第2章 人体の働きと医薬品20人体の構造と働き(薬物動態・作用部位)

登録販売者 第2章 人体の働きと医薬品 問20:人体の構造と働き(薬物動態・作用部位)

内服薬の生体内運命および薬の全身作用・局所作用に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。

  • 内服薬の有効成分は消化管(主に小腸)から吸収された後、門脈を通じて肝臓に達する。この段階で一部の成分が肝臓で代謝・分解される現象を初回通過効果(ファーストパス効果)と呼ぶ。
  • 局所作用を目的とした薬(例: 抗菌成分含有の外用薬・目薬・座薬による消毒・胃腸薬の一部)は、有効成分が作用部位の局所にのみ留まり体循環に入らないため、全身への副作用は生じない。正答
  • 全身作用を目的とした内服薬(解熱鎮痛薬・感冒薬等)は、消化管から吸収→血液を介して全身に分布→標的臓器・組織で作用するという経路をたどる。
  • 直腸投与(座薬・坐剤)の場合、直腸下部の静脈は門脈に合流せずに直接体循環(下大静脈)に入るルートがあるため、一部の坐剤では初回通過効果を一部回避できる。
  • 舌下投与(舌下錠)は、口腔粘膜下の毛細血管から薬物が直接体循環に吸収されるため、消化管経由の初回通過効果を受けず、速やかに血中濃度を上昇させることができる。
正答:局所作用を目的とした薬(例: 抗菌成分含有の外用薬・目薬・座薬による消毒・胃腸薬の一部)は、有効成分が作用部位の局所にのみ留まり体循環に入らないため、全身への副作用は生じない。

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正答はイです。「局所作用薬の有効成分が体循環に全く入らない・全身副作用が生じない」は誤りです。

局所作用を目的とした薬でも、有効成分の一部が局所の粘膜・皮膚から吸収されて体循環に入ることがあります。例えばステロイド含有の外用薬の長期大面積塗布では全身性の副作用(HPA軸抑制)が生じます。目薬の成分が鼻涙管から全身に吸収されるケースもあります。「局所作用薬は絶対に全身副作用を生じない」という断言が誤りです。

他の選択肢はすべて正しい記述です。アの初回通過効果、ウの全身作用薬の経路、エの座薬と初回通過効果回避、オの舌下投与の特性はすべて正確です。

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各選択肢の詳細解説:

  • ア(正): 初回通過効果(First-Pass Effect)は内服薬の重要な概念です。消化管吸収→門脈→肝臓→全身循環の経路で、肝臓での初回代謝により血中に到達する薬物量が減少します。これが内服薬の「バイオアベイラビリティ(生物学的利用能)」が100%未満になる主要な理由の一つです。
  • イ(誤・正答): 局所作用薬でも全身への吸収・副作用は起こりえます。代表例: ①眼科用β遮断薬(ちなみにOTCの点眼薬では含有量が少なく問題になりにくいが、処方薬では全身性の徐脈が問題になることがある)、②ステロイド含有外用薬(大面積・長期使用で全身性副作用)、③座薬(肛門周囲から全身吸収)。「全身副作用は生じない」は誤りです。
  • ウ(正): 全身作用を目的とする内服薬の経路: 口腔→食道→胃(溶解)→小腸(吸収・大部分)→門脈→肝臓(初回通過効果)→体循環→全身分布→標的臓器で作用→代謝→排泄。
  • エ(正): 直腸には上直腸静脈(門脈系)と下・中直腸静脈(体循環系)の両系統があります。坐剤を直腸下部に挿入した場合、下・中直腸静脈→下大静脈→体循環という経路で一部が初回通過を回避できます(ただし完全ではない)。これが特定の坐剤(ジクロフェナク坐剤等)で内服よりも速い発現が見られる理由の一つです。
  • オ(正): 舌下投与(ニトログリセリン舌下錠等)は舌下静脈→上大静脈→体循環という経路で門脈を経由しません。初回通過効果なし・速やかな吸収・発現が特徴で、狭心症の発作時の緊急投与に適しています。

投与経路と初回通過効果の関係:

| 投与経路 | 初回通過効果 | 特徴 |

|---|---|---|

| 経口(内服) | あり(大きい) | 最も一般的・便利。BA低下 |

| 舌下・バッカル | なし | 速やかな吸収・発現 |

| 直腸(坐剤) | 一部回避可 | 嘔吐時・乳幼児・意識不明時に有用 |

| 静脈注射 | なし | 100%BA・即時効果 |

| 経皮(貼付薬) | なし | 持続的放出・消化管障害回避 |

| 点眼・点鼻(局所) | 通常は最小 | 局所作用が主だが一部全身吸収あり |

上級誤答論破・根拠(手引き)まで深掘り

【バイオアベイラビリティ(BA)と初回通過効果の定量的理解】

バイオアベイラビリティ(F)の定義:

F(%)= [体循環に到達した薬物量 / 投与量] × 100

初回通過効果の程度を示す「抽出率(E)」:

E = (Ca - Cv) / Ca(Ca: 門脈血中濃度、Cv: 肝静脈血中濃度)

F = 1 - E(肝抽出率が高いほどBAが低い)

代表的な薬物の経口バイオアベイラビリティ:

| 薬物 | 経口BA | 高BAか低BAか | 主な原因 |

|---|---|---|---|

| ニトログリセリン(経口) | 約1〜10% | 非常に低い | 肝臓で急速に代謝(硝酸エステル還元酵素) |

| プロプラノロール | 約25〜35% | 低い | 高い肝抽出率 |

| アセトアミノフェン | 約70〜90% | 高い | 低〜中程度の肝抽出率 |

| ロキソプロフェン | 約80%以上 | 高い | 低い肝抽出率 |

ニトログリセリンが「舌下」で使用される理由:

  • 経口では初回通過効果でほぼ完全に代謝されてしまう(BA < 10%)
  • 舌下投与なら初回通過なし→BA大幅向上(約50〜80%)→速やかな血管拡張

【局所作用薬の全身吸収:見落とされがちなリスク】

局所作用を意図した薬物が全身に影響する経路と事例:

1. 経皮吸収(外用薬):

- ステロイド外用薬(ハイドロコルチゾン等): 大面積・密封療法(ODT)・長期使用→HPA軸抑制→副腎機能抑制

- OTC薬では「広い面積に長期使用しない」という注意事項の根拠

- ニコチンパッチ: 皮膚から全身吸収が目的(禁煙補助)

2. 点眼薬の鼻涙管吸収:

- 点眼後、余剰薬液が鼻涙管→鼻腔粘膜→全身吸収

- 処方薬のβ遮断薬点眼薬(チモロール等)では全身性の徐脈・気管支収縮(喘息患者に禁忌)

- OTC目薬でも「点眼後は目頭を軽く押さえて」という指示は鼻涙管吸収を減らすため

3. 点鼻薬の鼻粘膜吸収:

- 血管収縮薬(ナファゾリン等)の全身吸収→小児・乳幼児では特に心拍数・血圧への影響が問題

- OTC点鼻薬添付文書: 「乳幼児への使用は慎重に」の根拠

4. 座薬・坐剤の直腸粘膜吸収:

- 局所効果(痔の治療薬・便秘薬)でも成分の一部が全身吸収される

- グリセリン浣腸薬は局所作用(腸粘膜刺激・反射性腸蠕動)が主だが、高濃度での全身吸収リスクも理論的にある

【「全身作用」と「局所作用」の作用部位と安全性プロファイルの違い】

作用部位による分類の実用性:

| 分類 | 目的 | 代表例 | リスク |

|---|---|---|---|

| 全身作用 | 体循環→全身の標的組織 | 解熱鎮痛薬・感冒薬 | 全身性副作用(胃腸障害・肝毒性等) |

| 局所作用(投与部位) | 投与部位の局所での効果 | 皮膚外用薬・点眼薬 | 局所刺激・接触性皮膚炎等(+一部全身吸収) |

| 局所+全身の複合 | 局所効果を目的とするが全身吸収も | 坐薬・点鼻薬 | 局所+全身の両面のリスク |

【医薬品設計の工夫:徐放製剤・腸溶製剤と吸収制御】

消化管での吸収を制御する製剤技術:

1. 腸溶錠(Enteric-coated): 胃酸で溶けないコーティング→小腸で溶解・吸収

- 目的: ①胃への刺激軽減(NSAIDs)②胃酸での分解防止(オメプラゾール等のPPI)

- 重要: 「噛まずに飲む」こと(噛むと腸溶コーティングが破れて胃酸にさらされる)

2. 徐放製剤(SR/XR/ER): コーティング・マトリックスによる緩徐な薬物放出

- 目的: 血中濃度の安定化・服用回数の減少

- 重要: 「噛まない・割らない」(粉砕すると徐放機能が失われ急速放出→過量服用に相当)

3. 口腔内崩壊錠(OD錠): 唾液で速やかに崩壊→嚥下困難者・小児・高齢者に有用

- 注意: 崩壊は「口腔内で溶ける」のであり、主たる吸収は消化管(舌下吸収でない)

OTC薬の販売で「噛んでも同じですか?」という質問を受けた際、腸溶錠・徐放性製剤であれば「噛んではいけない理由」を説明できることが登録販売者の専門性の一つです。

生体内運命の理解は、第3章の各薬種の「服用方法・注意事項」をただ暗記するのではなく「なぜそうなのか」を理解する基盤として機能します。論理的な理解が、顧客への正確・分かりやすい情報提供につながります。

<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): 正答イ(局所作用薬は有効成分が局所のみに留まり全身副作用は生じない=誤り。ステロイド外用薬の大面積長期使用や点眼薬の鼻涙管吸収で全身影響あり)で一意。ア(初回通過効果)・ウ(全身作用薬の経路)・エ(坐剤の初回通過一部回避)・オ(舌下投与の特性)はいずれも正しく、誤りはイのみ。バイオアベイラビリティ・腸溶錠/徐放錠を噛まない理由は手引き範囲を超えるが正確。段差性維持。 -->

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第2章 第8節「薬の体内での働き」 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。

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内服薬の生体内運命・全身作用と局所作用の違い頻出度B

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