登録販売者 第2章 人体の働きと医薬品 問38:人体の働きと医薬品(骨格・骨代謝)
骨の機能および骨代謝に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア骨は体を支える機械的支持の役割だけでなく、カルシウム(Ca)やリン(P)等のミネラルを貯蔵するカルシウムリン酸塩の貯蔵庫としても機能する。
- イ赤血球・白血球・血小板は骨の内部にある骨髄(赤色骨髄)で産生される。
- ウ骨は一生をとおして一定の状態を保ち続ける静的な組織であり、成人になった後は破骨細胞による骨吸収も骨芽細胞による骨形成も行われなくなる。正答
- エカルシウムの体内への吸収には活性型ビタミンD(1,25-ジヒドロキシビタミンD₃)が必要であり、ビタミンD不足は骨軟化症・くる病の原因となる。
- オ骨粗鬆症は、骨吸収が骨形成を上回る状態が持続することで骨密度が低下し、骨折しやすくなる疾患である。
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正答はウです。
骨は成人になっても「静的な組織」ではなく、常に新陳代謝(骨のリモデリング)を繰り返しています。「骨芽細胞」が新しい骨を作り(骨形成)、「破骨細胞」が古い骨を溶かす(骨吸収)のが常に同時進行しており、そのバランスで骨密度が保たれます。「成人後は骨吸収も骨形成も行われなくなる」は誤りです。
ア・イ・エ・オはすべて正しい記述です。骨はカルシウムの貯蔵庫であり、骨髄で血液細胞(赤血球・白血球・血小板)が作られます。ビタミンDはカルシウム吸収に必要で、不足すると骨軟化症・くる病になります。
骨の主な機能:
| 機能 | 内容 |
|---|---|
| 機械的支持 | 体重を支え、姿勢を保つ |
| 保護 | 脳(頭蓋骨)・心肺(肋骨)等の臓器を保護 |
| 造血(選択肢イが正しい) | 赤色骨髄で赤血球・白血球・血小板を産生 |
| カルシウム貯蔵 | 体内の99%のCaが骨に貯蔵。血中Ca濃度の調節に動員 |
| ミネラル貯蔵 | Ca・P・Mgを骨ヒドロキシアパタイトとして貯蔵 |
| ホルモン分泌 | 骨芽細胞がオステオカルシン(骨ホルモン)を分泌→代謝・認知機能調節 |
骨リモデリング(成人後も継続)(ウの誤りの根拠):
成人になっても骨は絶えず作り替えられており(骨のリモデリング・再構築)、生涯を通じて続きます。「成人後はリモデリングが止まる静的な組織」という理解は誤りです。
- 破骨細胞(osteoclast): 骨吸収担当。RANKL(核内因子κB活性化受容体リガンド)がRANKに結合→破骨細胞が活性化→塩酸・コラゲナーゼで骨を溶かす。
- 骨芽細胞(osteoblast): 骨形成担当。コラーゲン線維を分泌してカルシウム・リンを沈着させて骨を新生。
カルシウム代謝とビタミンD(エの根拠):
- ビタミンD₃(コレカルシフェロール)→肝臓で25-OH-D₃→腎臓で1,25-(OH)₂-D₃(活性型)→腸管でのCa吸収促進・腎臓でのCa再吸収促進・骨でのカルシウム動員。
- ビタミンD不足: 腸管からのCa吸収低下→低カルシウム血症→副甲状腺ホルモン(PTH)上昇→骨吸収亢進。小児では骨の石灰化不全(くる病)、成人では骨軟化症。
各選択肢の解説:
- ア(正): カルシウム・リンの貯蔵庫としての骨の機能は正しい。
- イ(正): 赤色骨髄での造血(赤血球・白血球・血小板)は正しい。
- ウ(誤・正答): 成人後も骨リモデリング(骨吸収・骨形成)は継続する。「静的な組織」は誤り。
- エ(正): 活性型ビタミンDのCa吸収促進作用・不足による疾患は正しい。
- オ(正): 骨粗鬆症の定義として骨吸収>骨形成→骨密度低下→骨折リスク増大は正しい。
【骨代謝の調節機構と医薬品の骨への影響:OTC医薬品との関連】
骨リモデリングの制御システム:
骨吸収と骨形成のバランスは、ホルモン・サイトカイン・機械的刺激の複雑な相互作用で制御されています。
主要な調節因子:
| ホルモン/サイトカイン | 骨吸収への作用 | 骨形成への作用 |
|---|---|---|
| 副甲状腺ホルモン(PTH)持続高値 | 促進(破骨細胞活性化) | 阻害 |
| エストロゲン | 抑制(破骨細胞抑制) | 促進 |
| カルシトニン(甲状腺傍濾胞細胞) | 抑制 | — |
| 活性型ビタミンD | 促進(PTHと協調) | 促進 |
| 成長ホルモン/IGF-1 | — | 促進 |
| コルチゾール(過剰) | 促進 | 抑制 |
RANK/RANKL/OPGシステムの重要性:
破骨細胞の分化・活性化を制御する核心的な分子システム:
- RANKL: 骨芽細胞・T細胞・その他が産生。破骨細胞前駆細胞のRANKに結合→破骨細胞分化・活性化を促進。
- RANK: 破骨細胞前駆細胞・破骨細胞に発現する受容体。
- OPG(オステオプロテジェリン): 骨芽細胞が産生するデコイ受容体。RANKLをトラップしてRANK-RANKL結合を阻害→破骨細胞活性化を抑制。
RANKL/OPG比が高くなる(エストロゲン低下・炎症性サイトカイン増加等)と骨吸収が亢進します。閉経後骨粗鬆症はエストロゲン低下→RANKL増加・OPG低下→破骨細胞過剰活性化が主因です。
OTC医薬品・食品と骨への影響:
1. カルシウム・ビタミンD補給(OTC滋養強壮薬): カルシウム不足は骨密度低下リスク。ビタミンD不足はCa吸収低下→骨密度低下。OTC滋養強壮薬・ドリンク剤に含まれることがある。ただし過剰摂取も問題(高カルシウム血症:腎結石・軟組織石灰化リスク)。
2. ステロイド系薬物(OTC外用ステロイドを含む): 長期内服での骨粗鬆症リスクは有名だが、OTC外用ステロイドは通常全身吸収量が少なく、骨への影響は限定的。ただし大面積・長期・密封(ODT)では吸収増加に注意。
3. カフェイン: 過剰摂取でカルシウム尿中排泄量が増加→骨密度低下リスク(特に閉経後女性・カルシウム摂取不足の場合)。OTC鎮痛薬・眠気防止薬のカフェイン含有製品を過剰使用する場合に関連することがある。
4. 喫煙・アルコール: 喫煙はエストロゲン代謝促進・骨芽細胞機能抑制。アルコール過剰は骨芽細胞抑制・カルシウム吸収低下。OTC医薬品との直接関係はないが、生活習慣として骨密度に影響。
骨代謝と筋骨格系の連携(筋骨格系への外用薬との接点):
骨と筋肉(筋骨格系)は一体として機能します。筋収縮による機械的刺激が骨に伝わると骨芽細胞が活性化(ウォルフの法則: 骨は力学的負荷に適応してリモデリングされる)。廃用性骨萎縮(長期臥床)では、機械的刺激の消失→骨吸収が骨形成を上回る→骨密度低下が起こります。外用の消炎鎮痛薬(OTC)は骨そのものへの治療薬ではありませんが、筋肉痛・関節痛を緩和することで運動能力を維持→間接的に骨密度維持に貢献します。
登録販売者として骨代謝に関連する実務:
- 「カルシウムのサプリメントを買いたい」という購入者には、食事(乳製品・小魚・大豆食品等)からのカルシウム摂取の重要性とビタミンDとの相乗作用を説明する。
- 「骨粗鬆症の薬(処方薬:ビスホスホネート等)を飲んでいる」という購入者がOTC制酸薬(Ca・Al塩)等を購入しようとしている場合は相互作用のリスクを説明し、医師への確認を促す。
- 高齢者・閉経後女性で「骨が弱い気がする」という場合は、OTCカルシウム・ビタミンD補給よりも専門的な骨密度測定・受診勧奨が優先される場合があることを伝える。
<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): 設問・正答ウ(骨は成人後も骨吸収・骨形成のリモデリングを続けるので「静的な組織」は誤り)は一意性・事実ともOK。Ca/Pの貯蔵庫・赤色骨髄での造血・活性型ビタミンDのCa吸収促進とくる病/骨軟化症・骨粗鬆症の定義も正確。手引き範囲外の精密数値「年間約10%入替」は断定を外し定性表現化。standard表のタイプミス「ウイが正しい」→「選択肢イが正しい」に修正。RANK/RANKL/OPG等のadvanced機序は教育的範囲で維持。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第2章 第5節「骨格系」 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。