登録販売者 第3章 主な医薬品とその作用 問76:主な医薬品とその作用(生薬製剤・催眠鎮静薬・婦人薬)
サンソウニン(酸棗仁)・カノコソウ(鹿の子草)・チョウトウコウ(釣藤鈎)の各生薬と、それを主要成分として含む漢方処方・用途の組み合わせに関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- アサンソウニン(酸棗仁)はクロウメモドキ科植物サネブトナツメ等の種子を基原とし、催眠・鎮静作用を持つため、「心身が疲れ弱って眠れない・神経症」に用いる酸棗仁湯の主要生薬として配合される。
- イカノコソウ(鹿の子草)はオミナエシ科植物カノコソウの根・根茎を基原とし、鎮静・鎮痙作用を持つことから、一般用医薬品の催眠補助薬・鎮静薬に配合されるほか、欧州で広く使われるバレリアン(セイヨウカノコソウ)と同属の植物である。
- ウチョウトウコウ(釣藤鈎)はアカネ科植物カギカズラ等の棘のついた茎(鈎)を基原とし、鎮静・降圧作用を持つため、頭痛・高血圧傾向・めまいに用いる釣藤散の中心的な生薬として配合される。
- エサンソウニン(酸棗仁)はサンショウ(山椒)と同じミカン科に属する植物の種子であり、辛みの刺激が鎮静・催眠に効果をもたらす。正答
- オカノコソウ(鹿の子草)を含む鎮静系の一般用医薬品は、小児への使用が認められているものもあるが、その場合の用量は成人と同一では使用できず、年齢に応じた用量設定が必要である。
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正答はエです。
「サンソウニン(酸棗仁)はサンショウ(山椒)と同じ科(ミカン科)に属し、辛みの刺激が鎮静・催眠に効果をもたらす」という記述が完全に誤りです。サンソウニン(酸棗仁)はクロウメモドキ科植物サネブトナツメ等の種子が基原であり、ミカン科・サンショウとは無関係です。また鎮静効果の機序も辛み成分ではなく、サポニン・フラボノイド等の成分によるものです。
配合漢方の対応をセットで暗記: 「サンソウニン→酸棗仁湯(不眠・疲れ)」「チョウトウコウ→釣藤散(頭痛・高血圧・めまい)」「カノコソウ→催眠補助薬・鎮静薬」。
鎮静・婦人生薬の基原・配合漢方・作用まとめ:
| 生薬名 | 基原植物(科名) | 薬用部位 | 主な有効成分 | 主作用 | 代表的な配合漢方 |
|---|---|---|---|---|---|
| サンソウニン(酸棗仁) | クロウメモドキ科サネブトナツメ(Ziziphus jujuba var. spinosa)等 | 種子(核仁) | ジジフサポニン・スピノシン(フラボノイド)等 | 催眠・鎮静・抗不安 | 酸棗仁湯・加味帰脾湯 |
| カノコソウ(鹿の子草) | オミナエシ科カノコソウ(Valeriana fauriei)等 | 根・根茎 | バレレナール・イソバレリアン酸等 | 鎮静・鎮痙・抗不安 | 一般用催眠補助薬・鎮静薬に配合(漢方処方としての単独配合は少ない) |
| チョウトウコウ(釣藤鈎) | アカネ科カギカズラ(Uncaria rhynchophylla)等 | 棘のついた茎(鈎)の部分 | リンコフィリン(アルカロイド)等 | 鎮静・降圧・抗痙攣 | 釣藤散(頭痛・高血圧傾向・めまい) |
各選択肢の解説:
- ア(正): サンソウニン(酸棗仁)はクロウメモドキ科植物サネブトナツメの種子を基原とし、酸棗仁湯(「心身が疲れ弱って眠れない、神経症」に適する・体力が低下した虚証の人向け)の主要生薬として配合されます。正しい記述です。
- イ(正): カノコソウ(鹿の子草)はオミナエシ科植物カノコソウの根・根茎が基原で、鎮静・鎮痙作用を持ちます。同属のセイヨウカノコソウ(バレリアン・Valeriana officinalis)は欧州・北米で不眠・不安への植物薬として広く利用されています。正しい記述です。
- ウ(正): チョウトウコウ(釣藤鈎)はアカネ科植物カギカズラ等の棘(鈎)のついた茎が基原で、主成分リンコフィリンによる Ca²⁺チャネル遮断・中枢抑制で鎮静・降圧作用を示します。釣藤散(頭痛・神経症・高血圧傾向・めまいに用いる)の中心的生薬です。正しい記述です。
- エ(誤・正答): サンソウニンはクロウメモドキ科(Rhamnaceae)植物の種子が基原で、ミカン科・サンショウ(山椒)とは植物学的に全く別の科です。また鎮静効果は辛み成分(サンショール等)によるものでなく、フラボノイド・サポニン系の成分による中枢神経抑制作用です。記述の全要素が誤りです。
- オ(正): 小児への用量設定は成人用量をそのまま用いることはできず、製品ごとに年齢に応じた用量が定められています。カノコソウを含む鎮静補助薬においても、小児への使用が認められている製品では年齢別の用量が設定されています。正しい記述です。
【バレリアンの神経薬理と GABA 受容体との関係】
カノコソウ(日本産・Valeriana fauriei)およびセイヨウカノコソウ(欧州産・Valeriana officinalis)の鎮静作用の主要な薬理機序:
1. GABA-A 受容体調整作用:
- バレリアン酸(valerenic acid)が GABA-A 受容体のベンゾジアゼピン結合部位またはその周辺に結合 → Cl⁻流入促進 → 神経抑制
- GABA 再取り込み阻害(シナプス前末端でのトランスポーター阻害)によるシナプス間隙 GABA 濃度増加
- GABA 分解酵素(GABA-T:GABA アミノトランスフェラーゼ)の阻害
2. アデノシン受容体調整:
- リグナン成分(ヒドロキシピノレジノール等)がアデノシン A1 受容体を活性化 → 抑制性神経伝達促進
3. 5-HT5a 受容体(セロトニン受容体)への作用:
- バレリアン酸が 5-HT5a 受容体アンタゴニスト → 不安・睡眠障害への寄与
重要な比較:ベンゾジアゼピン系薬との違い:
| 特性 | バレリアン(カノコソウ) | ベンゾジアゼピン系(トリアゾラム等) |
|---|---|---|
| GABA-A への作用 | 間接的・部分的 | 直接的・強力(ベンゾジアゼピン結合部位への特異的結合) |
| 依存性 | 低い(ほとんど報告なし) | 高い(身体依存・精神依存) |
| 翌朝の眠気(残留効果) | 比較的少ない | あり(特に長時間型) |
| 安全域 | 広い(通常用量で安全) | 狭い(過量で呼吸抑制) |
| 登録販売者の取扱い | 一般用医薬品として販売可 | 処方箋薬(登録販売者は扱えない) |
【チョウトウコウのリンコフィリンと釣藤散の実務での使い分け】
釣藤鈎(チョウトウコウ)の主成分リンコフィリン(rhynchophylline)とイソリンコフィリン(isorhynchophylline)はテトラサイクリックオキシンドールアルカロイドで、以下の薬理作用が確認されています:
1. L 型 Ca²⁺チャネル遮断: 血管平滑筋の弛緩 → 末梢血管抵抗低下 → 降圧
2. NMDA 受容体拮抗: 興奮性神経伝達抑制 → 抗痙攣・神経保護
3. 血小板凝集抑制: TXA₂産生抑制 → 抗血栓(軽度)
釣藤散(チョウトウコウ・カンゾウ・ショウキョウ・ブクリョウ・ニンジン等)は高血圧傾向・めまい・頭痛に対して用いられる漢方処方で、「釣藤鈎は煮る時間が長すぎると成分が分解される(後から加える)」という特徴があります。
【サンソウニン(酸棗仁)と配合漢方の使い分け(登録販売者の実務)】
神経系の漢方処方の使い分け(不眠・不安:登録販売者の基礎知識):
| 処方 | 証(体力) | 特徴 |
|---|---|---|
| 酸棗仁湯 | 虚証(疲れて眠れない) | 心身疲労・貧血傾向 |
| 加味帰脾湯 | 虚証(心虚・血虚) | 不眠・不安・胃腸虚弱 |
| 抑肝散 | 中間〜(神経過敏) | 子どもの夜泣き・イライラ |
| 柴胡加竜骨牡蛎湯 | 中間〜実証 | 動悸・不眠・神経症(便秘傾向) |
酸棗仁湯のサンソウニンの主成分:
- スピノシン(spinosin): フラボン C-配糖体。GABA-A 受容体調整・セロトニン 1A 受容体への親和性による抗不安・鎮静
- ジジフサポニン(jujuboside A・B): サポニン。Ca²⁺シグナリング調整・記憶改善(海馬神経への保護)
登録販売者の現場対応: 睡眠薬・精神安定剤の代替として漢方鎮静薬を求める人には「2週間使用しても改善しない・日常生活に支障がある場合は医療機関を受診するよう」明確に伝えることが重要です。生薬・漢方は「穏やかな補助」であり、重篤な不眠障害・うつ病・不安障害は医師の診断が必要です。
<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): 鎮静生薬の基原を一次ソースで突合。サンソウニン=クロウメモドキ科サネブトナツメの種子、カノコソウ=オミナエシ科カノコソウの根および根茎(手引き表記はオミナエシ科。APG分類ではスイカズラ科)、チョウトウコウ=アカネ科カギカズラ等の鈎(とげ)、で確定。正答エ(サンソウニンをミカン科・サンショウとし辛味・山椒油が鎮静をもたらすとする記述は基原・科・成分のすべてが誤り)は妥当で、正答変更なし。選択肢ア・イ・ウ・オはいずれも手引き準拠で正しく、正答エが一意であることを確認。 -->
<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser・品質ゲート編集分の再検証): 「生薬-配合漢方処方の対応」フレームで新規導入された対応関係を再突合。サンソウニン→酸棗仁湯(心身が疲れ弱って眠れない・神経症)、チョウトウコウ→釣藤散(頭痛・高血圧傾向・めまい)、カノコソウ→一般用催眠補助薬/鎮静薬への配合(漢方処方としての単独配合は少ない旨も妥当)、をいずれも一次ソース・手引き準拠で確認。基原(サンソウニン=クロウメモドキ科サネブトナツメ種子、カノコソウ=オミナエシ科の根/根茎、チョウトウコウ=アカネ科カギカズラのとげ)も一致。新規の未検証断定なし、正答エは一意。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第3章 第10節「催眠鎮静薬・鎮暈薬」および第15節「漢方処方製剤・生薬製剤」 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。