関係法令(有害業務以外)73労働基準法

衛生管理者 関係法令(有害業務以外) 問73:労働基準法

年次有給休暇に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。

  • 使用者は、労働者が指定した時季に年次有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季に変更することができる。
  • 使用者は、過半数組合等との書面協定を締結することにより、年次有給休暇のうち5日を超える部分について計画的付与を行うことができる。
  • 計画的付与を行うためには、過半数組合等との労使協定の締結が必要であり、計画的付与の対象となった日については、労働者の個別申請がなくても年次有給休暇が付与される。
  • 使用者が時季変更権を行使できるのは、当該時季に休暇を与えることが「事業の正常な運営を妨げる場合」に限られており、使用者が恣意的に変更することはできない。
  • 年次有給休暇の計画的付与により指定された日に、労働者がやむを得ない事情で休暇を取得できなかった場合、その日数分は翌年度に繰り越される。正答
正答:年次有給休暇の計画的付与により指定された日に、労働者がやむを得ない事情で休暇を取得できなかった場合、その日数分は翌年度に繰り越される。

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誤りはオです。計画的付与によって指定された年次有給休暇は、その日に付与されたものとして取り扱われます。労働者がやむを得ない事情で休暇を取得できなかった(実際に出勤した)場合でも、法律上その日の有給は使用済みとなり、翌年度への繰越はありません(計画的付与された日に出勤しても「欠勤扱い」にはなりませんが、有給の日数が回復するわけではありません)。

ア(時季変更権)、イ(5日超の計画的付与・協定必要)、ウ(計画的付与は個別申請不要)、エ(時季変更権は「事業の正常な運営を妨げる場合」限定)はいずれも正しい記述です。

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年次有給休暇の計画的付与と時季変更権(労基法第39条):

各選択肢の正誤と根拠:

  • ア(正): 労基法第39条第5項により、使用者の時季変更権(指定時季への変更権)が規定されています。行使できるのは「事業の正常な運営を妨げる場合」に限定されています。
  • イ(正): 労基法第39条第6項により、過半数組合または過半数代表者との書面による労使協定により、有給のうち5日を超える部分を計画的に付与できます(5日は本人が自由に取得できる時季指定権を保護するため除外)。
  • ウ(正): 計画的付与は労使協定で日程を決定するため、個別の労働者の申請を待たず「指定された日に一斉に付与」できます。一斉付与・部門別付与・個人指定付与の3方式があります。
  • エ(正): 時季変更権の行使要件「事業の正常な運営を妨げる場合」は客観的・合理的な理由が必要です。単に「代替要員がいない」だけでなく、具体的な業務支障の説明が求められます。
  • オ(誤): 計画的付与された日の有給は「その日をもって付与・取得」とされます。労働者が実際に出勤しても法律上は有給休暇の行使として扱われ、その日数分が翌年度に繰り越される制度設計にはなっていません。
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【理論的背景】

年次有給休暇の計画的付与(1987年労基法改正で導入)は、「取得率の向上」を目的とした制度です。日本の有給取得率は長年低水準であったことから、事業場単位で計画的に付与日を指定することで取得率を高める仕組みが設けられました。一方で「5日間は労働者の自由な取得を保障する」という原則から、計画的付与の対象は「5日を超える部分」に限定されています。

2019年施行の働き方改革で「年10日以上有給が付与される労働者への5日取得義務」(労基法第39条第7項)が設けられましたが、これは計画的付与とは別の制度です。5日取得義務の達成に計画的付与を活用することは可能です。

【実務・条文構造】

年次有給休暇の付与・取得の全体構造:

時季指定権(労働者の権利):

  • 労働者は「取りたい時季」を指定して有給を申請できる(労基法第39条第5項本文)
  • 使用者は指定された時季に有給を与えなければならない(原則)

時季変更権(使用者の権利):

  • 「事業の正常な運営を妨げる場合」に限り他の時季に変更できる(労基法第39条第5項)
  • 変更先の時季を必ず示す必要がある

計画的付与(労使協定による):

  • 労基法第39条第6項: 過半数組合等との書面協定が必要
  • 対象: 5日を超える部分(5日は労働者の自由な時季指定権として留保)
  • 方式: ①一斉付与(工場の一斉休業等)②部門別付与③個人指定付与
  • 計画的付与日に実際に出勤した場合: 有給休暇を取得したものとして扱われる(翌年繰越なし)

5日取得義務(2019年施行)(労基法第39条第7項・第8項):

  • 年10日以上の有給が付与される労働者が対象
  • 事業者は付与日から1年以内に5日以上取得させなければならない
  • 計画的付与を活用して5日取得義務の達成に充てることができる
  • 違反の場合: 30万円以下の罰金(労基法第120条)

計画的付与と5日義務の関係:

  • 計画的付与で5日を付与した場合、5日取得義務の5日に算入できる
  • ただし計画的付与の対象は「5日を超える部分」なので、付与日数が少ない労働者は計画的付与だけでは5日義務を達成できない場合がある

【試験での位置づけ】

年次有給休暇では「時季変更権の行使要件」「計画的付与の5日超限定・書面協定必要」「計画的付与後の取得扱い(繰越なし)」「5日取得義務(2019年以降)」が頻出です。本問オの「翌年繰越」は制度上存在しないという点が中核です。「計画的付与の5日超」と「5日取得義務」の関係は混乱しやすいため整理が重要です。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 時季変更権は「事業の正常な運営を妨げる」という要件の解釈が重要です。単に「人手が足りない」という抽象的理由だけでは不十分で、具体的な業務支障(代替要員確保の努力をしてもなお支障が生じること)の説明が必要とされています(判例・行政解釈)。
  • イ: 計画的付与の書面協定は就業規則に定める必要はなく、労使協定(書面)のみで足ります。ただし実務上就業規則に計画的付与に関する規定を設けることが一般的です。
  • ウ: 一斉付与の例として「工場の夏季休暇(○月○日〜○日を有給として付与)」があります。この場合、新入社員等で有給日数が不足している場合の取扱い(特別休暇として付与する等)を別途協定で定めることが多いです。
  • エ: 時季変更権の行使には「いつまでに使用者が変更通知をするか」という問題もあります。前日・当日の変更通知は権利の濫用として無効とされることがあります(判例)。
  • オ: 計画的付与日に病気等で実際に出勤できなかった場合も、法律上は有給として処理され繰越はありません。この点は実務上の問題になることがあり、就業規則や労使協定で「出勤できなかった場合の取扱い(別途欠勤・特別休暇等として扱う等)」を定めているケースもあります。

【根拠法令】労働基準法 第39条第5項(時季変更権・事業の正常な運営を妨げる場合に限定)・第39条第6項(計画的付与・5日超部分・書面協定必要)・第39条第7項(5日取得義務・2019年施行)

【補足】計画的付与後に出勤しても繰越なし(取得済みと扱われる)。計画的付与の対象は5日超部分(5日は労働者の時季指定権を保護)。時季変更権の行使は正常な運営を妨げる場合のみ。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働基準法(労基法)第39条(年次有給休暇)・第39条第5項(時季指定権・時季変更権)・第39条第6項(計画的付与)・第39条第7項(年5日取得義務)。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。

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