登録販売者 第3章 主な医薬品とその作用 問71:主な医薬品とその作用(生薬製剤・健胃薬)
ウイキョウ(茴香)・チョウジ(丁字)・ソウジュツ(蒼朮)の基原と作用に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- アウイキョウ(茴香)はセリ科植物ウイキョウの果実を基原とし、主成分アネトールが芳香性健胃・駆風(ガス排出)作用を示す。正答
- イチョウジ(丁字)はシソ科植物チョウジの花蕾(つぼみ)を基原とし、主成分オイゲノールが健胃・防腐・歯科用局所麻酔作用を示す。
- ウソウジュツ(蒼朮)はキンポウゲ科植物ホソバオケラ等の根茎を基原とし、健胃・利尿・発汗作用を持つ。
- エウイキョウはマメ科に属し、大豆・レンズ豆と同じ科の植物から採取される。
- オチョウジの主成分オイゲノールは、歯の治療における麻酔補助には効果がなく、もっぱら食品の香料のみとして利用される。
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正答はアです。
「ウイキョウ(茴香)はセリ科植物ウイキョウの果実を基原とし、アネトールが芳香性健胃・駆風作用を示す」という記述は正しいです。
主な誤りを確認しましょう。イのチョウジはシソ科ではなくフトモモ科の植物の花蕾(つぼみ)が基原です。ウのソウジュツはキンポウゲ科ではなくキク科の根茎が基原です。エのウイキョウはマメ科ではなくセリ科です。オのオイゲノールは歯科の局所麻酔補助作用があります。
暗記ポイント: 「ウイキョウ→セリ科・果実」「チョウジ→フトモモ科・花蕾(クローブ)」「ソウジュツ→キク科・根茎」。
芳香性健胃生薬(ウイキョウ・チョウジ・ソウジュツ)の基原比較:
| 生薬名 | 基原植物(科名) | 薬用部位 | 主な有効成分 | 主作用 |
|---|---|---|---|---|
| ウイキョウ(茴香) | セリ科ウイキョウ(Foeniculum vulgare) | 果実 | アネトール(trans-anethole)・フェンコン等 | 芳香性健胃・駆風(腸内ガス排出促進)・鎮痙 |
| チョウジ(丁字) | フトモモ科チョウジ(Syzygium aromaticum) | 花蕾(乾燥)・葉・枝 | オイゲノール・β-カリオフィレン等 | 健胃・防腐・局所麻酔(歯科補助)・抗菌 |
| ソウジュツ(蒼朮) | キク科ホソバオケラ(Atractylodes lancea)等 | 根茎 | アトラクチレン・ヒネソール等 | 健胃・利尿・発汗・鎮痛 |
各選択肢の解説:
- ア(正・正答): ウイキョウ(茴香)はセリ科植物ウイキョウ(Foeniculum vulgare)の果実が基原です(手引き・日本薬局方の用部はいずれも「果実」)。主成分アネトール(anethole)は甘みのある芳香を持つフェニルプロパノイド系化合物で、芳香性健胃・消化管内ガスの排出促進(駆風)・消化管蠕動促進作用を示します。
- イ(誤): チョウジ(丁字・クローブ)の基原はシソ科ではなくフトモモ科植物チョウジ(Syzygium aromaticum)の花蕾です。オイゲノールが主成分で健胃・防腐・局所麻酔作用を示すことは正しいです。フトモモ科はユーカリ・グアバ・チョウジを含む熱帯植物の科です。
- ウ(誤): ソウジュツ(蒼朮)の基原はキンポウゲ科ではなくキク科植物ホソバオケラ等の根茎です。キク科には他にもキッカ・ゴボウ・エキナセア等の生薬植物が含まれます。
- エ(誤): ウイキョウはマメ科ではなくセリ科の植物です。セリ科には他にもニンジン・アニス・コリアンダー・セロリ・パセリ等の食品植物と、サイコ・ボウフウ等の生薬植物が含まれます。
- オ(誤): オイゲノールは歯科領域において「丁子油(チョウジ油)」として長年使用されてきた局所麻酔補助成分です。TRPV1(カプサイシン受容体)の脱感作作用・局所炎症抑制作用・抗菌作用により、歯髄炎や根管治療後の疼痛緩和に使用されます。「歯科局所麻酔に効果がない」は誤りです。
【アネトールの薬理と駆風作用の機序】
ウイキョウ(茴香)の主成分アネトール(trans-anethole, CAS 4180-23-8)は、フェニルプロパノイド系の揮発性有機化合物です。
主な薬理作用と機序:
1. 芳香性健胃: 嗅覚刺激および口腔粘膜刺激→迷走神経反射→胃液分泌促進
2. 駆風(carminative)作用: 消化管平滑筋の軽度弛緩→腸内ガスの移動促進→腸管内ガス排出。腸内細菌の発酵で生じた水素・二酸化炭素・メタンを肛門方向へ移動させます。
3. 鎮痙作用: Ca²⁺チャネル遮断・平滑筋の痙攣緩和。過敏性腸症候群(IBS)の腹痛・腸管蠕動亢進の軽減に寄与します。
4. 抗菌: 食品防腐への応用。グラム陽性菌・真菌への抗菌活性
5. エストロゲン様作用(研究段階): アネトールの構造がエストロゲンに類似しており、乳汁分泌促進・月経調整への関与が研究されています。授乳中の大量摂取は注意が必要です。
ウイキョウは幼小児の疝痛(腸管内ガスによる腹痛)に古来から民間療法として使われてきた歴史があり、欧州では「ウイキョウ茶(fennel tea)」が乳幼児の腹痛・コリック(疝痛発作)への民間療法として広く知られています(医師への確認を推奨)。
【チョウジ(クローブ)のオイゲノールと歯科応用の詳細】
チョウジ油(clove oil)はインドネシア・マダガスカル等に産するフトモモ科植物の花蕾から水蒸気蒸留で得られる精油です。主成分オイゲノール(eugenol)の含量は通常 70〜90%に達します。
オイゲノールの歯科領域での作用機序:
1. 局所麻酔補助: ナトリウムチャネル(Nav1.7・Nav1.8)の遮断による知覚神経伝導抑制
2. TRPV1 脱感作: 初期に TRPV1 を刺激して温熱感を生じさせた後、受容体を脱感作(無反応化)して慢性的な痛み刺激を遮断
3. 抗菌: う蝕菌(Streptococcus mutans)・歯周病菌(Porphyromonas gingivalis)への抗菌活性
4. 抗炎症: COX 阻害によるプロスタグランジン産生抑制
歯科用製品として:
- 酸化亜鉛ユジノール(ZOE)セメント: 根管充填・仮封材として使用
- 丁子油含有口腔ケア製品: 歯肉炎予防・口臭除去
登録販売者としては、チョウジ油を含む口腔用薬・歯痛薬の販売に際して「歯科専門医への相談なしに歯の痛みを長期間セルフメディケーションしない」という受診勧奨が重要です。
【ソウジュツ(蒼朮)とビャクジュツ(白朮)の比較と使い分け】
ソウジュツ(蒼朮)とビャクジュツ(白朮)は同じキク科オケラ属(Atractylodes 属)の植物で、漢方処方では代替可能な場合もあります。
| 比較項目 | ソウジュツ(蒼朮) | ビャクジュツ(白朮) |
|---|---|---|
| 基原植物 | ホソバオケラ(Atractylodes lancea)等 | オオバナオケラ(Atractylodes macrocephala)等 |
| 産地 | 中国大陸・朝鮮半島 | 中国中南部 |
| 主成分 | アトラクチレン・ヒネソール・アトラクチロジン | アトラクチロン・ビャクジュツアセチレン |
| 主な作用 | 健胃・利尿・発汗・燥湿(湿気の排出)・抗炎症 | 健胃・利尿・安胎(妊娠維持)・免疫調整 |
| 代表処方 | 平胃散・二朮湯 | 六君子湯・補中益気湯・苓桂朮甘湯 |
<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): ウイキョウの薬用部位を一次ソースで突合。手引き・日本薬局方・薬用植物園DBいずれも用部は「果実」(成熟果実、双懸果)で確定。本問の選択肢ア・標準解説の「果実」表記は正。「種子」併記は紛れの元のため削除済み。正答アは妥当(チョウジ=フトモモ科、ソウジュツ=キク科、ウイキョウ=セリ科、オイゲノールの歯科局所麻酔補助は事実=他4肢は誤りで確定)。 -->
【芳香性健胃薬の上位資格との接続:機能性消化管疾患と植物薬】
欧州医薬品庁(EMA)では、ウイキョウ(fennel)・チョウジ(clove)等の植物薬を「伝統的植物薬(Traditional Herbal Medicinal Products)」として規制し、軽度の消化器症状への使用を認めています。
日本では一般用医薬品(生薬製剤)として薬機法の適用を受けますが、欧州の規制科学的エビデンスと日本の伝統的使用の両視点から、これらの生薬の安全性・有効性を理解することが、登録販売者が患者に科学的根拠をもって説明できる力の源泉となります。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第3章 第8節「胃の薬(健胃薬)」 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。