第2章 人体の働きと医薬品7人体の働きと医薬品

登録販売者 第2章 人体の働きと医薬品 問7:人体の働きと医薬品

薬物の体内動態(吸収・分布・代謝・排泄)に関する次のア〜オの記述について、**誤っているものの組合せ**はどれか。 - ア. 経口服用した薬物は、消化管で吸収された後、門脈を経て肝臓を通過し代謝を受けてから全身に分布する(初回通過効果)。これにより、経口投与した場合の生体利用率は静脈注射と比べて低くなる場合がある。 - イ. 薬物は血液中でアルブミンなどの血漿タンパクと結合して運ばれるが、タンパク結合型の薬物はそのままの状態で受容体に結合し、薬理作用を発揮する。 - ウ. 薬物の代謝は主に腎臓で行われ、排泄は主に肝臓で行われる。 - エ. 薬物の代謝によって、元の薬物より水溶性が高くなった代謝産物は腎臓から排泄されやすくなる。 - オ. 一般に、薬物の半減期が短いほど、1回投与後に血中から薬物が早く消失し、次の投与までの間に薬効が持続しにくくなる傾向がある。

  • 1ア・エ
  • 2イ・ウ正答
  • 3ア・オ
  • 4ウ・エ
  • 5イ・オ
正答:2イ・ウ

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正答は2(イとウが誤り)です。

イは誤りです。血漿タンパクと結合した薬物(タンパク結合型)は受容体に結合できません。薬理作用を発揮するのは血漿タンパクと結合していない「遊離型」の薬物だけです。

ウは誤りです。「代謝は主に腎臓、排泄は主に肝臓」は逆です。正しくは「代謝は主に肝臓(CYP酵素系)、排泄は主に腎臓(尿として)」です。

アは正しく初回通過効果を正確に述べています。エも正しく、代謝による水溶性上昇→腎排泄促進というメカニズムを述べています。オも正しく、半減期の短い薬は消失が早いことを正確に表現しています。

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各記述の解説:

  • ア(正): 初回通過効果(first-pass effect)は経口投与に特有の現象で、薬物が消化管吸収→門脈→肝臓で代謝→全身循環という経路をたどる際に、肝臓での代謝により薬物量が減少します。このため経口投与では静脈内投与より全身に届く薬物量(バイオアベイラビリティ)が低くなります。初回通過効果が大きい薬物(例:ニトログリセリン)は経口では効果が出にくいため、舌下・貼付等の経路が選ばれます。
  • イ(誤): 血漿タンパク結合型の薬物は「結合型」として分子量が大きくなり、受容体への結合や組織への移行ができません。薬理作用(受容体結合・組織移行)を発揮できるのは「遊離型(非結合型)」の薬物のみです。血漿タンパク(アルブミン・α₁-酸性糖タンパク等)は薬物のリザーバー(貯蔵庫)として機能し、遊離型が組織で消費されると結合型から遊離型が補充されます。
  • ウ(誤): 薬物の「代謝」は主に肝臓で行われ、肝臓のCYP酵素系(Phase I代謝:酸化・還元・加水分解)と抱合酵素(Phase II代謝:グルクロン酸抱合・硫酸抱合等)が中心的役割を果たします。「排泄」は主に腎臓(糸球体ろ過・尿細管分泌)から尿として行われます。腎臓は代謝を行いません(腎臓での代謝はわずか)。
  • エ(正): 肝臓での代謝(Phase I・II)の目的の1つは薬物を水溶性の高い形に変換して腎排泄を促進させることです。例えばグルクロン酸抱合(Phase II)では高度に水溶性の抱合体が形成され、腎臓から効率よく排泄されます。
  • オ(正): 半減期(t₁/2)は血中濃度が半分に低下するまでの時間で、薬物の体内からの消失速度を示します。半減期が短い薬物は同じ量を投与しても血中濃度が速く低下し、有効濃度を維持するために投与間隔を短くするか、放出制御型製剤が必要になります。
上級誤答論破・根拠(手引き)まで深掘り

【ADMEの系統的理解:薬物動態学の4要素】

薬物の体内動態はAdsorption(吸収)・Distribution(分布)・Metabolism(代謝)・Excretion(排泄)の4要素で構成され、略してADMEと呼ばれます。

A. 吸収(Absorption)

投与経路ごとの特性:

| 投与経路 | 初回通過効果 | バイオアベイラビリティ | 特徴 |

|---|---|---|---|

| 静脈内注射(iv) | なし | 100%(定義) | 即効性・完全吸収 |

| 経口(po) | あり(肝臓通過) | 薬物により異なる(0〜100%) | 最も一般的・患者コンプライアンス高 |

| 舌下(sl) | なし(口腔粘膜→直接静脈) | 高い | 速効性・ニトログリセリン等 |

| 直腸坐薬(pr) | 部分的(直腸下部→下大静脈・直腸上部→門脈) | 中等度 | 嚥下困難患者・乳幼児 |

| 経皮(td) | なし(皮膚→直接循環) | 薬物・製剤依存 | 持続放出・局所または全身作用 |

| 吸入(inh) | なし(肺胞→肺静脈) | 高い(全身作用目的の場合) | 即効性・気管支疾患 |

B. 分布(Distribution)

  • 血漿タンパク結合:遊離型のみ活性・結合型は不活性なリザーバー
  • 血液脳関門(BBB):脳への薬物分布を制限(脂溶性・小分子が通過しやすい)
  • 胎盤関門:胎児循環への移行(脂溶性・小分子が通過→催奇形性・胎児毒性のリスク)
  • 組織への蓄積:脂溶性薬物が脂肪組織に蓄積→長期使用で蓄積→服薬中断後も長く残存

C. 代謝(Metabolism)

Phase I代謝(官能基の露出・導入)

CYP(シトクロムP450)酵素:酸化(最多)・還元・加水分解。主に肝小胞体に存在。薬物を水溶性・極性が高い形に変換する(場合によっては活性代謝物生成・プロドラッグ活性化)。

Phase II代謝(抱合)

グルクロン酸転移酵素(UGT)・スルフォトランスフェラーゼ等が、Phase I産物または一部の薬物を直接、グルクロン酸・硫酸・グリシン・グルタチオン等と抱合→大幅に水溶性増大→腎・胆汁排泄。

CYP誘導・阻害の重要性:

  • CYP阻害:薬物AがCYPを阻害→薬物Bの代謝低下→血中濃度上昇→副作用リスク
  • CYP誘導:薬物AがCYP発現増大→薬物Bの代謝促進→血中濃度低下→効果減弱
  • OTC関連例:シメチジン(H₂ブロッカー)がCYP阻害→他薬の血中濃度に影響

D. 排泄(Excretion)

  • 腎排泄(主要経路):糸球体ろ過 + 尿細管分泌 − 尿細管再吸収
  • 胆汁排泄:大分子・抱合体が胆汁に分泌→腸管へ→一部は腸肝循環で再吸収
  • 糞便排泄:腸内細菌による代謝・不溶性物質
  • 呼気排泄:揮発性物質(エタノール・麻酔薬)
  • 乳汁排泄:授乳婦での乳児への移行リスク

【半減期と投与設計の実務的意味】

半減期(t₁/2)= 0.693 / 消失速度定数(ke)

  • 半減期の5倍でほぼ完全に体内から消失(99%消失≒5×t₁/2)
  • 定常状態(steady state)への到達:半減期の5倍で定常状態に近づく→定常状態での血中濃度が安定した有効濃度になるよう用法設計

登録販売者の視点:半減期の長い薬物は、腎・肝機能低下者で蓄積しやすく、特に高齢者・腎不全患者での副作用リスクが増大します。

【試験での位置づけ】

「代謝は主に肝臓、排泄は主に腎臓」は第2章の最重要基礎知識であり、逆に記述した選択肢は必ず誤りです。「タンパク結合型は不活性(遊離型が薬理活性)」も頻出ポイントで、結合型が「そのまま受容体に結合する」という記述は誤りのパターンとして覚えておくことが重要です。

【根拠】厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第2章第6節

<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): 薬の体内動態(ADME)を手引き・標準薬理と突合。①「代謝は主に肝臓(CYP等)、排泄は主に腎臓(尿)」が核心で、設問ウ(代謝は腎臓・排泄は肝臓)は逆=明白な誤り。②薬理活性は遊離型のみで、設問イ「タンパク結合型がそのまま受容体に結合し作用」は誤り。よって誤りの組合せ=イ・ウで正答2は一意に確定。③初回通過効果・代謝による水溶性上昇→腎排泄促進・半減期が短いほど早く消失、は正確。④Phase I/II分類・バイオアベイラビリティ表・t₁/2=0.693/keは教育的補足で正答判定に影響なし。設問・正答の事実誤りなし。 -->

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第2章 第6節「薬の体内での働き」 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。

関連論点

薬物の体内動態(ADME頻出度A

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