衛生管理者 関係法令(有害業務以外) 問78:安全衛生管理体制
産業医の選任要件に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア産業医は、当該事業場に専属の者でなければならず、複数の事業場で産業医を兼任することは常に禁じられている。
- イ常時1,000人以上の労働者を使用する事業場では、専属の産業医を選任しなければならない。正答
- ウ産業医は必ず内科医または精神科医の専門医資格を有する者でなければならない。
- エ産業医を選任すべき事由が発生した日から30日以内に選任しなければならない。
- オ常時500人以上の労働者を使用する事業場で、有害業務(深夜業等)に常時500人以上を従事させる場合でも、専属産業医の選任は不要である。
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正しいのはイです。安衛則第13条第1項第3号により、常時1,000人以上の労働者を使用する事業場では専属の産業医(当該事業場のみに専従する産業医)を選任しなければなりません。
各誤り: ア→専属産業医が必要な事業場以外(1,000人未満・有害業務500人未満の事業場)では、複数事業場の産業医を兼任する嘱託産業医で可能です。ウ→産業医の資格要件は「医師であること」かつ「産業医に必要な知識についての研修を修了したこと等」(安衛則第14条の2)であり、特定の専門科の資格は要件ではありません。エ→産業医の選任期限は「14日以内」であり30日以内ではありません。オ→有害業務に500人以上が従事する場合も専属産業医が必要です(後述)。
産業医の選任要件(安衛則第13条)の詳細:
各選択肢の正誤と根拠:
- ア(誤): 産業医は全ての事業場で専属が求められるわけではなく、1,000人以上(または有害業務500人以上)の事業場のみで専属義務があります。それ以下の事業場では嘱託産業医(複数事業場を掛け持ち可)での対応が認められています。
- イ(正): 安衛則第13条第1項第3号により、常時1,000人以上の事業場は専属産業医の選任義務があります。
- ウ(誤): 産業医の資格要件(安衛則第14条の2第1項各号)は①医師であること、②産業医学の実践的研修(労働衛生コンサルタント試験合格・産業医専門医の資格取得・厚生労働大臣の指定する研修修了等)の要件です。内科・精神科等の専門医資格は法令上の要件ではありません。
- エ(誤): 産業医の選任期限は安衛則第13条第2項(準用)により、衛生管理者・産業医とも選任義務発生から14日以内です。「30日以内」は誤りです。
- オ(誤): 安衛則第13条第1項第3号により、第13条第1項第3号に掲げる有害業務(多量の高熱・低温物体の取扱い、暑熱・寒冷な場所、有害放射線、粉じん、有害物取扱い、深夜業等)に常時500人以上を従事させる事業場でも専属産業医が必要です。「専属の選任は不要」というオの記述は誤りです。
【理論的背景】
産業医制度(安衛法第13条)は、事業場の労働者の健康管理に医師の専門知識を活用する制度です。事業場規模が大きくなるほど労働者数が多く・業務の多様性も高いため、より専門的・継続的な関与が必要になります。1,000人以上での「専属産業医」義務はこの考え方の制度化です。
「嘱託産業医」(非専属)は複数の事業場を掛け持ちする医師です。中小事業場(50〜999人)では専任の産業医を確保することが経済的・人材的に困難なため、嘱託による対応が認められています。地域産業保健センターや病院勤務医が兼務で嘱託産業医を務めるケースが実態として多く見られます。
【実務・条文構造】
産業医の選任規模・専属要件(安衛則第13条第1項第2号・第3号):
| 常時使用労働者数 | 必要な産業医数 | 専属要件 |
|------------|------------|--------|
| 50人以上 | 1人以上 | 不要(嘱託可) |
| 1,000人以上 | 1人以上 | 専属必要 |
| 有害業務500人以上 | 1人以上 | 専属必要 |
| 3,000人超 | 2人以上 | 専属必要 |
専属が必要な有害業務(安衛則第13条第1項第3号・抜粋):
- 多量の高熱物体を取り扱う業務・著しく暑熱な場所における業務
- 多量の低温物体を取り扱う業務・著しく寒冷な場所における業務
- ラジウム放射線・エックス線その他の有害放射線にさらされる業務
- 土石・獣毛等のじんあいまたは粉末を著しく飛散する場所における業務
- 水銀・砒素等の有害物を取り扱う業務
- 深夜業を含む業務(2交替制・3交替制等の常時夜業)
等(安衛則第13条第1項第3号に列挙)
産業医の資格要件(安衛則第14条の2第1項):
1. 医師であること(必須)
2. 以下のいずれかを満たすこと:
- 労働衛生コンサルタント試験(保健衛生区分)に合格した者
- 産業医科大学の産業医学基本講座を修了した者
- 学会認定産業医(日本医師会・産業医科大学等が認定)
- 厚生労働大臣の指定する研修(産業医研修50時間等)を修了した者
専属産業医と嘱託産業医の実務上の違い:
- 専属産業医: 当該事業場に常勤(週数回以上在駐)・他事業場と兼任不可
- 嘱託産業医: 月1〜数回の訪問・複数事業場を掛け持ち可
産業医の職務(安衛法第13条第1項・安衛則第14条):
1. 健康診断の実施とその結果に基づく措置
2. 長時間労働者への面接指導
3. ストレスチェックの実施(または実施補助)と高ストレス者への面接指導
4. 作業場等の巡視(月1回以上・条件付き2か月に1回緩和可)
5. 衛生委員会への参加・意見提供
6. 就業上の措置に関する意見提供
【試験での位置づけ】
産業医の選任要件では「1,000人以上または有害業務500人以上で専属必要」「選任期限は14日以内」「嘱託産業医の複数事業場兼任可(1,000人未満は)」「資格要件は専門科不問・産業医研修修了等が必要」が頻出です。本問のような「1,000人以上の専属要件」は最も基本的な知識として確実に習得が必要です。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 嘱託産業医の複数事業場兼務は、特に地方の中小事業場で重要です。産業医の絶対数が不足している地域では、1人の産業医が数十事業場を掛け持ちするケースもあります。2019年施行の安衛法改正で産業医の権限・情報提供が強化され、嘱託産業医であっても実効的な健康管理が期待されています。
- イ: 1,000人以上での専属要件は、規模の大きい事業場では週数回の訪問だけでは産業医の職務(健診・面接指導・巡視・委員会参加等)を果たせないという実態を反映しています。専属産業医を置く大企業では「産業保健チーム(産業医・保健師・看護師等)」を構成するケースが増えています。
- ウ: 産業医に内科・精神科等の専門資格は不要ですが、実務上は職場の健康管理に関連する知識(職業病・メンタルヘルス・生活習慣病予防等)が幅広く必要です。日本医師会認定産業医の研修プログラムでは、産業医学・産業保健の基礎から実践まで50単位以上の研修が求められます。
- エ: 衛生管理者も産業医も選任期限は「14日以内」で統一されています。この数字は衛生管理体制の不備期間を最小限にするためのものです。
- オ: 深夜業(常時夜業)は身体的負担が大きいため、大規模な夜間業務事業場では専属産業医による継続的な健康管理が必要です。500人以上の夜間交替制勤務者がいる事業場(ホテル・製造業等)は専属義務対象です。
【根拠法令】労働安全衛生法 第13条(産業医の選任)、労働安全衛生規則 第13条第1項第3号(専属要件:1,000人以上・有害業務500人以上)・第14条の2(産業医の資格要件)、安衛則第2条(14日以内の選任期限)
【補足】専属産業医が必要なのは「1,000人以上」または「有害業務従事者500人以上」の事業場。選任期限は14日以内(30日ではない)。資格は専門科不問・産業医研修修了等が要件。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働安全衛生法(安衛法)第13条(産業医の選任)、労働安全衛生規則(安衛則)第13条(産業医の選任人数・専属要件)。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。