衛生管理者 関係法令(有害業務以外) 問35:安全衛生管理体制
安全衛生教育に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア事業者は、労働者を雇い入れたときは、当該労働者が従事する業務に関する安全または衛生のための教育を行わなければならない。
- イ事業者は、労働者の作業内容を変更したときは、当該変更内容に関する安全または衛生のための教育を行わなければならない。
- ウ特別教育(安衛法第59条第3項)を行ったときは、教育の実施年月日・受講者・教育内容等を記録し、5年間保存しなければならない。正答
- エ事業者が行う安全衛生教育の時間は、原則として労働時間として取り扱い、当該教育の時間に対して賃金を支払わなければならない。
- オ事業者は、新たに職務に就くこととなった職長(作業を直接指揮または監督する者)に対して、一定の事項について安全または衛生のための教育を行わなければならないが、この義務は全業種には適用されない。
AI解説(初心者・標準・上級)
理解度に合わせて3レベルの解説を無料で読めます。根拠法令も明記。
誤りはウです。特別教育の記録の保存期間は3年間(安衛則第38条)であり、「5年間」という記述が誤りです。定期健康診断の記録(5年)や産業医の勧告記録(3年)と混同しやすい部分ですが、特別教育の記録保存は3年間です。
ア(雇入れ時安全衛生教育)、イ(作業内容変更時の教育)、エ(教育時間は労働時間として賃金支払い義務)、オ(職長教育は全業種には適用されない)はいずれも正しい記述です。
安全衛生教育の種類と義務の全体像(安衛法第59条・第60条):
各選択肢の正誤と根拠:
- ア(正): 安衛法第59条第1項の規定通り。雇い入れ時安全衛生教育は全事業者に義務付けられています(実施しない場合は行政指導・罰則対象)。
- イ(正): 安衛法第59条第2項の規定通り。作業内容の変更時にも教育義務が生じます(新しい作業に関するリスク・手順の教育)。
- ウ(誤): 特別教育の記録保存は安衛則第38条により3年間です。「5年間」は定期健康診断記録(安衛則第51条)の保存期間であり、特別教育記録(3年)と異なります。
- エ(正): 使用者が義務として行う安全衛生教育は「業務遂行上必要な教育」として労働時間に該当し、当該時間の賃金支払い義務があります(行政解釈・通達による)。
- オ(正): 職長教育(安衛法第60条)は、「建設業・製造業(食料品製造業を除く)・電気業・ガス業・自動車整備業・機械修理業」等の政令で定める業種(安衛令第19条)に限定されます。全業種ではありません。
主な教育の種類と保存期間:
- 雇入れ時安全衛生教育(第59条第1項): 記録義務は法令上明示なし(実施義務あり)
- 特別教育(第59条第3項・安衛則第38条): 3年間保存
- 技能講習: 修了証の発行あり(修了証の保存は本人管理)
【理論的背景】
安全衛生教育(安衛法第59条)は、労働者が安全に作業を行えるための知識・技能を習得させることで、労働災害の発生を防ぐ予防的措置です。「知らなかったために怪我をした」という状況を防ぐ基本的な仕組みです。
特別教育(安衛法第59条第3項)は「特定の危険・有害な業務に就く労働者に対して、その業務に関する特別の安全衛生教育を実施する義務」であり、危険有害業務の種類ごとに定められた特定の教育内容・時間を満たすことが求められます(安衛則第36条に業務のリストがあります)。
記録保存期間の違いを整理する重要性:
- 特別教育記録: 3年(安衛則第38条)
- 定期健康診断個人票: 5年(安衛則第51条)
- 衛生委員会議事記録: 3年(安衛則第23条第4項)
- 産業医の勧告記録: 3年(安衛則第14条の3)
- 面接指導結果記録: 5年(安衛則第52条の7)
この5つの記録と保存期間は試験で横断的に問われる重要な暗記事項です。
【実務・条文構造】
特別教育(安衛法第59条第3項・安衛則第36条)の対象業務例:
- 研削砥石の取替え等の業務
- アーク溶接機を用いて行う金属の溶接・溶断等の業務
- 動力プレスの金型・シャーの刃部または動力プレス機械(プレス機械)等の操作業務
- 電気取扱業務(600V以下・7000V以下等の各種)
- クレーン・デリックの運転業務(5トン未満等)
- 高所作業車の運転業務
- 酸素欠乏危険場所における作業業務
- ゴンドラの操作業務
- 石綿等が使用されている建築物等の解体・改修業務
- 足場の組立て等(高さ5m以上の構造物の組立て等)
特別教育の記録(安衛則第38条):
- 記録すべき内容: 教育の実施年月日・受講者氏名・教育内容・教育を担当した講師の氏名等
- 保存期間: 3年間(作成した日から起算)
- 保存者: 事業者(事業場単位での保管が原則)
- 電磁的記録での保存: 可能(紙媒体不要)
職長教育(安衛法第60条・安衛令第19条)の対象業種:
- 建設業
- 製造業(食料品製造業を除く一定の製造業)
- 電気業・ガス業
- 自動車整備業・機械修理業
→ この限定業種(安衛令第19条)が「全業種には適用されない」(選択肢オが正しい)根拠
雇入れ時安全衛生教育(安衛法第59条第1項・安衛則第35条)の実施事項:
1. 機械等・原材料等の危険性・有害性及びこれらの取扱い方法
2. 安全装置・有害物抑制装置または保護具の性能及びこれらの取扱い方法
3. 作業手順
4. 作業開始時の点検
5. 業務に関して発生するおそれのある疾病の原因及び予防
6. 整理・整頓・清潔の保持
7. 事故時等における応急措置及び退避
8. 前各号に掲げるもののほか、安全または衛生のために必要な事項
事務職・内勤業務等では1〜4の一部省略が認められることがあります。
【試験での位置づけ】
安全衛生教育の問題では「雇入れ時・作業変更時・特別教育の3種類の義務の有無」「特別教育記録3年保存(5年と混同しがち)」「職長教育は特定業種のみ」「教育時間は労働時間(賃金支払い義務あり)」の4点が頻出です。本問のウ(特別教育記録5年→正しくは3年)は最頻出の数値の引っかけです。定期健診(5年)と特別教育(3年)の区別は確実に覚えてください。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 雇入れ時安全衛生教育(安衛法第59条第1項)は、期間の定めなく全事業場・全業種に適用されます(特別教育や職長教育と違い業種限定なし)。パートタイム労働者・有期雇用労働者にも実施が必要です。
- イ: 作業内容変更時の教育(第59条第2項)は、同一事業場内での配置転換・担当業務の変更時にも義務が生じます。たとえばデスクワーク中心の労働者がフォークリフト操作を担当することになった場合等が典型例です。
- ウ: 正答の誤りの核心。「健康診断記録=5年」「特別教育記録=3年」の区別は試験に繰り返し出題される重要な数値です。両方とも「記録の保存」という共通の義務ですが、安全衛生教育(3年)と健康診断(5年)で異なります。
- エ: 教育時間の賃金支払い義務は行政解釈(労基法上の「労働時間」に該当)によって確立しています。任意参加の研修(就業時間外の自己啓発)とは異なり、使用者が義務として実施する安全衛生教育は拘束性があるため労働時間です。
- オ: 職長教育が特定業種に限定される理由は、これらの業種では現場の監督者(職長)の役割が特に大きく、職長の判断・指示が安全に直結するためです。事務所主体の業種(金融・情報・サービス業等)では職長という概念が薄いため対象外です。
【根拠法令】労働安全衛生法 第59条第1項(雇入れ時安全衛生教育)・第59条第2項(作業変更時)・第59条第3項(特別教育)・第60条(職長教育の義務・安衛令第19条の特定業種)、労働安全衛生規則 第38条(特別教育の記録:3年間保存)
【補足】特別教育の記録保存は3年間(5年ではない。5年は定期健診記録・面接指導記録)。雇入れ時・作業変更時の安全衛生教育は全業種に義務あり。職長教育は特定業種(製造業・建設業等)のみ。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働安全衛生法(安衛法)第59条(安全衛生教育)・第60条(職長教育)、労働安全衛生規則(安衛則)第38条(特別教育の記録保存:**3年間**)。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。