登録販売者 第2章 人体の働きと医薬品 問41:人体の働きと医薬品(鼻腔・副鼻腔)
鼻腔・副鼻腔の構造および鼻炎の機序に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア副鼻腔は頭蓋骨内の空洞であり、上顎洞・篩骨洞・前頭洞・蝶形骨洞の4種類があるが、鼻腔とはつながっておらず、鼻腔の炎症が副鼻腔に及ぶことはない。
- イ鼻腔粘膜には線毛(繊毛)上皮細胞と杯細胞があり、粘液(鼻汁)が異物・細菌を捕捉し、線毛運動によって咽頭方向へ移送・排除される(粘液線毛クリアランス)。
- ウ嗅覚(においの感知)は鼻腔の全域の粘膜で行われており、特定の嗅覚受容体が存在する特殊な領域(嗅上皮)はない。
- エアレルギー性鼻炎では、鼻粘膜の血管が収縮して血流が減少することで鼻閉(鼻づまり)が生じる。
- オ鼻腔の血管収縮薬(ナファゾリン等のアドレナリン作動成分)を長期連用すると、反応性充血(リバウンド充血)が起こりやすくなることがある。正答
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正答はオです。
点鼻薬に含まれる血管収縮成分(ナファゾリン・オキシメタゾリン等のアドレナリン作動成分)を長期にわたって使い続けると、薬が切れたあとに反動で鼻の血管が広がり(リバウンド充血)、かえって鼻づまりが悪化することがあります。これを薬剤性鼻炎ともいいます。血管収縮薬の点鼻薬は短期間(3〜5日以内が目安)の使用にとどめるべきとされています。
アは誤りで、副鼻腔は鼻腔と開口部でつながっており、鼻腔炎症が副鼻腔に波及して副鼻腔炎が生じます。イ・ウの真偽も大切です。ウは誤りで、嗅覚は嗅上皮という特定の領域で感知されます。エも誤りで、鼻づまりは血管「拡張」で起こります。
鼻腔・副鼻腔の構造:
| 副鼻腔 | 位置 | 鼻腔との開口部 |
|---|---|---|
| 上顎洞 | 頬(上顎骨内) | 中鼻道(中甲介下方) |
| 篩骨洞 | 眼球と鼻の間(篩骨内) | 中鼻道・上鼻道 |
| 前頭洞 | 額(前頭骨内) | 中鼻道 |
| 蝶形骨洞 | 頭部中央深部(蝶形骨内) | 上鼻道 |
副鼻腔は全て鼻腔に開口しており、アは誤りです(副鼻腔炎「蓄膿症」は副鼻腔が鼻腔に続くことで発症)。
粘液線毛クリアランス(イの根拠):
鼻腔粘膜の線毛上皮は1秒間に約12〜15回の線毛打を行い、粘液を約1cm/分の速度で咽頭へ移送します。この機能によって微生物・異物が気道深部に達する前に除去されます。乾燥・煙・炎症で線毛機能が低下すると感染リスクが上昇します。
鼻づまりのメカニズム(エの誤りの根拠):
アレルギー性鼻炎では:
- アレルゲン→IgE→マスト細胞脱顆粒→ヒスタミン・ロイコトリエン放出
- 血管拡張・血管透過性亢進→粘膜の浮腫・腫脹→鼻腔が狭くなる→鼻閉
- 鼻水(水様性鼻汁)・くしゃみも同時に生じる
「血管収縮→鼻閉」は誤りです(正しくは拡張)。
リバウンド充血(オが正しい理由):
点鼻血管収縮薬を連用すると:
1. α₁受容体の過剰刺激が続く
2. 受容体のダウンレギュレーション(感受性低下)
3. 薬効が切れると反動で血管が拡張(リバウンド)→鼻づまり悪化
4. 悪化→さらに薬を使う→悪化の連鎖(薬剤性鼻炎の成立)
各選択肢の解説:
- ア(誤): 副鼻腔は鼻腔と開口してつながっており、炎症が波及して副鼻腔炎になる。
- イ(正): 粘液線毛クリアランスは正しい記述(ただし正答はオ)。
- ウ(誤): 嗅覚は嗅上皮(鼻腔上部の特定領域)で感知。全域ではない。
- エ(誤): 鼻閉は血管「拡張・浮腫」で起こる。収縮ではない。
- オ(正): 血管収縮薬の長期連用によるリバウンド充血は正しい。
【鼻腔・副鼻腔の詳細生理学とアレルギー性鼻炎・点鼻薬の薬理学的理解】
鼻腔の防御機構の多層性:
鼻腔は単なる「空気の通り道」ではなく、外気中の異物・病原体から下気道を守る精密なフィルタリングシステムです。
1. 鼻毛(鼻腔前部): 大きな異物・粉塵を機械的に捕捉。
2. 粘液(鼻汁): IgA・リゾチーム・ラクトフェリン含有の抗菌液で異物・微生物を捕捉・不活化。
3. 線毛(繊毛)上皮: 粘液ごと異物を咽頭へ移送→飲み込んで胃酸で除菌。線毛は摂氏37℃・湿度100%の環境で最も効率よく動く(冬の乾燥・寒気が感染リスクを上げる理由)。
4. 嗅上皮(嗅粘膜): 鼻腔上部(上鼻甲介付近)に局在。嗅細胞(双極性ニューロン)の嗅覚受容体がにおい分子を感知→嗅神経→嗅球→大脳辺縁系(扁桃体・海馬)へ投射(嗅覚記憶・感情との強い連携の理由)。
5. 鼻咽腔リンパ組織(アデノイド): 細菌・ウイルスに対するリンパ組織免疫応答。
アレルギー性鼻炎の2相反応(即時相・遅延相):
1. 即時相(early-phase reaction: 0〜1時間):
- アレルゲン→IgE架橋→マスト細胞脱顆粒→ヒスタミン・トリプターゼ・PGD₂放出
- くしゃみ(反射)・水様性鼻汁(腺分泌亢進)・鼻閉(血管拡張・浮腫)が即座に発現
2. 遅延相(late-phase reaction: 4〜12時間後):
- IL-4・IL-5・IL-13(Th2サイトカイン)→好酸球・好塩基球・T細胞の鼻粘膜への浸潤
- 粘膜の慢性炎症・過敏性亢進→鼻閉の持続・再暴露で容易に反応(プライミング効果)
アレルギー性鼻炎が慢性化・難治化するのは遅延相の慢性炎症が主因です。
鼻炎薬の成分と作用機序:
| 成分分類 | 代表成分 | 主な作用 |
|---|---|---|
| 抗ヒスタミン薬(内服) | クロルフェニラミン・フェキソフェナジン | H1受容体遮断→くしゃみ・鼻水に有効(鼻閉への効果は限定的) |
| 鼻腔血管収縮薬(点鼻) | ナファゾリン・オキシメタゾリン・フェニレフリン | α₁受容体刺激→鼻粘膜血管収縮→腫脹軽減→鼻閉に速効(短期使用厳守) |
| 抗コリン薬(内服・点鼻) | イプラトロピウム(処方)等 | 鼻腺のムスカリン受容体遮断→鼻汁分泌減少 |
| ステロイド(点鼻・処方が主体) | フルチカゾン等 | 局所抗炎症→慢性アレルギー鼻炎の第一選択(処方薬が主体) |
リバウンド充血の薬理学的詳細(オの根拠):
ナファゾリン・オキシメタゾリン等はα₁・α₂アドレナリン受容体に作用します。連用による受容体ダウンレギュレーションのメカニズム:
- 長期刺激→受容体が細胞内に取り込まれる(インターナリゼーション)→受容体数の減少(ダウンレギュレーション)
- 薬が効いている間: α受容体刺激→血管収縮→鼻閉改善
- 薬が切れると: 受容体が減っているため正常なアドレナリン(内因性)でも血管が収縮しきれない→反動性血管拡張(リバウンド充血)→鼻閉悪化
治療: 連用をやめて自然回復を待つ(1〜2週間かかる場合もあり)。重症は医療機関で局所ステロイド点鼻薬を使って離脱する。
副鼻腔炎の病態(蓄膿症)と登録販売者の対応:
急性上気道炎(風邪)→鼻腔粘膜の炎症→副鼻腔開口部が腫れて閉塞→副鼻腔内に液体が貯留→細菌の二次感染→急性副鼻腔炎。慢性化(慢性副鼻腔炎・蓄膿症)では鼻ポリープ形成・嗅覚障害が生じます。
OTC鼻炎薬(抗ヒスタミン薬・血管収縮薬含有)は症状緩和に有効ですが、「黄色〜緑色の鼻汁・顔面の痛み・発熱・嗅覚障害」が長く続く場合は副鼻腔炎の可能性があり、医療機関受診(抗菌薬治療が必要な場合あり)を勧めることが登録販売者の適切な対応です。
<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): 設問・正答オ(鼻腔血管収縮薬=アドレナリン作動成分の長期連用でリバウンド充血/薬剤性鼻炎が起こる)は一意性・事実ともOK。誤肢ア(副鼻腔は鼻腔とつながらない)・ウ(嗅覚は鼻腔全域で感知)・エ(鼻閉は血管収縮で生じる)はいずれも明確な誤り。粘液線毛クリアランス・嗅上皮・アレルギー性鼻炎の血管拡張による鼻閉・受容体ダウンレギュレーション等のYMYL記述も正確。修正不要。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第2章 第4節「鼻」・第3章「点鼻薬」 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。