登録販売者 第4章 薬事関係法規・制度 問9:薬事関係法規・制度
薬機法に基づく行政処分・行政措置に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア薬機法違反に対して業務停止命令を発令できるのは厚生労働大臣のみであり、都道府県知事は業務停止命令を発することができない。
- イ都道府県知事は、薬局または医薬品の販売業者に対して、必要があると認めるときに立入検査を行わせることができる(薬機法第69条)。正答
- ウ薬機法に違反した者に対して許可の取消しを行う行政処分は、許可を与えた機関(厚生労働大臣または都道府県知事等)が行うが、製造販売業の許可取消しは都道府県知事が行う。
- エ製品の品質・安全性に問題がある医薬品について、製造販売業者が任意回収を行う場合は薬機法上の廃棄・回収命令の対象外となるため、行政の関与は一切ない。
- オ薬機法に基づく廃棄命令(不良医薬品等の廃棄)は、都道府県知事が廃棄業者に直接実施させることもできる。
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正答はイです。
都道府県知事は薬機法第69条に基づき、薬局や医薬品販売業者等に対して必要と認める場合に立入検査(薬事監視員による検査)を行わせる権限を持ちます。これは都道府県が薬事行政の第一線として機能していることを示す重要な規定です。
アは誤りで、都道府県知事も業務停止命令を発することができます(許可の取消し・業務停止は第75条)。ウは誤りで、製造販売業の許可は厚生労働大臣が与えるため取消しも厚生労働大臣が行います。エは誤りで、任意回収であっても行政への報告・行政の関与があります。オは誤りで、廃棄命令の対象者が措置を取らないとき等に行政が廃棄・回収を行わせることができる場合はありますが、設問の記述は不正確です(後述)。
薬機法の行政処分体系(概要):
| 処分種類 | 主な発令権者 | 主な対象 |
|---|---|---|
| 立入検査等(第69条) | 厚生労働大臣・都道府県知事等 | 薬局・販売業・製造業等 |
| 廃棄等(第70条) | 厚生労働大臣・都道府県知事等 | 不良医薬品・危険医薬品等 |
| 改善命令等(第72条) | 厚生労働大臣・都道府県知事等 | 構造設備・業務体制の不備等 |
| 許可の取消し・業務停止命令(第75条) | 許可権者(厚生労働大臣または都道府県知事等) | 許可を受けた者 |
| 課徴金納付命令(第75条の5の2) | 厚生労働大臣 | 誇大広告等の違反者 |
各選択肢の解説:
- ア(誤): 業務停止命令は厚生労働大臣のみならず都道府県知事等も発することができます(薬機法第75条=許可の取消し・業務停止命令)。薬局開設・店舗販売業等の許可権者は都道府県知事等であり、その許可に係る業務停止・取消しは都道府県知事等が行います。「厚生労働大臣のみ」は誤りです。
- イ(正): 薬機法第69条(立入検査等)は、厚生労働大臣に加えて都道府県知事も薬局・医薬品販売業等に対して立入検査・質問・収去を行わせる権限を持つことを定めています。薬事監視員が実際の検査を行います。
- ウ(誤): 製造販売業の許可は厚生労働大臣が与えるため(薬機法第12条)、許可の取消しも厚生労働大臣が行います(同第75条)。都道府県知事が与える許可(薬局開設・店舗販売業等)の取消しは都道府県知事等が行います。「製造販売業の許可取消しは都道府県知事」は誤りです。
- エ(誤): 製造販売業者が任意で回収(自主回収)を行う場合も、薬機法上の報告義務があり(厚生労働大臣等への回収着手報告等)、行政が一切関与しないわけではありません。重大な問題がある場合は、自主回収に加えて行政から廃棄等の命令(第70条)が発令されることもあります。
- オ(誤): 薬機法第70条は、第一義的には不良医薬品等の所有者・管理者に廃棄・回収その他の措置を命じる規定です。命令を受けた者が措置を取らないとき等に行政職員に廃棄・回収させること(行政代執行的措置)はあり得ますが、「都道府県知事が廃棄業者に直接実施させることもできる」という設問の記述は規定の建付けとして不正確であり、誤りとして扱います。
【薬機法の行政処分の体系と「二元的監督体制」】
薬機法の行政執行は、厚生労働大臣(国)と都道府県知事(地方)の二元的体制で行われます。この体制の背景は、薬事行政が国の統一基準のもとで、現場に近い都道府県が実施するという日本の地方分権的な行政構造を反映しています。
権限分配の基本原則:
- 製造・流通の上流(製造販売業・製造業): 厚生労働大臣が許可・承認・処分
- 販売の下流(薬局・店舗販売業・配置販売業): 都道府県知事等が許可・処分
- 立入検査・廃棄命令: 厚生労働大臣・都道府県知事ともに権限を持つ(管轄に応じて)
【立入検査(薬機法第69条)の実務】
薬事監視員(都道府県等が任命する専門職)は、薬局・医薬品販売業者・製造業者等に対して:
1. 立ち入って帳簿・書類を検査
2. 職員・業務関係者への質問
3. 医薬品・原料・製品・製造設備の検査
4. 不良医薬品と疑われるものの収去(サンプル採取)
これらを行う権限があります。被検査者はこれを拒んだり妨害したりすることはできず(罰則規定あり)、立入検査に際して必要な帳簿の提示義務等があります。
【廃棄・回収命令(薬機法第70条)の位置づけ】
不良医薬品・基準不適合医薬品・承認内容と異なる医薬品等に対して、行政は廃棄・回収を命令できます。実務上は:
1. 自主回収(任意): 製造販売業者が品質問題を発見し、行政に報告しつつ自ら回収・廃棄
- 回収情報はPMDAのホームページ(リコール情報)で公開
- クラスI(生命に危険)・クラスII(重篤な健康被害)・クラスIII(軽微)の分類
2. 行政命令による回収・廃棄: 自主回収が不十分または行政が緊急と判断した場合に発令
登録販売者にとっての実務的意義: 回収対象製品が店頭にあった場合、速やかに回収措置を取り、購入済みの顧客に情報を伝える必要があります。PMDAの回収情報を定期的に確認する習慣が重要です。
【許可取消し・業務停止命令の違いと実務影響】
| 処分種類 | 内容 | 回復の可否 |
|---|---|---|
| 業務停止命令(第75条) | 一定期間の業務を停止させる処分 | 期間終了後に業務再開可能 |
| 許可の取消し(第75条) | 許可そのものを取り消す処分 | 再申請により再取得可能(欠格期間あり) |
業務停止命令・許可取消しはいずれも薬機法第75条が根拠です。業務停止の期間は厚生労働省の処分基準・取扱要綱上、概ね「5日以上70日以下」の範囲で違反態様に応じて定められます。実務上は経営的ダメージが大きく、事実上の廃業につながることもあります。
【課徴金制度と刑事罰の重なり】
2019年改正で導入された課徴金制度は行政制裁(民事的性質)であり、刑事罰(懲役・罰金)とは別途適用されます。同一行為に対して:
- 行政処分(業務停止・許可取消)
- 課徴金
- 刑事罰(懲役・罰金)
の三重の制裁が科される可能性がある点が、薬機法の違反抑止力として機能しています。登録販売者個人としても、法人(会社)とは別に個人への罰則(両罰規定)が適用される場合があるため、薬機法の遵守は雇用されている側の自己防衛としても重要です。
【根拠】薬機法第69条(立入検査等)・第70条(廃棄等)・第72条(改善命令等)・第75条(許可の取消し・業務停止命令)・第75条の5の2(課徴金納付命令)、厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第4章
<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): 【重大修正】業務停止命令の根拠を第72条→第75条に訂正。e-Govでは第75条「許可の取消し等」が許可取消し+業務停止命令(5日以上70日以下)を定める。第72条は「改善命令等」(構造設備・業務体制の不備等)であり業務停止命令そのものではない→standard表・本文を訂正。第69条(立入検査等)/第70条(廃棄等)/第75条の5の2(課徴金納付命令)は正確。製造販売業許可=厚労大臣(第12条)→取消しも厚労大臣=問題文ウの論旨正しい。オの廃棄「業者に直接実施」表現は第70条の建付け(一次的に所有者等に命令)と異なるため誤り肢として明確化。正答イ(第69条立入検査は都道府県知事も可)は一意で妥当。厚労省処分基準・取扱要綱で突合 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 薬機法第69条(立入検査等)・第70条(廃棄・回収命令)・第72条(業務停止命令)・第75条(許可の取消し等)、厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第4章 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。