登録販売者 第3章 主な医薬品とその作用 問20:主な医薬品とその作用(漢方処方製剤・生薬)
ブシ(附子)およびダイオウ(大黄)を含む漢方処方製剤に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- アブシ(附子・トリカブトの根を加工したもの)は心臓・循環器に対する強心・鎮痛作用を持つが、未加工(生附子)には強力な毒性(アコニチン)があるため、漢方処方のブシは加工処理(炮附子等)によって毒性を低減している。
- イブシを含む漢方処方(八味地黄丸・牛車腎気丸等)を服用した際に、口・舌・四肢のしびれ感が生じた場合は、アコニチン系アルカロイドの影響が疑われるため、直ちに服用を中止して医師・薬剤師に相談する必要がある。
- ウダイオウ(大黄)を含む漢方処方(防風通聖散・大黄甘草湯等)は、授乳中の女性への使用は問題なく、乳児への影響は報告されていない。正答
- エカンゾウを多く含む処方とダイオウを含む処方を同時に服用すると、カンゾウの偽アルドステロン症によるカリウム排泄増加と、強心配糖体(ジギタリス系)服用時の低カリウム血症の相互作用が問題になる場合がある。
- オダイオウ(大黄)を含む漢方処方は、妊婦への使用を避ける必要があり、流産・早産を誘発する可能性がある。
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正答はウ(誤っているもの)です。
ダイオウ(センノシド含有)を含む漢方処方を授乳中に服用すると、センノシドの代謝産物(センナジン)が母乳に移行し、乳児に下痢・腹痛を引き起こす可能性があります。「授乳中も問題なく、乳児への影響は報告されていない」という記述は誤りです。
ア・イ・エ・オはいずれも正しい記述です。ブシの毒性(アコニチン)・しびれが出たら中止という注意事項、カンゾウの偽アルドステロン症と強心配糖体との相互作用、ダイオウの妊婦禁忌は第3章漢方分野の最重要論点です。
ブシ(附子)の特性まとめ:
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 由来 | キンポウゲ科トリカブト(Aconitum carmichaeli等)の根 |
| 主要有効成分 | アコニチン・メサコニチン(毒性強い)→加工で低毒性のベンゾイルアコニン等に変換 |
| 薬理作用 | 強心・鎮痛・温熱(体を温める)→冷え・神経痛・関節痛に有効 |
| 代表含有処方 | 八味地黄丸・牛車腎気丸・真武湯・桂枝加附子湯等 |
| 副作用 | 口・舌・四肢のしびれ・心悸亢進・不整脈(アコニチン過剰) |
ダイオウ(大黄)の特性まとめ:
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 由来 | タデ科植物(Rheum palmatum等)の根茎 |
| 主要有効成分 | センノシドA・B(アントラキノン配糖体)→腸内細菌でセンナジン(活性体)に変換 |
| 薬理作用 | 刺激性瀉下・解毒・消炎 |
| 代表含有処方 | 防風通聖散・大黄甘草湯・桃核承気湯・大建中湯(参考:大建中湯はダイオウを含まない処方の一つ)|
| 禁忌 | 妊婦禁忌・授乳中注意(母乳移行) |
各選択肢の解説:
- ア(正): ブシ(附子)の主成分アコニチンは致死量が非常に少ない(経口での致死量は推定数mg程度)強力な毒素です。漢方処方に用いられる炮附子(ほうぶし)・黒附子等は蒸製・加熱加工によってアコニチン→低毒性のベンゾイルアコニン・アコニン等に変換され毒性が大幅に低減されています。
- イ(正): ブシ含有漢方処方服用後に口・舌・手足のしびれ感・動悸が出た場合は、残存するアコニチン系アルカロイドによる中毒症状が疑われます。直ちに服用を中止して医師・薬剤師へ相談することが必要です。
- ウ(誤・正答): ダイオウのセンノシドは腸内細菌でセンナジンに変換され、センナジンの一部が腸管で吸収されて全身循環→母乳に移行します。授乳中の母親がダイオウ含有漢方薬を服用すると、乳児が下痢・腹痛等の症状を呈することがあります。「影響は報告されていない」は誤りで、授乳中の女性はダイオウ含有薬の使用に注意(または避ける)が必要です。
- エ(正): カンゾウ過剰(偽アルドステロン症)→低カリウム血症(K+排泄増加)が生じている状態でジギタリス系強心配糖体を使用すると、低K+環境でジギタリス毒性が増強(不整脈・心毒性)されます。漢方薬(カンゾウ含有)と強心配糖体(ジゴキシン等の処方薬)を同時服用している患者への確認は重要な相互作用チェックです。
- オ(正): ダイオウの腸管刺激による腹圧上昇と子宮収縮様作用から、妊婦への使用は流産・早産のリスクがあり禁忌とされています(pilotのch3_03でも確認済みの内容)。
【アコニチン系アルカロイドの毒性機序と漢方加工の意義】
アコニチン(C₃₄H₄₇NO₁₁)はVGSC(電位依存性Naチャネル)の活性化状態での開口を持続させ(不活性化を妨げる)ことで、神経・心筋を持続的に興奮させます:
作用機序:
1. 末梢神経: VGSCを持続開口→末梢神経の持続興奮→知覚過敏・痛み(少量)→持続的チャネル開口による過分極→神経伝達ブロック→しびれ・麻痺(中毒量)
2. 心筋: ペースメーカー細胞のVGSC活性化→異所性自動能発生→心室性期外収縮・心室頻拍・心室細動
3. 中枢神経: 嘔吐・痙攣(過量)
致死量(経口目安): アコニチン 2〜4mg(成人)・0.1g程度の生附子で中毒可能。非常に危険。
炮製(加工)による毒性低減の化学:
- 蒸製・加熱: アコニチンのエステル結合がエステラーゼ・加水分解→ベンゾイルアコニン(毒性1/500〜1/1000)・アコニン(毒性1/50000〜1/100000)に変換
- 減毒後も「温熱・鎮痛・強心作用」は維持(主にアコニン・メサコニン由来)
日本薬局方に収載されている炮附子(加工)は、生附子の数十分の1の毒性レベルに管理されています。しかし個体差・製品ロット・胃腸状態によって吸収量が変わり、しびれ等の症状が出ることもあるため「症状が出たら中止・受診」という原則は重要です。
【ダイオウとカンゾウの相互作用:ポリファーマシーの観点】
ポリファーマシー(多剤服用)が問題になる高齢者では、以下の組み合わせが危険です:
| 薬剤1 | 薬剤2 | 相互作用 | 結果 |
|---|---|---|---|
| カンゾウ含有漢方(複数) | カンゾウ含有漢方(追加) | グリチルリチン酸重複→偽アルドステロン症 | 低K血症・浮腫・高血圧 |
| カンゾウ含有漢方 | 利尿薬(サイアザイド・ループ系) | どちらもK+排泄増加 | 重篤な低カリウム血症 |
| カンゾウ含有漢方(低K状態) | ジギタリス系 | 低K→ジギタリス毒性増強 | 不整脈・心停止 |
| ダイオウ含有漢方 | ワルファリン | 腸管吸収変化(下痢)でワルファリン吸収不安定 | 抗凝固効果の変動 |
登録販売者がカンゾウ含有漢方を購入しようとする顧客に対して確認すべき事項:
1. 他に漢方薬を使用していないか(カンゾウ重複チェック)
2. 利尿薬・降圧薬を服用していないか
3. 心臓疾患(ジギタリス服用)がないか
4. 低カリウム血症の既往・腎疾患がないか
【センノシドの母乳移行の薬物動態】
センノシド(高極性の配糖体)は経口摂取後に小腸では吸収されずに大腸でセンナジン(アグリコン)に変換されます。センナジンは大腸粘膜から一部吸収され全身循環に入ります。
母乳移行:
- センナジンは脂溶性が高いため(分子量小・脂溶性)乳腺でイオントラッピングにより母乳に濃縮されます
- 授乳婦の使用後4〜8時間後に母乳中センナジン濃度が上昇
- 乳児では腸管が敏感(腸内細菌叢も異なる)→少量でも下痢・腹部膨満・腸痙攣
報告例(臨床):
- 授乳婦が市販便秘薬(センナ含有)を使用→乳児(母乳のみ)に24〜48時間後に下痢が生じた事例
- ダイオウ含有漢方でも同様の機序
結論: 授乳中はセンナ・ダイオウを含む全ての下剤(漢方含む)を可能な限り避け、酸化マグネシウム(浸透圧性・母乳移行なし)等の代替を選択することが推奨されます。
【生薬の「毒性→薬効」変換:漢方独特の加工と登録販売者の知識として】
漢方では「毒を以て毒を制す」という思想があり、有毒生薬を加工することで薬効を残しつつ毒性を低減する炮製(ほうせい)の技術が発達しています:
- ブシ(トリカブト): 加熱・蒸製でアコニチン低減
- バンカ(版花・半夏): 生は粘膜刺激性が強い→ショウガ(生姜)で中和(半夏生姜炮製)
- コウベイ(光貝): そのままでは毒→炮製で薬効のみ残す
これらの知識は第3章の「生薬」問題で出題されることがあり、「加工しているから安全」の意味(加工しても微量の毒性は残る→副作用があれば即中止)を理解することが実務でも重要です。
【根拠】厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第3章第15節
<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): 正答ウ「ダイオウ含有漢方は授乳中も問題なく乳児への影響なし」は誤り=センノシド代謝物が母乳移行し乳児に下痢を起こすおそれがあり授乳中は使用回避/相談、一意に誤りで正答ウ確定。【作問者要確認申告クリア】大建中湯はダイオウもカンゾウも含まない(山椒・乾姜・人参・膠飴の4生薬)ことを一次ソースで確認=standardテーブルの「大建中湯はダイオウを含まない」記述は正確。ア=ブシは加工(炮附子)でアコニチン毒性低減で正、イ=ブシ服用後の口舌四肢のしびれは中止・相談で正、エ=カンゾウの偽アルドステロン症→低K血症で強心配糖体毒性増強で正、オ=ダイオウは妊婦に流早産のおそれで使用回避で正。健康被害リスクなし。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第3章 第15節「漢方処方製剤・生薬製剤」 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。