呼吸筋麻痺・心停止
近年、OTC酸化マグネシウムの長期使用中の高齢者(腎機能低下)での高Mg血症の副作用報告が増加しており、登録販売者は高齢者・腎疾患を持つ購入者に特に注意を払う必要があります。
【ビサコジルの経口・坐薬での作用の違い】
ビサコジル経口薬(腸溶錠): 胃での分解を防ぐコーティングで小腸通過→大腸で分解・活性化→大腸粘膜刺激。服用から6〜10時間後に効果発現。牛乳・制酸薬と同時服用でコーティングが溶解→小腸で活性化→腹痛・下痢(相互作用として重要)。
ビサコジル坐薬: 直接直腸粘膜に作用→15〜60分で排便。手術前・内視鏡前処置に使用。
【根拠】厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第3章第5節
<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): 【重要修正】選択肢ウ「センナは妊婦への使用は禁忌」を手引き表現と不一致のため修正。手引き第5章別表では瀉下成分(センナ・センノシド・ダイオウ・ヒマシ油等)は妊婦に対し「相談すること」であり「してはいけないこと(禁忌)」ではない(理由=大量服用で子宮収縮→流早産のおそれ/PMDA・医療用センノシド添文「大量に服用しないよう指導」)。ウを「相談すること+大量服用回避+長期連用で依存」に書き換え、正答ウ(正しいもの)を維持。ア=ロペラミドのOTCは15歳未満服用不可(添付文書)でアの「年齢制限なく使用可」は誤りで正しい引っかけ。イ=酸化マグネシウムは浸透圧性で誤り。エ=ビサコジルは大腸刺激性で誤り。オ=タンニン酸は収れんで誤り。正答ウ一意を確認。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第3章 第5節「腸の薬」 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。