第2章 人体の働きと医薬品29人体の働きと医薬品(体温調節・発熱・解熱・プロスタグランジン)

登録販売者 第2章 人体の働きと医薬品 問29:人体の働きと医薬品(体温調節・発熱・解熱・プロスタグランジン)

体温調節および発熱・解熱の生理に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。

  • 体温は視床下部の体温調節中枢によって調節されており、平熱(約36〜37℃)を維持するように熱産生と熱放散のバランスを制御している。
  • 細菌感染等でサイトカイン(インターロイキン-1・TNF-α等)が産生されると、それらが視床下部に作用してプロスタグランジンE2(PGE2)の産生を促し、体温設定値(セットポイント)が上昇することで発熱が起こる。
  • 解熱鎮痛薬(イブプロフェン・アセトアミノフェン等)はプロスタグランジンの産生を抑制することで体温設定値を下げ、解熱作用を発揮する。
  • 発熱は人体に常に有害な反応であり、細菌感染時にも発熱を早期に抑制することが常に治癒を早める適切な対処法とされる。正答
  • 乳幼児は体温調節機能が未熟であるため、高熱が長続きしたり環境温度の影響を受けやすかったりするリスクがあり、発熱時の対応には注意が必要である。
正答:発熱は人体に常に有害な反応であり、細菌感染時にも発熱を早期に抑制することが常に治癒を早める適切な対処法とされる。

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正答はエです。

発熱は「常に有害」であり「早期に抑制することが常によい」というわけではありません。発熱は感染防御のための生体反応です。体温が上がると免疫細胞(白血球等)の活性化・病原体(細菌・ウイルス)の増殖抑制が起こり、感染に対する防御力が高まる側面があります。したがって「発熱を常に早期に抑えることが治癒を早める」とは言えません。

特に38℃台の発熱ではむやみに解熱薬を使うよりも、体の免疫応答を適切に支援することが重要です。もちろん、40℃を超える高熱・痙攣・意識障害・水分摂取困難が伴う場合や小児では早期に医療機関を受診する必要があります。

アの体温調節中枢(視床下部)・イの発熱機序・ウの解熱薬の機序はすべて正しい記述です。

標準試験対策の基準レベル

発熱のメカニズム(体温調節セットポイントの変化):

発熱は「体温が上がる」のではなく「体温設定値(セットポイント)が上がる」ことで生じます:

1. 感染・炎症 → マクロファージ等が外因性発熱物質(細菌のLPS等)を認識

2. 内因性発熱物質(サイトカイン:IL-1β・IL-6・TNF-α等)を産生

3. サイトカインが血流で視床下部に到達(または局所でも産生)

4. 視床下部でシクロオキシゲナーゼ(COX)が活性化されPGE2が産生

5. PGE2が視床下部のEP受容体に作用 → 体温セットポイントを高い温度に設定

6. 体温がセットポイントに達するまで熱産生(ふるえ・代謝亢進)→ 発熱

各選択肢の解説:

  • ア(正): 体温調節中枢は視床下部(前視床下部・視床前野)にあります。平熱(約36.5℃前後)を基準として、熱産生(ふるえ・筋肉の収縮・代謝亢進)と熱放散(発汗・皮膚血管拡張)のバランスを調節します。
  • イ(正): IL-1β・IL-6・TNF-α等のサイトカインがPGE2産生を誘導し、セットポイントを上昇させることが発熱の主要機序です。この経路がNSAIDs(COX阻害薬)の解熱作用の標的となります。
  • ウ(正): NSAIDs(イブプロフェン・ロキソプロフェン等)はCOXを阻害してPGE2産生を抑制→セットポイントを正常に戻す→解熱。アセトアミノフェンの詳細機序は諸説ありますが、中枢でのPGE2産生抑制が関与するとされています。
  • エ(誤・正答): 発熱は免疫応答の一部として免疫細胞の活性化・病原体の増殖抑制に寄与します。「常に有害」「早期抑制が常によい」は誤りです。高熱(40℃以上)・痙攣・著しい消耗では解熱が必要ですが、中等度の発熱では感染防御の観点から一定の発熱を許容することも医療上考慮されます。
  • オ(正): 乳幼児は体温調節機能が未熟で、体表面積比が成人より大きいため環境温度の影響を受けやすく、高熱が長続きするリスクがあります。また熱性痙攣のリスクもあり、乳幼児の発熱対応には特別な注意が必要です。
上級誤答論破・根拠(手引き)まで深掘り

【発熱の生理学的意義・PGE2の分子機序・解熱薬の薬理作用の詳細】

体温調節の恒常性維持の詳細:

体温は熱産生と熱放散のバランスで決まります:

熱産生経路:

  • 骨格筋のふるえ(shivering: 急速な不随意筋収縮で熱を産生)
  • 非ふるえ熱産生(褐色脂肪組織でのUCP1経由)
  • 基礎代謝(安静時のATP産生・消費に伴う熱)
  • 食事性熱産生(食後の代謝亢進)

熱放散経路:

  • 発汗(気化熱による冷却・最大量:約1〜2L/時)
  • 皮膚血管拡張(輻射・対流による放熱)
  • 呼気(肺からの水蒸気・熱の放散)

<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): EP受容体(EP1〜EP4)のサブタイプと体温調節への関与について検証。EP3/EP4のG蛋白共役・cAMP増減を介した熱産生機序は研究領域で文献により記述が分かれ、手引き令和8年4月版の記述範囲(サイトカイン→PGE2→体温セットポイント上昇→発熱、解熱薬はPGE2産生抑制で解熱)を明確に超える機序断定だった。検証不能な分子機序断定を削除し、手引き準拠の「PGE2が視床下部に作用し体温セットポイントを上昇させる/解熱薬はPGE2産生抑制でセットポイントを戻す」レベルに置換した。発熱・解熱の本質理解は維持。 -->

PGE2の発熱機序(手引き準拠の整理):

登録販売者試験の手引き(令和8年4月版)が扱う発熱機序は「感染・炎症によるサイトカイン産生 → 視床下部でのプロスタグランジンE2(PGE2)産生 → 体温調節中枢のセットポイント(設定値)上昇 → 発熱」というレベルです。PGE2がどの受容体サブタイプ(EP1〜EP4)を介して体温セットポイントを動かすかという分子機序は、研究領域であり手引きの記述範囲を超えます(研究文献でも記述に幅があり、登録販売者試験で問われることはありません)。

ここで実務上おさえるべき本質は次の点です。

  • PGE2が視床下部に作用して「体温の設定値(セットポイント)が高い方向にリセットされる」こと
  • 解熱鎮痛薬(NSAIDs等)はこのPGE2の産生を抑えることでセットポイントを正常方向に戻し、解熱すること

PGE2が「体温設定値を上げる」結果、体は現在の体温がセットポイントより低いと感知して:

  • ふるえ(寒気・悪寒)で体温を上げようとする
  • 皮膚血管収縮で熱放散を抑える

→ 体温がセットポイントに達すると寒気が止まり熱感が続く(発熱の維持)

NSAIDsとアセトアミノフェンの解熱機序の違い:

| 薬物 | 主な解熱機序 | 末梢での抗炎症作用 | 胃腸障害リスク |

|---|---|---|---|

| NSAIDs(イブプロフェン等) | 中枢・末梢のCOX-1・COX-2阻害→PGE2産生抑制 | あり(COX-2阻害) | あり(COX-1阻害→プロスタグランジン保護機能低下) |

| アセトアミノフェン | 中枢でのCOX-3(COX-1変異体?)阻害・過酸化物産生抑制等、複数の説あり | ほとんどなし | 少ない(末梢COX阻害が弱い) |

アセトアミノフェンの機序は未だ完全には解明されておらず、脊髄・中枢のセロトニン系・カンナビノイド系への関与も示唆されています(研究領域であり、手引きでは「PGの産生抑制」として記述)。

発熱の生理的意義(免疫学的観点):

発熱が感染防御に有利に働く機序:

1. 免疫細胞の活性化: NK細胞・マクロファージは37〜40℃付近で活性が高まる

2. 病原体増殖の抑制: 多くの細菌・ウイルスは37℃前後を最適温度とし、39℃以上で増殖が抑制される

3. 急性期タンパク質の産生促進: フェリチン・CRP等の免疫防御タンパクの産生増加

これらの観点から、特に成人の軽中等度の発熱(38〜39℃台)を「免疫応答を助けているプロセス」として、むやみに解熱することのデメリットが議論されています(ただし、医療方針は個々の状況により判断されるべき事項)。

登録販売者が購入者へ伝えるべき「解熱薬の適切な使い方」:

1. 解熱薬は「病気を治す薬」ではない: 発熱の「原因(感染症等)」を治療するのではなく、「症状(つらさ)」を和らげるもの

2. 使用の目安: 38.5℃以上の発熱で水分摂取・休息が困難な場合・著しい苦痛がある場合(目安であり、個人の状態による)

3. 連続使用の制限: 解熱鎮痛薬の連続使用は3〜5日を目安に医師・薬剤師に相談

4. 受診が必要なケース: 高熱(39〜40℃以上)・痙攣・意識障害・発疹・乳幼児の発熱は早期受診

5. 小児へのアスピリン禁忌: 水痘・インフルエンザに罹患中の小児への解熱鎮痛薬(アスピリン等サリチル酸系)使用はライ症候群のリスクがあり禁忌

体温調節の生理を理解することで、解熱薬の「いつ・どのように使うか」の説明が、単なる「服用方法の説明」から「体の仕組みを踏まえた専門的アドバイス」に変わります。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第2章 第7節「脳や神経系の働き」・第3章「解熱鎮痛薬」 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。

関連論点

体温調節と発熱・解熱の生理・プロスタグランジンと体温中枢頻出度A

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