衛生管理者 関係法令(有害業務以外) 問34:労働基準法
育児・介護に関する休業・就業制限と、これらに関連した労働基準法の規定に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア育児介護休業法(育児休業・介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律)に定める育児休業は、労働基準法の「産前産後休業(第65条)」と同一の制度であり、両者は重複して取得することはできない。
- イ生後1年未満の子を育てる労働者が育児時間(授乳等のための休憩時間)の付与を請求した場合、使用者は1日に合計2回(合計1時間)の育児時間を与えなければならない。
- ウ育児時間(労基法第67条に定めるもの)は、女性労働者のみが請求できる権利であり、男性労働者は請求できない。正答
- エ介護休業を取得した労働者に対して、使用者は賃金を支払わなければならない。
- オ育児休業期間中は、出産前・出産後を問わず、健康保険・厚生年金保険の保険料が免除される。
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正しいのはウです。労基法第67条の育児時間(授乳等のための休憩時間)は「生後満1年に達しない生児を育てる女性」が請求できる権利として規定されており、男性労働者には適用されません。これは労基法上の女性保護規定として設けられたものです(育児介護休業法上の育児休業は男女ともに取得可能)。
各誤り: ア→育児休業(育介法)と産前産後休業(労基法)は別々の制度であり、原則として産後休業(8週間)終了後に育児休業を取得する形で重複取得はできません(時期が連続するが同時ではない)。イ→育児時間は「1日2回・各少なくとも30分」が正しく、本肢の「1日に合計2回(合計1時間)」は各回30分以上という要件を欠く不正確な記述です。エ→育児休業中の賃金支払い義務は法律上なく、雇用保険から育児休業給付が支払われます。オ→保険料免除は「育児休業期間中」であり、出産前の育児休業はありません(産休中の保険料免除は別制度)。
育児・介護休業と労基法の関係(労基法第67条・育介法):
各選択肢の正誤と根拠:
- ア(誤): 産前産後休業(労基法第65条)は「産前6週間・産後8週間」の母体保護規定、育児休業(育介法第5条)は「子が1歳(最長2歳)になるまで取得できる育児目的の休業」であり、別々の制度です。産後休業が終了した後に育児休業が連続して取得されることが多いですが、両者は法律上別制度です。
- イ(誤): 育児時間(労基法第67条第1項)は「1日に2回、各少なくとも30分」の付与が義務付けられています。「合計1時間を2回」という記述は「1回1時間×2回=2時間」と誤解させる可能性があり、正しくは「1回30分×2回=合計60分(1時間)」です。
- ウ(正): 労基法第67条は「生後満1年に達しない生児を育てる女性」が育児時間を請求できる権利を定めています。男性は労基法第67条の育児時間を請求できません(育介法上の育児休業は男性も取得可能です)。
- エ(誤): 育児休業・介護休業中の賃金支払い義務は使用者には課されていません。育児休業中は雇用保険の「育児休業給付」、介護休業中は「介護休業給付」が支給されます(給付率は賃金の67%または50%等)。
- オ(誤): 健康保険・厚生年金の保険料免除(育児休業等期間中の保険料免除制度)は「育児休業等取得期間中」に適用されます。産前産後休業(労基法第65条)中の保険料免除は別の制度(産前産後休業中の免除)であり、「出産前の育児休業」という概念は存在しません(育児休業は子が生まれた後からの休業)。
【理論的背景】
育児・介護に関する法律は「労働基準法(母体保護・産前産後休業・育児時間等の女性保護)」と「育児介護休業法(男女共通の育児休業・介護休業制度)」の2層構造です。
労基法の育児規定(第67条の育児時間)は1947年の制定当初からある女性保護規定であり、「授乳等のための時間的保障」が目的です。現代では授乳だけでなく育児一般に使われることもありますが、法文上は「女性」限定です。
育介法の育児休業(1991年・育児休業法→1995年・育児介護休業法)は男女共通の権利として設けられており、労基法の女性保護規定を補完・拡充する形で整備されています。
育児時間(労基法第67条)vs 育児休業(育介法第5条)の主な違い:
- 育児時間: 1日2回各30分・女性のみ・子が1歳未満・無給でも可
- 育児休業: 子が1歳(最長2歳)になるまで・男女共通・まとまった休業(期間限定)
【実務・条文構造】
育児時間(労基法第67条)の詳細:
- 対象者: 生後満1年に達しない生児を育てる女性労働者(男性は不可)
- 請求内容: 1日に2回・各少なくとも30分(合計最低60分)
- 時間帯: 使用者が指定(始業前後・正午等)
- 賃金: 有給か無給かは就業規則等の定めによる(法令上は有給義務なし・実務では有給が多い)
- 行使方法: 労働者が請求した場合に付与義務発生
産前産後休業(労基法第65条)と育児休業(育介法第5条)の連続性:
- 産前休業: 出産予定日前6週間(本人請求が前提)
- 産後休業: 産後8週間(産後6週間後は医師許可+本人請求で就業可)
- 育児休業: 産後休業終了後から子が1歳(最長2歳)になるまで(男女共通)
社会保険料の免除制度(健保・厚年):
- 産前産後休業中の免除: 産前42日(多胎98日)〜産後56日の期間の保険料免除(産前産後休業期間中の申請が必要)
- 育児休業中の免除: 育児休業取得期間中の保険料免除(3歳未満の子の育休期間中)
両者は別の制度であり、産休→育休と連続する場合は、産休期間は産休中免除・育休期間は育休中免除が適用されます。
育児休業給付金(雇用保険):
- 支給率: 育休開始後180日(6か月)は給付率67%・以降は50%(現在改正により一部引き上げ議論あり)
- 使用者の賃金支払い義務: なし(雇用保険から支給)
【試験での位置づけ】
育児・介護休業に関する問題では「育児時間(労基法第67条)は女性のみ」「育児休業(育介法)は男女共通」の違いが最頻出です。また「育児休業中の賃金は雇用保険から給付(使用者支払い義務なし)」「産前産後休業と育児休業は別制度(連続するが別物)」も重要ポイントです。本問のウ(育児時間は女性のみ)が正答として機能するパターンは典型的です。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 産前産後休業と育児休業の連続取得は実務上一般的ですが、法的には別制度です。産後休業(8週間)終了後から育児休業が始まる形です。「重複して取得できない」という表現は「同時に両制度が適用されることはない(時期が違う)」という意味では正しいですが、設問の「同一制度」という表現が誤りです。
- イ: 育児時間は労基法第67条第1項により「1日2回・各少なくとも30分」(合計最低60分)と定められています。本肢が誤りとされるのは「1日に合計2回(合計1時間)」という記述で、正しくは「1回あたり少なくとも30分を1日2回」であり、回数・各回の長さの規定(各30分以上)を欠いた不正確な記述だからです。「合計1時間を一括で2回」という表現では、各回30分以上という要件が満たされるか不明確になります。
- ウ: 正答。育児時間(労基法第67条)の女性限定適用は、2023年以降の男性育休の推進(育介法改正)との文脈で「なぜ労基法上の育児時間は女性のみか」という問いが生じます。これは労基法第67条が授乳等の生物学的側面を想定した歴史的規定であるため。育介法の育児休業は男女共通で別制度です。
- エ: 育児休業中の賃金が使用者払いではなく雇用保険払いであることは、「育休取得のコストを社会全体で分担する」という設計です。使用者に全額負担を課すと中小企業での育休取得が困難になるための政策的判断です。
- オ: 「出産前の育児休業」は存在しません。育児休業は子の誕生後に取得するものです。産前休業(産前6週間)は産前産後休業として別規定です。社会保険の免除についても産休中と育休中で別の免除制度が適用されます。
【根拠法令】労働基準法 第67条(育児時間:生後1歳未満の生児を育てる女性が1日2回各30分請求可)・第65条(産前産後休業)、育児介護休業法 第5条(育児休業:男女共通)、雇用保険法(育児休業給付・使用者賃金支払い義務なし)
【補足】育児時間(労基法第67条)は女性労働者のみ(男性は育介法の育児休業を利用)。育児休業中の賃金は使用者払い義務なし(雇用保険の育児休業給付が支給される)。産前産後休業と育児休業は別制度。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働基準法(労基法)第67条(育児時間・女性労働者への付与)、育児介護休業法(育介法)第2条・第5条(育児休業の定義・対象者)。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。