登録販売者 第2章 人体の働きと医薬品 問3:人体の働きと医薬品
心臓・血液循環に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいものの組合せ**はどれか。 - ア. 心臓は4つの部屋(右心房・右心室・左心房・左心室)からなり、右心系は肺循環(小循環)、左心系は体循環(大循環)を担う。 - イ. 肺循環では、右心室から肺動脈を通じて肺へ送られた静脈血が、肺でガス交換(酸素の取り込み・二酸化炭素の排出)を受けて動脈血となり、肺静脈を経て左心房に戻る。 - ウ. 大動脈・肺動脈などの動脈(Artery)は、必ず酸素が豊富な動脈血(Arterial blood)を運ぶ。 - エ. 左心室は全身に血液を送り出すため、右心室より強い力が必要であり、筋肉(心筋)が厚い。 - オ. 血液が心臓の各部屋を逆流しないように、各部屋の出口に弁(房室弁・半月弁)が備わっている。
- 1ア・ウ
- 2イ・エ
- 3ア・イ・エ・オ正答
- 4ウ・エ・オ
- 5ア・イ・ウ・オ
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正答は3(ア・イ・エ・オが正しい)です。
ウが誤りです。動脈(Artery)は心臓から出る血管を指しますが、必ずしも動脈血(酸素が豊富な血液)を運ぶわけではありません。肺動脈は右心室から肺へ向かう動脈ですが、その中を流れるのは静脈血(酸素が少ない血液)です。逆に肺静脈には動脈血(酸素が豊富)が流れます。
アは正しく心臓の4部屋と循環の基本を述べています。イは肺循環の流れ(静脈血→肺→動脈血)を正確に説明しています。エは左心室の厚さについて正しく述べています。オは逆流防止の弁の存在を正しく述べています。
各記述の解説:
- ア(正): 心臓は心膜で包まれた拳大の筋肉性器官で、右心房・右心室・左心房・左心室の4腔からなります。右心系(右心房→右心室)は肺循環(右心室→肺動脈→肺→肺静脈→左心房)の動力、左心系(左心房→左心室)は体循環(左心室→大動脈→全身→大静脈→右心房)の動力を担います。
- イ(正): 体循環を経て全身の組織に酸素を渡した静脈血(CO₂多・O₂少)は右心房→右心室→肺動脈→肺へと送られます。肺の肺胞でガス交換(O₂取り込み・CO₂排出)が行われ、動脈血(O₂多・CO₂少)となって肺静脈→左心房→左心室に戻ります。
- ウ(誤): 動脈(Artery)は「心臓から出る方向の血管」という解剖学的定義であり、流れる血液の種類(動脈血・静脈血)とは直接対応しません。肺動脈(右心室→肺)には静脈血が流れ、肺静脈(肺→左心房)には動脈血が流れます。この逆転した表現は試験の定番引っかけです。
- エ(正): 左心室は体循環(全身への血液供給)を担うため、遠くまで高圧で血液を送り出す必要があります。そのため左心室の心筋は右心室より3倍近く厚く(約10〜11mm vs 約3〜5mm)、強い収縮力を持ちます。
- オ(正): 心臓の弁は血液の逆流を防ぐ構造です。右心房→右心室間:三尖弁(房室弁)、左心房→左心室間:僧帽弁(二尖弁・房室弁)、右心室→肺動脈間:肺動脈弁(半月弁)、左心室→大動脈間:大動脈弁(半月弁)。弁の異常(弁膜症)は心不全の原因となります。
【循環系の精緻な構造:血液の流れを完全に追う】
体内を循環する血液の経路を完全に把握することが第2章の循環器系問題の核心です。
体循環(大循環)の完全なルート:
左心室 → 大動脈弁 → 大動脈 → 全身の動脈 → 細動脈 → 毛細血管(組織でO₂放出・CO₂受取)→ 細静脈 → 静脈 → 上大静脈(上半身)・下大静脈(下半身)→ 右心房 → 三尖弁 → 右心室
肺循環(小循環)の完全なルート:
右心室 → 肺動脈弁 → 肺動脈(幹→左右に分岐)→ 肺(肺胞毛細血管でガス交換)→ 肺静脈(左右2本ずつ、計4本)→ 左心房 → 僧帽弁 → 左心室
【動脈・静脈と動脈血・静脈血の混同を整理する】
試験の定番引っかけである「動脈=動脈血」という誤解を根絶するための整理:
| 血管名 | 方向 | 流れる血液の種類 |
|---|---|---|
| 大動脈・全身動脈 | 心臓→全身 | 動脈血(O₂豊富) |
| 全身静脈・大静脈 | 全身→心臓 | 静脈血(O₂乏しい) |
| 肺動脈 | 右心室→肺 | 静脈血(O₂乏しい) |
| 肺静脈 | 肺→左心房 | 動脈血(O₂豊富) |
動脈(Artery)の定義は「心臓から血液が出ていく方向の血管」であり、その中を流れる血液の質(O₂量)とは別の概念です。肺動脈・肺静脈だけが例外的に「血管名と血液の質が逆転」する部分として必ず覚えておく必要があります。
【心臓の弁の仕組みと弁膜症の理解】
心臓の4つの弁はそれぞれ一方向にのみ開く構造で、逆流を防ぎます:
- 房室弁(AV弁): 心房から心室への開口部。収縮期(心室が収縮するとき)に閉じて逆流防止。
- 三尖弁(右側・3枚の弁尖)
- 僧帽弁(左側・2枚の弁尖・二尖弁)
- 半月弁(SL弁): 心室から大血管への開口部。拡張期(心室が弛緩するとき)に閉じて逆流防止。
- 大動脈弁(左心室→大動脈)
- 肺動脈弁(右心室→肺動脈)
弁の異常(弁膜症):
- 狭窄症: 弁が十分に開かない→血液の流れが阻害→上流側の圧が上がる
- 逆流症(閉鎖不全症): 弁が完全に閉まらない→逆流→心臓の過負荷
OTC薬との関連:心疾患(弁膜症・心不全等)の患者は多くのOTC薬(NSAIDs・一部の感冒薬・プソイドエフェドリン等)が禁忌または注意が必要です。登録販売者は心疾患の既往を聴取することが重要です。
【冠動脈:心臓自身への血液供給】
心筋は大動脈の基部から分岐する冠動脈(左・右冠動脈)によって血液供給を受けます。冠動脈が動脈硬化・血栓で閉塞すると心筋梗塞が起こります。一般用医薬品では、ニトログリセリン(狭心症発作緩和・舌下投与)がOTCとして流通しており、初回通過効果を回避するための舌下投与の重要性が第2章の知識(初回通過効果)と連動します。
【血圧と心拍出量の基本】
血圧 = 心拍出量(CO)× 末梢血管抵抗(TPR)
- 心拍出量 = 1回拍出量 × 心拍数
- 交感神経刺激(アドレナリン)→心拍数増加・心収縮力増大・末梢血管収縮→血圧上昇
- 副交感神経(迷走神経)→心拍数低下→血圧低下
OTCの鼻炎薬(プソイドエフェドリン等)が高血圧患者に禁忌となる理由はここにあります(交感神経刺激薬→血圧上昇リスク)。
【試験での位置づけ】
「肺動脈には静脈血が流れる(肺静脈に動脈血)」という逆転は、第2章で最も頻出する引っかけパターンの1つです。本問のウのように「動脈は必ず動脈血を運ぶ」という誤記述を正確に否定できるよう、肺循環の血液の質(O₂量)を意識してルートを覚えておくことが必須です。
【根拠】厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第2章第2節
<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): 循環器系を標準解剖学と突合。①「肺動脈には静脈血、肺静脈には動脈血が流れる」「動脈=心臓から出る血管であり必ず動脈血を運ぶわけではない」が核心で、設問ウ「動脈は必ず動脈血を運ぶ」は明白な誤り。よって正しい組合せ=ア・イ・エ・オで正答3は一意に確定。②心臓4腔・体循環/肺循環・房室弁/半月弁・左心室の心筋が右心室より厚い、は正確。③左心室壁厚の具体数値(10〜11mm vs 3〜5mm)・肺静脈4本は教育的補足だが標準値であり正答判定に影響なし。設問・正答の事実誤りなし。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第2章 第2節「循環器系」 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。