登録販売者 第5章 医薬品の適正使用・安全対策 問46:医薬品の適正使用・安全対策(添付文書「してはいけないこと」出血傾向別表)
一般用医薬品の添付文書に「してはいけないこと」として「出血傾向のある人は使用しないこと」と記載される成分に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- アアスピリンは血小板のトロンボキサンA2産生を阻害してシクロオキシゲナーゼを不可逆的に阻害することで血小板凝集を抑制するため、出血傾向のある人は使用を避けるべき成分の一つである。正答
- イイブプロフェンは出血傾向のある人への使用制限がないため、アスピリンが使用できない出血傾向の患者には代替として積極的に勧めることができる。
- ウワルファリンは市販の一般用医薬品に配合されている成分であり、出血傾向の悪化を防ぐために使用を控えるよう「してはいけないこと」に記載されている。
- エ「出血傾向のある人」が解熱鎮痛成分を必要とする場合、アスピリン・イブプロフェン・ロキソプロフェンのいずれも選択肢となる。
- オアスピリンによる血小板凝集抑制は可逆的であり、服用を中止すれば数時間で血小板機能が完全に回復するため、出血傾向のある人でも休薬さえすれば問題なく使用できる。
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正答はアです。
アスピリン(アセチルサリチル酸)はシクロオキシゲナーゼ(COX)を不可逆的に阻害し、血小板でのトロンボキサンA2産生を抑制します。血小板は核を持たないため新たなCOXを合成できず、阻害は血小板の寿命(約7〜10日)が尽きるまで続きます。出血傾向のある人(血液凝固異常・血小板減少症・抗凝固薬服用者等)は出血が止まりにくくなるリスクがあるため、添付文書の「してはいけないこと」に記載されます。
イ(イブプロフェンも同様の制限がある)・ウ(ワルファリンは一般用医薬品に配合されない抗凝固薬)・エ(いずれも出血傾向者には不適)・オ(アスピリンの血小板抑制は「不可逆的」であり、休薬しても血小板の寿命が尽きるまで回復しない。「可逆的・数時間で回復・休薬すれば問題なく使用可」は誤り)はいずれも誤りで、正答はアです。
「してはいけないこと」出血傾向×解熱鎮痛成分の別表対応:
| 成分 | 出血傾向への影響 | 添付文書の記載 |
|---|---|---|
| アスピリン(アセチルサリチル酸) | COX不可逆阻害→血小板凝集抑制(血小板寿命内継続) | 「出血傾向のある人は使用しないこと」(してはいけないこと) |
| イブプロフェン | COX可逆阻害→血小板凝集抑制(消退は早い) | 同様に出血傾向者への注意記載あり |
| ロキソプロフェン | COX可逆阻害 | 同様 |
| アセトアミノフェン | COX阻害作用は弱く血小板影響は軽微 | 出血傾向への「してはいけないこと」の別表対象外(相対的に安全) |
各選択肢の解説:
- ア(正): アスピリンはCOX-1を不可逆的にアセチル化して阻害します。COX-1はトロンボキサンA2(TXA2)の産生に関与しており、TXA2は血小板凝集を促進します。これが抑制されると血小板が凝集しにくくなり、出血が止まりにくくなります。核のない血小板はCOXを再合成できないため、阻害は約7〜10日間(血小板の寿命)持続します。
- イ(誤): イブプロフェンもNSAIDsであり、COXを(可逆的ではあるが)阻害し血小板凝集を抑制します。出血傾向のある人への「してはいけないこと」の対象です。アスピリン代替として積極的に勧めることはできません。
- ウ(誤): ワルファリンは処方薬(抗凝固薬)であり、一般用医薬品には配合されていません。したがって一般用医薬品の添付文書に「してはいけないこと」として記載される成分ではありません。
- エ(誤): アスピリン・イブプロフェン・ロキソプロフェンはいずれもNSAIDsで出血傾向のある人への注意が必要です。出血傾向者に選択できる解熱鎮痛成分は、COX阻害作用が弱いアセトアミノフェンが相対的に適切です。
- オ(誤): アスピリンによる血小板凝集抑制は「不可逆的」です。核を持たない血小板は阻害されたCOXを再合成できないため、休薬しても血小板機能は新しい血小板が供給される血小板寿命(約7〜10日)が尽きるまで回復しません。「可逆的であり数時間で完全に回復する」「休薬すれば出血傾向のある人でも問題なく使用できる」は明確な誤りです。出血傾向のある人はアスピリンを含む製品の使用を控えるべきです。
【出血傾向×NSAIDsの薬理機序と「してはいけないこと」別表を臨床的に読み解く】
「してはいけないこと」の出血傾向関連記載は、単なる暗記事項ではなく、NSAIDsの薬理作用・血液凝固カスケード・血小板生理の理解から論理的に導き出せます。
1. 血液凝固と血小板の役割(基礎固め)
止血には一次止血(血小板血栓形成)と二次止血(凝固カスケード→フィブリン形成)の2段階があります。
一次止血のプロセス:
1. 血管損傷 → コラーゲン露出
2. フォンウィルブランド因子(vWF)を介して血小板が粘着
3. 活性化した血小板からTXA2(トロンボキサンA2)が放出
4. TXA2が周囲の血小板を呼び寄せ凝集 → 血小板血栓形成
2. アスピリンの薬理機序と不可逆性
アスピリン(アセチルサリチル酸)はシクロオキシゲナーゼ(COX-1/COX-2)のアクティブサイトにあるセリン残基をアセチル化することで、酵素活性を不可逆的に阻害します。
血小板でのCOX-1阻害の意味:
- COX-1 → PGH2 → TXA2(トロンボキサンA2)の産生経路が遮断
- TXA2は血小板凝集促進・血管収縮の強力な促進物質
- TXA2産生抑制 → 血小板が凝集しにくくなる → 止血遅延・出血傾向
不可逆的である理由と臨床的意味:
血小板は核を持たない細胞(骨髄の巨核球から放出される細胞断片)であるため、阻害されたCOXを新たに合成できません。そのため一度アスピリンを服用すると、その影響は血小板の寿命(約7〜10日)が尽きて新しい血小板が供給されるまで持続します。
これが心筋梗塞・脳梗塞の二次予防に低用量アスピリン(81〜100mg/日)を継続投与する理由であり、同時に出血傾向のある患者にアスピリン系製品が「してはいけないこと」となる根拠でもあります。
3. 他のNSAIDsとの比較(可逆的COX阻害)
イブプロフェン・ロキソプロフェン・ナプロキセン等のNSAIDsもCOX-1を阻害しますが、その阻害は可逆的(競合的阻害)です。薬物が血中から消失すれば阻害も解除され、血小板機能は比較的速やかに回復します。しかし出血傾向のある患者にとっては服薬中の抗凝集作用は無視できないため、これらも「してはいけないこと」の対象となります。
登録販売者試験のポイント:「COX阻害=出血傾向悪化リスク」という軸で、イブプロフェン・ロキソプロフェンも含めてNSAIDsは出血傾向者に「してはいけないこと」と押さえる。
4. アセトアミノフェンが相対的に安全な理由
アセトアミノフェンのCOX阻害作用は末梢組織ではきわめて弱く(中枢性の解熱・鎮痛機序が主)、血小板凝集への影響は臨床的に軽微とされています。そのため出血傾向のある患者への解熱鎮痛薬として、NSAIDsよりも相対的に安全な選択肢とみなされています(ただし肝機能障害のある患者には別途注意が必要)。
5. 登録販売者の実務対応:出血傾向のある購入者への情報提供
販売現場で出血傾向が疑われるケース:
- 抗凝固薬(ワルファリン・DOAC等)を服薬中と申告
- 「血が止まりにくい」「あざができやすい」と訴える
- 血小板減少症・肝硬変・播種性血管内凝固症候群(DIC)等の既往を申告
対応の原則:
1. NSAIDsを含む製品の使用を控えるよう伝える
2. アセトアミノフェン配合製品を代替として案内(「○○という成分は入っていませんので、比較的リスクが低いですが、念のためかかりつけの先生にご確認ください」)
3. 症状が重い場合・使用継続が必要な場合は医師・薬剤師への相談を促す
6. 上位資格・薬剤師業務との接続
薬剤師が行う抗凝固療法モニタリング(PT-INR測定・出血症状確認)との違いを理解しておくことで、登録販売者の役割の限界と受診勧奨の判断基準が明確になります。登録販売者は「てはいけないこと」の境界を守り、不明な場合は薬剤師・医師に橋渡しする役割を担います。
<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): 選択肢アの薬理記述(アスピリンによるCOX不可逆阻害→TXA2産生抑制→血小板凝集抑制→出血傾向悪化)は正確で正答。ただし当初の選択肢オも内容が正しく「二重正答」となっていたため、一意性確保のためオを明確な誤り(アスピリンの血小板抑制は不可逆的なのに「可逆的・数時間で回復・休薬すれば使用可」とする誤記述)に変更。これにより正答はアで一意化。YMYL観点:出血傾向のある人はアスピリン含有製品を使用しないこと(手引き「してはいけないこと」別表)。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第5章 第1節「添付文書等への記載事項」(使用上の注意「してはいけないこと」出血傾向別表) 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。