登録販売者 第2章 人体の働きと医薬品 問1:人体の働きと医薬品
肝臓の機能および薬物の体内動態に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア肝臓は、消化管から吸収された栄養素や薬物を受け取り、代謝・解毒を行う役割を持つ。
- イ経口服用した薬物は、消化管で吸収された後に門脈を経て肝臓を通過し、一部が代謝されてから全身循環に入る。これを初回通過効果という。
- ウ舌下投与や坐薬(直腸投与)は、経口投与と異なり肝臓の初回通過効果を受けにくいため、薬物が全身循環に到達しやすい。
- エ肝臓は、グリコーゲンを貯蔵し、血糖値が低下したときにグルコースを放出することで血糖調節に関わる。
- オ肝臓で生成される胆汁は、小腸での脂肪の消化吸収を促進し、最終的にすべて体外に排出される。正答
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正答はオ(誤っているもの)です。
胆汁は脂肪の消化を助けるために肝臓でつくられ、胆嚢に蓄えられてから十二指腸に分泌されます。脂肪消化後、胆汁の多くは小腸で再吸収されて肝臓に戻ります(腸肝循環)。「すべて体外に排出される」という記述は誤りです。
ア・イ・ウ・エはすべて正しい記述です。特に重要なのは「初回通過効果」(イ・ウ)で、経口薬は肝臓を通ることで一部が代謝されてしまうため、舌下や坐薬のほうが肝臓を避けて全身に届きやすいという関係を押さえてください。
各選択肢の解説:
- ア(正): 肝臓は消化管から吸収された物質を門脈を介して受け取り、アンモニアをureaに変換するなどの解毒・代謝を行います。
- イ(正): 経口投与された薬物は胃腸で吸収→門脈→肝臓→体循環という経路をたどります。肝臓で初回通過時に代謝・不活化される割合が大きい薬物は、全身に届く量(バイオアベイラビリティ)が低下します。これを初回通過効果(first-pass effect)といいます。
- ウ(正): 舌下投与は口腔粘膜から直接血管へ吸収→門脈を経ずに全身循環へ。坐薬(直腸投与)は直腸粘膜から吸収→下腸間膜静脈→下大静脈(一部は門脈経由)となり、経口より初回通過効果を受けにくいです。
- エ(正): 肝臓はグリコーゲン合成酵素と分解酵素(グリコーゲンホスホリラーゼ)を持ち、食後は血糖が上がるとグリコーゲンとして貯蔵し、空腹時・運動時には分解してグルコースを血中に放出します。
- オ(誤・正答): 胆汁(胆汁酸・ビリルビン等を含む)は脂肪を乳化して消化を助けますが、小腸(主に回腸)で大部分(90%以上)が再吸収されて門脈を経て肝臓に戻ります。これを「腸肝循環(enterohepatic circulation)」といいます。「すべて体外に排出される」は誤りです。一部(胆汁酸の約5〜10%)のみが便として排泄されます。
【肝臓の多機能性と薬物動態への影響】
肝臓は体内最大の臓器(成人で約1〜1.5 kg)であり、以下の主要機能を持ちます:
1. 代謝・解毒: シトクロムP450(CYP)酵素系による薬物・毒素の代謝。薬物相互作用の大半はここで生じる。
2. タンパク質合成: アルブミン(薬物の血中輸送体)・凝固因子(プロトロンビン等)を合成。肝障害で出血傾向・薬物動態異常が起こる。
3. 糖代謝: グリコーゲン合成・分解・糖新生(アミノ酸・乳酸からグルコース産生)で血糖恒常性を維持。
4. 脂質代謝: 脂肪酸の合成・分解・リポタンパク質(LDL/HDL前駆体)の産生。
5. 胆汁生成: コレステロール由来の胆汁酸を合成し、胆汁として十二指腸に分泌。
【初回通過効果(first-pass effect)の実務的意義】
初回通過効果は投与経路の選択に直結します:
- 経口: 初回通過効果が大きい薬物は生体利用率が低い(例: ニトログリセリン経口では95%以上が肝臓で代謝→舌下で回避)。
- 舌下: 口腔粘膜の薄さと豊富な毛細血管網→素早く吸収→舌下静脈→全身循環(門脈を経由しない)。ニトログリセリン・ニフェジピンなどで利用。
- 坐薬(直腸投与): 直腸下部からの吸収は下腸間膜静脈→下大静脈(門脈バイパス)だが、直腸上部からの吸収は門脈経由となるため、完全に初回通過を回避するわけではない。ただし経口より初回通過効果を受けにくい。
- 貼付剤・吸入: 皮膚・気道粘膜から吸収→全身循環(初回通過効果なし・または少ない)。
登録販売者の観点では、OTC薬には経口剤が多く、初回通過効果の概念は「なぜ外用薬(湿布・点眼・坐薬)が内服薬と使い分けられるか」の理解に不可欠です。
【腸肝循環の臨床的意義】
胆汁酸の腸肝循環(回腸末端での胆汁酸再吸収→門脈→肝臓)は以下の点で重要です:
1. 効率性: 胆汁酸の90%以上が再利用されることで、コレステロール由来の胆汁酸を節約している。
2. 薬物の腸肝循環: 一部の薬物(例: モルヒネ、経口避妊薬のエチニルエストラジオール等)はグルクロン酸抱合→胆汁分泌→腸内細菌による加水分解→再吸収という腸肝循環を示す。このため排泄が遅延し作用持続時間が延びる。
3. 薬物相互作用: 腸内細菌叢を変える薬剤(抗生物質等)は腸肝循環を変化させ、一部の薬の有効性を変える可能性がある。
【試験での位置づけ】
第2章では「解剖生理(臓器の構造・機能)」と「薬物動態(ADME)」が二本柱です。肝臓関連では以下が頻出:
- 初回通過効果(選択肢イ・ウ)
- 胆汁の役割と腸肝循環(選択肢オ・今回の正答論点)
- 肝障害時の薬物動態変化(タンパク結合・代謝低下)
「代謝は主に肝臓、排泄は主に腎臓」という大枠の理解に、腸肝循環の「一部が胆汁として排泄→腸で再吸収→ループ」という例外を加えることで、第2章の薬物動態問題に対応できます。
【根拠】厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第2章第1節・第6節
<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): 致命的誤りなし。正答オ「胆汁はすべて体外排出」は誤り(=正答)で正答一意。胆汁酸の腸肝循環(回腸で大部分再吸収→門脈→肝臓)・初回通過効果(門脈経由で肝代謝→バイオアベイラビリティ低下)・舌下/坐薬が初回通過を受けにくい・肝のグリコーゲン貯蔵による血糖調節、いずれも手引き第2章(消化器系・薬の体内での働き)の趣旨と一致。腸肝循環という用語自体は手引き本文では限定的だが、設問の正誤判定(胆汁が全量排泄されない)は手引きの胆汁・脂質代謝の記述で十分支持される。薬学的正確性OK。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第2章 第1節「消化器系」、第6節「薬の体内での働き」 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。