衛生管理者 関係法令(有害業務以外) 問46:労働基準法
有期労働契約に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア有期労働契約の契約期間は最長3年とされており、専門的知識等を有する労働者や満60歳以上の労働者であっても3年を超える契約期間を定めることはできない。
- イ同一の使用者との間で締結された有期労働契約が通算3年を超えた場合、労働者は無期労働契約への転換を申し込む権利(無期転換申込権)を得るが、申し込みをしなければ自動的に無期転換されることはない。
- ウ有期労働契約を更新しない(雇止め)場合、使用者は雇止めの30日前までに予告しなければならないが、この予告義務は3回以上更新された有期労働契約にのみ適用される。
- エ労働契約法第19条(雇止め法理)は、雇止めが「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」は無効と定めており、このルールは労働基準法ではなく労働契約法に基づく。正答
- オ無期転換後の労働条件は、別段の定めがない限り、転換直前の有期労働契約の労働条件と同一でなければならないが、「別段の定め」として就業規則や個別合意で労働条件を変更することは一切認められない。
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正しいのはエです。雇止め(有期労働契約の更新拒否)が「客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当でない場合」は無効という雇止め法理は、労働契約法第19条に明文化されています。これは労働基準法ではなく労働契約法の規定であるという記述は正確です。
各誤りの要点: ア→有期労働契約の上限は原則3年ですが、「専門的知識等を有する労働者」や「満60歳以上の労働者」については最長5年まで認められます(労基法第14条)。イ→無期転換申込権の発生要件は通算5年超であり、「通算3年を超えた場合」とするのは数値が誤りです(「申し込みがなければ自動転換されない」という後半は正しい)。ウ→雇止め予告30日前は正しいですが、適用範囲は「3回以上更新」だけでなく「1年以上継続している有期契約」も含まれるため、「3回以上更新にのみ適用」は誤りです。オ→別段の定めとして就業規則・個別合意で労働条件の変更は認められています(「一切認められない」は誤り)。
有期労働契約の主要ルール(労契法・労基法):
各選択肢の正誤と根拠:
- ア(誤): 有期労働契約の期間の上限は原則3年(労基法第14条第1項)ですが、「専門的知識等を有する者(高度専門職等)」および「満60歳以上の者」については最長5年まで認められます(同条第1項ただし書)。「3年を超える契約ができない」という断言は誤り。
- イ(誤): 無期転換申込権が発生する要件は「同一の使用者との間で有期労働契約が通算5年を超えて更新されたこと」(労契法第18条第1項)です。本肢は「通算3年を超えた場合」としており、発生要件の年数が誤りです(後半の「申し込みをしなければ自動転換されない」は正しい)。
- ウ(誤): 雇止めの30日前予告義務(安衛則等ではなく基準法の関連通達・労基法第14条に関する告示等)の適用対象は「3回以上更新した有期労働契約」または「1年を超えて継続して雇用した有期労働契約」の場合です(労基法第14条2項の有期労働契約に係る基準・厚生労働大臣告示)。「3回以上更新にのみ適用」は誤り。
- エ(正): 雇止め法理(実質的に無期雇用と同視できる場合または更新への合理的期待がある場合に雇止めを無効とする法理)は、労働契約法第19条に明文化されています(従前の判例法理の成文化)。
- オ(誤): 無期転換後は「別段の定め」として就業規則・個別合意による労働条件の変更が認められています(労契法第18条第1項後段)。「一切認められない」は誤り。
【理論的背景】
日本の非正規雇用問題の核心の一つが「有期雇用の不安定性」です。有期労働契約は更新を繰り返すことで実質的には長期・継続的な雇用関係になりながらも、雇止めリスクを常に抱える不安定な立場に置かれます。この問題に対応するため、2012年8月の労働契約法改正で無期転換ルール(第18条)と雇止め法理(第19条)が明文化されました。
無期転換ルールの目的: 有期雇用を繰り返すことで事実上の「恒常的雇用」として利用しながら雇止めリスクを転嫁するという「有期雇用の濫用」を防ぐため、通算5年超えで無期転換申込権を付与し、長期雇用者の地位を安定化させることが目的です。
【実務・条文構造】
有期労働契約の主要ルールの整理:
1. 契約期間の上限(労基法第14条):
- 原則: 最長3年
- 例外(最長5年):
- 高度専門知識等を有する有期労働者(1075万円以上の年収・高度専門職)
- 満60歳以上の労働者
- 建設工事・有期事業: その工事が完了するまでの期間(3年超えも可)
2. 無期転換ルール(労契法第18条):
- 発生要件: 同一の使用者との間で、通算5年を超えて有期労働契約が更新された場合
- 効果: 労働者が申し込むことにより、使用者が承諾したものとみなし、翌の有期労働契約期間から無期転換(自動承諾)
- 申込権の消滅時効: 申込権発生から申込可能期間内(次の契約期間中)
- クーリング期間: 通算期間に算入しない「空白期間」があった場合(6か月以上の空白でリセット)
3. 雇止め法理(労契法第19条):
- 適用要件:
- ①有期労働契約が過去に反復更新され、その雇止めが「無期労働契約の解雇と社会通念上同視できる場合」
- ②契約更新への合理的な期待がある場合
- 効果: 雇止めが「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当でない場合」は無効
- 解雇権濫用法理(労契法第16条)の類推適用という形の成文化
4. 雇止め予告(厚生労働大臣告示「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」):
- 予告義務の対象: 「3回以上更新した有期労働契約」または「1年以上継続雇用した有期労働契約」
- 予告期間: 期間満了の30日前まで
- 理由明示義務: 労働者が求めた場合は雇止めの理由を書面で明示
無期転換後の労働条件(労契法第18条第1項後段):
- 原則: 転換直前の有期労働契約の内容と同一
- 例外(別段の定め): 就業規則・労働協約・個別合意により変更可能
- 実務では、「無期転換した非正規社員の待遇を正社員と同一にする義務があるか」という同一労働同一賃金(パート・有期法)との関係が問題になります
【試験での位置づけ】
有期労働契約の頻出ポイント:
- 契約期間の上限: 原則3年・高度専門職等は5年
- 無期転換: 「通算5年超え」「申込制(自動転換ではない)」「翌の有期契約から無期転換」
- 雇止め予告: 「3回以上更新または1年以上継続」が対象・「30日前まで」
- 雇止め法理: 「労働契約法第19条(労働基準法ではない)」
「5年超え」と「5年以上」の区別(「超え」は5年を含まない)は数値問題として重要です。また「無期転換は申し込みが必要で自動ではない」「転換後の労働条件は別段の定めで変更可能」の2点は実務上の誤解が多い論点です。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 高度専門職・60歳以上の5年特則は、専門家・シニア人材の雇用促進を目的とした政策的な例外です。高度専門職(年収1075万円以上等の要件)の5年契約は、大学研究者・医師・弁護士等での活用が想定されています。
- イ: 無期転換申込権の発生要件は「通算5年超」です(本肢の「3年超」は誤り)。通算期間のカウントにはクーリング期間(原則6か月以上の空白期間)のリセットルールがあり、使用者が意図的に空白を設けて通算5年を超えさせないようにする「クーリング濫用」への対策として、厚生労働省の指針で注意が促されています。なお研究者・教員等の特例(科学技術・イノベーション創出活性化法、大学教員任期法)では無期転換が「10年超」とされる例外がある点も参考知識です。
- ウ: 予告義務の対象範囲(「3回以上更新」または「1年以上継続」)は、どちらか一方でも該当すれば予告義務が発生します。1回更新で既に1年を超えているような場合も対象です。
- エ: 雇止め法理の「客観的に合理的な理由」として認められるのは、「業務の廃止・縮小」「経営上の事情」「本人の能力・勤務態度の問題」等です。「有期契約だから更新しない」という理由だけでは不十分な場合があります(実態として無期と同視できる関係の場合)。
- オ: 無期転換後の待遇は「就業規則等で変更可能」ですが、パート・有期法(短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律)の「同一労働同一賃金」原則との整合性が求められます。転換後に正社員と不合理な待遇差がある場合は法律違反となります。
【根拠法令】労働基準法 第14条(有期労働契約の期間上限:原則3年・高度専門職等は5年)、労働契約法 第18条(無期転換ルール:通算5年超えで申込権発生)・第19条(雇止め法理:客観的合理的理由を欠く場合は無効)、厚生労働大臣告示(雇止め30日前予告:3回以上更新または1年以上継続が対象)
【補足】契約期間上限は原則3年(高度専門職等は5年)。通算5年超えで無期転換申込権発生(申込制・自動転換なし)。雇止め法理は労働契約法第19条(労基法ではない)。予告義務対象は「3回以上更新または1年以上継続」。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働契約法(労契法)第17条(有期労働契約の期間の上限)・第18条(無期転換ルール)・第19条(雇止め法理)、労働基準法(労基法)第14条(契約期間の上限)。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。