登録販売者 第2章 人体の働きと医薬品 問4:人体の働きと医薬品
腎臓の構造と機能に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア腎臓は、血液から老廃物(尿素・クレアチニン等)をろ過して尿を生成するとともに、体液の電解質バランスや酸塩基平衡の調節にも関わる臓器である。
- イネフロン(腎単位)は腎小体と尿細管からなり、糸球体で血液をろ過して原尿を生成し、尿細管で有用物質(水・電解質・グルコース等)を再吸収する。
- ウ尿は主として腎臓で生成され、尿管を経て膀胱に蓄えられ、一定量に達すると尿意が生じて尿道から排泄される。
- エ腎臓で生成される原尿の量は、最終的に尿として体外に排泄される量とほぼ同量であり、尿細管での再吸収は少量にとどまる。正答
- オ腎臓は薬物の主要な排泄経路の1つであり、水溶性が高く・分子量が比較的小さい薬物は腎臓から糸球体ろ過を経て尿として排泄されやすい。
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正答はエ(誤っているもの)です。
原尿と最終的な尿の量は全く異なります。腎臓では1日に約150〜180L(体重60kgの場合の目安)の原尿が糸球体でろ過されますが、その約99%は尿細管で再吸収されます。最終的に体外に排泄される尿は1日約1〜2Lにすぎません。「尿細管での再吸収は少量」という記述は誤りです。
ア・イ・ウはいずれも腎臓の基本的な機能と尿の生成・排泄経路を正確に述べています。オは正しく、水溶性の高い薬物が腎臓から排泄されることを正確に述べています。
各選択肢の解説:
- ア(正): 腎臓は泌尿器系の中心的臓器で、①代謝産物(尿素・クレアチニン・尿酸)の排泄②血液量・浸透圧の調節③電解質(Na⁺・K⁺・HCO₃⁻等)バランスの維持④酸塩基平衡の調節⑤エリスロポエチン(造血ホルモン)産生⑥ビタミンD活性化などの多機能を持ちます。
- イ(正): ネフロン(腎単位)は腎臓の機能的最小単位で、各腎臓に約100万個存在します。腎小体(糸球体+ボウマン嚢)で血液をろ過して原尿を生成し、近位尿細管→ヘンレ係蹄→遠位尿細管→集合管の系で再吸収・分泌を行います。
- ウ(正): 尿は腎臓(腎盂)→尿管(左右2本、各約25〜30cm)→膀胱(一時貯留)→尿道という経路で体外へ排泄されます。膀胱の容量は約200〜500mL、一定量が貯留すると伸展受容器が刺激され尿意が生じます。
- エ(誤・正答): 糸球体でのろ過量(原尿)は健常成人で1日約150〜180L(1分あたり約100〜125mL〔GFR〕)に達します。その約99%(148〜178L)が尿細管で再吸収され、最終的に排泄される尿量は約1〜2L/日です。「尿細管での再吸収は少量」という記述は正反対であり誤りです。尿細管での再吸収は腎臓機能の中核です。
- オ(正): 薬物の腎排泄は①糸球体ろ過②尿細管分泌③尿細管再吸収の3要素で決まります。水溶性(極性が高い)・分子量が小さい・タンパク結合率が低い薬物は糸球体でろ過されやすく、尿細管で再吸収されにくいため、腎臓から効率的に排泄されます。
【ネフロンの精緻な構造と各部位の機能】
ネフロンの各セグメントは異なるトランスポーター・チャネルを持ち、特定の物質を選択的に再吸収・分泌します。
腎小体(Malpighi小体)
- 糸球体:毛細血管が糸玉状に絡まった構造。メサンギウム細胞・ポドサイト(足細胞)が選択的透過を支える。糸球体ろ過障壁は5〜8nmの孔を持ち、大分子(アルブミン等・分子量67,000)は原則通過しない。
- ボウマン嚢:糸球体を包む袋状の構造。ろ過された原尿を受け取る。
近位尿細管(PCT)
- 原尿の約65〜70%を再吸収(グルコース・アミノ酸・重炭酸イオン・Na⁺・水)
- 有機酸輸送体(OAT)による薬物の積極的分泌(ペニシリン・利尿薬等)
- 薬物相互作用の場:2種類の薬物が同じ輸送体を競合使用する場合、排泄速度が変化
ヘンレ係蹄(loop of Henle)
- 下行脚:水のみ吸収(Na⁺は吸収しない)→尿が濃縮される
- 上行脚:Na⁺・K⁺・Cl⁻を吸収(水は通さない)→尿が希釈される
- 対向流増幅機構により腎髄質に浸透圧勾配が形成される(尿濃縮の仕組み)
遠位尿細管(DCT)・集合管
- アルドステロン(副腎皮質ホルモン)が Na⁺再吸収・K⁺分泌を制御
- ADH(抗利尿ホルモン・バソプレッシン)が集合管の水透過性を増大→尿を濃縮
- ADH欠乏:尿崩症(大量の薄い尿)
【GFR(糸球体ろ過速度)の意義と腎機能評価】
GFR(Glomerular Filtration Rate)は腎機能の最重要指標です:
- 正常値:成人約100〜120 mL/min/1.73m²(クレアチニンクリアランスで推定)
- 加齢による低下:20歳以降、年率約1% GFRが低下→70歳で約70 mL/min
- 腎機能低下(GFR低下)による薬物動態への影響:
- 腎排泄型薬物の半減期延長→蓄積→副作用リスク増大
- 用量調整が必要(eGFRに基づく腎機能別用量設定)
登録販売者の実務での重要点:
- OTCの添付文書で「腎臓の病気がある方は服用前に相談」という記載がある薬物の意味を理解する
- NSAIDs(イブプロフェン等)は腎血流量を低下させ、すでに腎機能が低下している患者で急性腎障害を誘発するリスクがある
【薬物の腎排泄の3要素と相互作用】
1. 糸球体ろ過: 血漿中の遊離型薬物のみがろ過される。タンパク結合型は大分子のため通過しない。→タンパク結合率が高い薬物は腎排泄が少ない(代謝で消失)。
2. 尿細管分泌(能動輸送): 有機アニオン輸送体(OAT)・有機カチオン輸送体(OCT)が薬物を血液側から尿細管腔内に輸送。ろ過分を上回る量が排泄可能。この段階で競合的相互作用が生じやすい(例:プロベネシドがペニシリンのOAT分泌を阻害→ペニシリン血中濃度上昇)。
3. 尿細管再吸収: 尿細管腔内に分泌・ろ過された薬物が受動拡散(脂溶性薬物)または能動輸送で血液側に戻る。尿のpHが再吸収率に影響:酸性尿→弱酸性薬物が非イオン化型に→再吸収↑(排泄↓)。
【試験での位置づけ】
「原尿の99%が尿細管で再吸収される」「最終排泄量は1〜2L/日」という数字は頻出の基礎知識です。「代謝は主に肝臓、排泄は主に腎臓」という大枠を押さえた上で、腎機能低下時の薬物蓄積リスクを第1章(高齢者・小児への配慮)の知識と連動させて理解しておくことが高得点につながります。
【根拠】厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第2章第3節
<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): 泌尿器系を一次情報(PMDA/標準解剖学)と突合。①ネフロン(腎小体=糸球体+ボウマン嚢/尿細管)約100万個は正確。②糸球体で大量の原尿を生成し約99%を尿細管で再吸収、最終尿は約1〜2L/日が核心で、設問エ「原尿量≒最終尿量・再吸収は少量」は明白な誤り→正答エは一意に確定。③原尿量150〜180L/日・GFR正常値は標準値(手引きは具体数値より「大量にろ過し大部分を再吸収」の趣旨記述)で正答判定に影響なし。④腎臓は薬物排泄の主経路で水溶性・低分子・低タンパク結合の薬物がろ過排泄されやすい、も正確。設問・正答の事実誤りなし。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第2章 第3節「泌尿器系」 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。