第2章 人体の働きと医薬品36人体の働きと医薬品(耳・平衡感覚・乗物酔い)

登録販売者 第2章 人体の働きと医薬品 問36:人体の働きと医薬品(耳・平衡感覚・乗物酔い)

耳の構造および乗物酔いの機序に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。

  • 外耳は耳介と外耳道からなり、音(空気振動)を集めて鼓膜に伝える役割を担う。
  • 中耳には耳小骨(ツチ骨・キヌタ骨・アブミ骨)があり、鼓膜の振動を増幅して内耳の蝸牛(かぎゅう)に伝える。
  • 内耳の前庭・半規管は体の位置・回転・加速度を感知する平衡感覚器官であり、前庭は直線加速度を、半規管は回転加速度を感知する。
  • 乗物酔いは、内耳の平衡感覚(前庭・半規管)から入ってくる情報と、目から入ってくる視覚情報が一致しないために起こる感覚矛盾が主な原因とされている。
  • 乗物酔いを防ぐ鎮暈(ちんうん)薬に含まれる抗ヒスタミン成分は、内耳の平衡感覚器に直接作用して前庭・半規管の過活動を抑制することで効果を発揮する。正答
正答:乗物酔いを防ぐ鎮暈(ちんうん)薬に含まれる抗ヒスタミン成分は、内耳の平衡感覚器に直接作用して前庭・半規管の過活動を抑制することで効果を発揮する。

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正答はオです。

鎮暈薬(乗物酔い薬)に含まれる抗ヒスタミン成分(ジフェンヒドラミン・メクリジン等)は、内耳の平衡感覚器に「直接」作用するのではなく、主に中枢神経系(脳幹・前庭核周辺のヒスタミンH1受容体)に作用して、前庭系からの「信号の処理」を抑制することで制吐・抗めまい効果を発揮します。「内耳に直接作用」という説明は誤りです。

ア・イ・ウ・エはすべて正しい記述です。外耳は音を集め、中耳の耳小骨が振動を増幅し、内耳の蝸牛が音を感知、前庭・半規管が平衡を感知します。乗物酔いは視覚と平衡感覚の「矛盾」が主な原因です。

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耳の3部構造:

| 部位 | 主な構造 | 機能 |

|---|---|---|

| 外耳 | 耳介・外耳道 | 音(空気振動)の集音・鼓膜への伝達 |

| 中耳 | 鼓膜・耳小骨(ツチ骨→キヌタ骨→アブミ骨)・耳管(エウスタキー管) | 音の増幅(約22倍)・内耳への伝達。耳管で鼓膜内外の気圧調整 |

| 内耳 | 蝸牛(聴覚)・前庭(直線加速度)・半規管(回転加速度) | 聴覚・平衡感覚 |

乗物酔いの機序(エの根拠):

乗物酔いは「感覚矛盾(sensory conflict)説」が最も広く支持されています。

  • 前庭系: 内耳の前庭・半規管が実際の加速度・揺れを感知
  • 視覚系: 本(静止した車内の物)を読んでいる → 「動いていない」という視覚情報
  • 体性感覚系: 座席の振動を皮膚・筋肉・関節で感知

これら3つの情報が「一致しない」ことで脳が混乱 → 自律神経の乱れ・嘔吐中枢の刺激 → 吐き気・嘔吐・冷や汗が生じます。

鎮暈薬の主な成分と作用機序(オの誤りの詳細):

| 成分種類 | 代表成分 | 主な作用機序 |

|---|---|---|

| 抗ヒスタミン薬 | ジフェンヒドラミン、ジメンヒドリナート、メクリジン | 中枢のH1受容体遮断(前庭核・嘔吐中枢周辺)→制吐・抗めまい |

| 抗コリン薬 | スコポラミン臭化水素酸塩水和物 | 中枢・末梢のムスカリン受容体遮断→嘔吐反射抑制 |

| カフェイン | カフェイン | 中枢刺激・眠気防止(補助成分として配合) |

抗ヒスタミン薬は「内耳に直接作用する」のではなく、BBBを通過して脳幹部の前庭核・嘔吐中枢周辺のヒスタミン受容体を遮断することで制吐・抗めまい効果を発揮します。

各選択肢の解説:

  • ア(正): 外耳の集音機能は正しい。
  • イ(正): 耳小骨3個の名称・順序・蝸牛への伝達は正しい。
  • ウ(正): 前庭=直線加速度、半規管=回転加速度の対応は正しい。
  • エ(正): 乗物酔いの感覚矛盾説は正しい主要な機序。
  • オ(誤・正答): 抗ヒスタミン薬は内耳への直接作用ではなく中枢(脳幹)での作用が主。
上級誤答論破・根拠(手引き)まで深掘り

【前庭系の神経解剖と乗物酔いの詳細な機序:鎮暈薬の合理的選択への応用】

前庭器官の構造と情報処理:

内耳の前庭器官は「卵形嚢(utriculus)」と「球形嚢(sacculus)」の2つの袋(前庭)、および3つの「半規管(前・後・外側)」から構成されます。

  • 卵形嚢: 水平方向の直線加速度を感知(「前に進む・止まる」感覚)。有毛細胞(感覚細胞)の上にオトリス(耳石)が乗り、加速度によってオトリスがずれて有毛細胞を刺激。
  • 球形嚢: 垂直方向の直線加速度を感知(「上下に動く」感覚)。同様にオトリス機構。
  • 半規管(3本): 三次元の回転加速度を感知。内部のリンパ液(内リンパ)の流れによってクプラ(感覚上皮)が偏位→有毛細胞が刺激。3本が互いに直交(水平・前垂直・後垂直)することで全方向の回転を感知。

前庭神経核(脳幹)→嘔吐中枢のシグナル経路:

前庭器官(有毛細胞)→前庭神経(第VIII脳神経)→前庭神経核(橋〜延髄)→複数の経路に分岐:

1. 小脳(平衡制御のフィードバック)

2. 眼球運動核(前庭眼反射→眼振・視線安定)

3. 脊髄(平衡姿勢制御)

4. 嘔吐中枢(延髄の孤束核・迷走神経背側核)→自律神経→嘔吐・吐き気

5. 大脳皮質(めまいの意識的知覚・視覚情報との統合→感覚矛盾の検知)

乗物酔いでは、前庭からの「揺れている」情報と視覚からの「静止している(本を読んでいる)」情報が大脳皮質・視床で統合されると矛盾が検出され、この矛盾シグナルが嘔吐中枢・自律神経を活性化させます。

鎮暈薬の成分と標的の精密な理解:

1. 抗ヒスタミン薬(ジフェンヒドラミン・ジメンヒドリナート・メクリジン等):

- 脳幹のヒスタミン(H1)受容体を遮断: 前庭核・嘔吐中枢周辺にH1受容体が存在し、ヒスタミンが前庭系の情報伝達に関与することが示されている。

- 追加の抗コリン作用(副作用: 口渇・眠気・排尿困難)もあり、これ自体が前庭反射を抑制する可能性。

- 国内の鎮暈薬には、ジフェンヒドラミンサリチル酸塩・ジメンヒドリナート・メクリジン塩酸塩等の抗ヒスタミン成分が配合される。

2. スコポラミン(抗コリン薬):

- 中枢のムスカリン受容体遮断→前庭核の活動抑制・嘔吐反射の抑制。国内の鎮暈薬では主にスコポラミン臭化水素酸塩水和物が内服薬として配合される。

- 副作用: 抗コリン副作用(口渇・眠気・視調節障害・排尿困難)が顕著。緑内障患者・前立腺肥大等で排尿困難のある人には注意(手引きでも「相談すること」の対象)。

3. カフェイン(補助成分):

- 中枢神経興奮で眠気を防ぐ(特に長距離移動時の安全運転補助)。

- アデノシン受容体拮抗→覚醒効果。乗物酔い薬の配合としては主に眠気予防・気力維持が目的。

乗物酔いの予防策(非薬物療法)との組み合わせ理解:

  • 視線固定: 遠くを見る(視覚と前庭の矛盾を減らす)
  • 座席位置: 船では中央部・飛行機では翼付近(揺れが少ない)
  • 換気: 新鮮な空気で嘔気を軽減
  • 頭部の固定: 首を固定して半規管への刺激を減らす
  • 読書・スマホ禁止: 視野内の固定物への注目が感覚矛盾を増強

これらと薬物療法を組み合わせると効果が増大します。登録販売者として、乗物酔い薬の販売時に「乗車前に服用・乗車中は読書を控える」等の非薬物的アドバイスを添えることが、購入者への総合的なサポートになります。

<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): 設問・正答オ(抗ヒスタミン薬は内耳に直接作用ではなく主に中枢=脳幹の前庭核・嘔吐中枢のH1受容体に作用)は一意性・機序ともOK。耳の3部構造・前庭=直線/半規管=回転・感覚矛盾説も正確。要確認だった「メクリジン=米国でドラマミンとして使用」は誤り(米国のDramamineの主成分はジメンヒドリナート)→記述を削除し、国内鎮暈薬の実配合成分(ジフェンヒドラミン/ジメンヒドリナート/メクリジン塩酸塩/スコポラミン臭化水素酸塩水和物)に是正。日本でOTC一般的でないスコポラミン経皮製剤の言及も削除し国内の内服配合に修正。出典: 厚労省手引き第3章鎮暈薬。 -->

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第2章 第4節「耳」・第3章「鎮暈薬」 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。

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