衛生管理者 関係法令(有害業務以外) 問74:健康管理
ストレスチェック制度(安衛法第66条の10)に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- アストレスチェックの実施者は、産業医でなければならず、保健師・看護師や心理士は実施者になれない。
- イ事業者は、ストレスチェックを実施した後、その結果を全ての受検労働者について当然に入手し活用することができる。
- ウストレスチェックの結果、高ストレスと判定された者が医師による面接指導を申し出た場合、事業者は申出を受けてから1か月以内に面接指導を実施しなければならない。
- エ事業者は、ストレスチェックの実施後に、集団ごとの集計・分析を行い、その結果に基づいて職場環境の改善を行うことが法律上義務付けられており、これを怠った場合は罰則の対象となる。
- オストレスチェックの結果を本人に通知する義務は実施者にあり、事業者はストレスチェックの結果を労働者の同意なく入手してはならない。正答
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正しいのはオです。ストレスチェックの結果は、まず実施者から労働者本人に直接通知されます(安衛法第66条の10第2項)。事業者が結果を入手するためには労働者本人の同意が必要であり(安衛則第52条の12)、同意なしに事業者が結果を取得することはできません。これはストレスチェックの「不利益取扱い防止」という制度目的を守るための重要な規定です。
各誤り: ア→産業医のほか、保健師・厚生労働大臣が定める研修を修了した看護師・精神保健福祉士・公認心理師等も実施者になれます。イ→同意なしに全結果を入手することはできません。ウ→面接指導の実施期限は「申出後おおむね1か月以内」とされていますが「1か月以内」の厳密な義務規定ではない点を確認。エ→集団ごとの集計・分析と職場環境改善は安衛則第52条の14による努力義務であり、法律上の義務でも罰則の対象でもありません。「法律上義務付けられ・怠れば罰則」という記述は誤りです。
ストレスチェック制度(安衛法第66条の10)の仕組み:
各選択肢の正誤と根拠:
- ア(誤): 安衛則第52条の10第1項により、ストレスチェックの実施者は産業医・保健師・厚生労働大臣が定める研修を修了した看護師・精神保健福祉士・公認心理師等が含まれます。産業医のみに限定されていません。
- イ(誤): 安衛法第66条の10第2項・安衛則第52条の12により、事業者はストレスチェックの結果を労働者の同意なく入手することができません。結果は実施者→労働者本人に直接通知され、本人の同意がある場合のみ事業者に提供されます。
- ウ(誤): 安衛則第52条の16により、医師による面接指導は「申出後おおむね1か月以内」に行うよう求められていますが、「1か月以内という厳密な期限」は法令上「おおむね」という表現であり、絶対的期限とは異なります(実務では速やかな実施が推奨)。
- エ(誤): 集団ごとの集計・分析とその結果に基づく職場環境改善は、安衛則第52条の14により「努めなければならない」(努力義務)とされています。法律上の義務ではなく、これを怠っても罰則はありません。エの「法律上義務付けられており、怠った場合は罰則の対象となる」という記述は誤りです。
- オ(正): 安衛則第52条の12により正しい記述です。結果の本人通知は実施者の義務であり、事業者への提供は本人同意が必要です。
【理論的背景】
ストレスチェック制度(2015年12月施行)は、職場のメンタルヘルス不調を一次予防(発症前の予防)するために設けられました。個人の精神健康状態を「測定・通知」し、高ストレス者が早期に医師面接指導を受けられる仕組みです。
「事業者が全結果を入手できない」という設計は、ストレスチェックの受検率向上のための重要な配慮です。もし事業者が全結果を把握できれば「結果が悪いと解雇や人事評価に影響するのではないか」という恐れから、受検を避ける労働者が増える可能性があります。「まず本人に通知・同意後に事業者へ」という一方向の情報流通が制度の信頼性の基盤です。
【実務・条文構造】
ストレスチェックの実施フロー:
ステップ1: 実施計画の策定(衛生委員会での審議)
- 実施方法・時期・実施者の選定・集団分析の方針等を衛生委員会で審議
ステップ2: ストレスチェックの実施
- 実施者: 産業医・保健師・研修修了の看護師/精神保健福祉士/公認心理師等
- 実施義務: 常時50人以上の事業場(50人未満は当分の間努力義務)
- 頻度: 1年以内ごとに1回
ステップ3: 結果の通知
- 実施者から直接労働者本人に通知(事業者を経由しない)
- 事業者への提供: 本人の同意が必要
ステップ4: 高ストレス者への面接指導
- 実施者が高ストレスと判定した者に対し、面接指導を勧奨
- 労働者の申出に基づき、事業者が医師に面接指導を依頼(申出後おおむね1か月以内)
- 面接指導の結果を記録(5年保存)
- 医師の意見に基づく就業上の措置の検討
ステップ5: 集団的分析・職場環境改善(努力義務)
- 50人以上の集団ごとに集計・分析(個人が特定されない単位)
- 結果に基づき職場環境改善に努める(義務規定ではなく努力義務)
ストレスチェック結果の事業者入手の可否:
| 状況 | 事業者入手の可否 |
|-----|--------------|
| 本人の同意あり | 可 |
| 本人の同意なし | 不可(安衛則第52条の12) |
| 高ストレス者で面接指導申出あり | 申出をもって同意とみなし可(安衛則第52条の12第2項) |
| 集団分析結果(個人識別不可の集計) | 可 |
実施者・事業者の守秘義務:
- 実施者は個人の結果を本人の同意なく事業者に提供してはならない
- 違反した場合の罰則規定は安衛法第120条(30万円以下の罰金)が適用される可能性
【試験での位置づけ】
ストレスチェック制度の試験頻出ポイントは「実施者(産業医限定ではない)」「同意なし提供不可」「集団分析は努力義務」「面接指導はおおむね1か月」「結果記録5年保存」の5点です。本問オの「同意なしで事業者が入手できない」は制度の根幹であり必須知識です。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 保健師・公認心理師等もストレスチェック実施者になれる設計は、産業医が不在の事業場(50〜999人でも産業医は非常勤のケースが多い)でも制度を機能させるための実務的配慮です。ただし実施者は「研修修了者」という要件を満たす必要があります。
- イ: 事業者が全結果を入手できないことへの対応として、実務では「高ストレス者率・受検率等の集団統計情報」は事業者に提供され、個人を特定しない形で職場改善に活用されます。
- ウ: 「おおむね1か月以内」という表現は、医師の手配・日程調整等に要する実務的な時間を考慮したものです。ただし長期間放置することは制度の趣旨に反するため、できる限り速やかな実施が求められます。
- エ: 集団分析の努力義務(安衛則第52条の14)という性質を正確に理解することが重要です。ストレスチェックの「実施」自体は50人以上で義務(50人未満は当分の間努力義務)ですが、「集団ごとの集計・分析とそれに基づく職場環境改善」は事業場規模にかかわらず努力義務であり、罰則はありません。集団分析は「職場全体の健康リスクの見える化」として重要な情報源であり実施が強く推奨されます。「努力義務(努めなければならない)」を「法的義務(しなければならない・罰則あり)」と誤認させる選択肢は頻出の引っかけです。
- オ: 面接指導を申し出た場合、その申出自体が「結果の事業者提供への同意」とみなされます(安衛則第52条の12第2項)。これにより事業者は面接指導に必要な健康情報を活用できます。申出後に事業者が「不利益取扱い(降格・解雇等)」を行うことは禁止されています(安衛法第66条の10第3項)。
【根拠法令】労働安全衛生法 第66条の10(ストレスチェック・実施義務・面接指導・不利益取扱禁止)、労働安全衛生規則 第52条の9〜21(実施者・結果通知・同意・提供禁止・面接指導・集団分析努力義務)
【補足】ストレスチェック結果は本人に直接通知→同意なしに事業者へ提供禁止。実施者は産業医に限定されない。集団分析は努力義務。面接指導は申出後おおむね1か月以内。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働安全衛生法(安衛法)第66条の10(ストレスチェック制度)、労働安全衛生規則(安衛則)第52条の9〜第52条の21(ストレスチェックの実施者・結果通知・同意・面接指導・集団分析)。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。