登録販売者 第5章 医薬品の適正使用・安全対策 問20:医薬品の適正使用・安全対策(企業の副作用報告・期限区分)
製造販売業者の医薬品副作用等報告に関する期限区分について、次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア製造販売業者は、医薬品による副作用を知った場合、その重篤度・既知性にかかわらず全ての事例を一律15日以内に厚生労働大臣(実務はPMDA)に報告しなければならない。
- イ国内で発生した重篤な副作用(死亡または死亡につながるおそれがある症例)のうち、医薬品との因果関係が否定できないものは、15日以内の報告が求められる区分の一つとされている。正答
- ウ外国で発生した重篤な副作用情報(海外症例)は、国内市場に流通する医薬品の安全対策の参考となるが、報告義務はなく製造販売業者の任意情報提供とされている。
- エ副作用による非重篤な症例(入院・死亡を伴わない事例)は、製造販売業者が報告義務を負う期限区分から除外されており、定期的な安全性定期報告(PSUR等)での概数報告のみが求められる。
- オ感染症報告(医薬品に起因すると疑われる感染症に関する情報)は、副作用報告とは全く別の制度として管理されており、製造販売業者は感染症情報を副作用情報と合わせて報告する必要はない。
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正答はイです。
製造販売業者の副作用報告では、重篤度・既知性等によって報告期限が区分されています。国内で発生した重篤な副作用(死亡または死亡につながるおそれ)で医薬品との因果関係が否定できないものは、15日以内の報告が求められる区分の代表例です。
アは誤りで、報告期限は重篤度・既知性等の区分によって15日・30日等に分かれており、一律15日ではありません。ウは誤りで、外国での重篤な副作用情報も報告義務の対象であり、製造販売業者の任意情報提供ではありません。エは誤りで、非重篤症例についても定期報告等の枠組みがあります。オは誤りで、感染症情報も報告の対象に含まれます。
製造販売業者の副作用等報告の主な期限区分(概要):
| 区分 | 主な内容 | 報告期限 |
|---|---|---|
| 重篤(死亡含む)・未知(国内・外国) | 使用上の注意から予測できない(未知の)重篤な副作用・感染症 | 15日以内 |
| 死亡症例(国内・外国) | 医薬品との関連が否定できない死亡症例(未知の場合) | 15日以内 |
| 外国での措置報告 | 外国での製造・販売中止・回収・廃棄等の保健衛生上の措置 | 15日以内 |
| 重篤・既知で発生傾向の変化等 | 添付文書に記載済み(既知)の重篤な副作用のうち、発生数・頻度・条件等の変化が保健衛生上の危害につながるおそれを示すもの | 30日以内 |
| 感染症定期報告・定期報告 | 非重篤事例・市販後安全性定期報告等 | 定期(規定の期間ごと) |
※報告期限は薬機法施行規則第228条の20に基づき、重篤度・既知/未知・国内/外国等の区分により15日以内・30日以内等に分かれます。
<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): 施行規則228条の20に基づき、15日報告(国内外の重篤・未知の副作用/死亡症例、外国での措置報告)と30日報告(既知の重篤副作用のうち発生傾向の変化等)の区分を確認・正確化。外国症例も任意でなく報告義務の対象である旨を本文と整合。 -->
各選択肢の解説:
- ア(誤): 報告期限は重篤度・既知性・発生地域等の区分によって異なります。「一律15日以内」ではありません。
- イ(正): 国内発生の死亡・死亡につながるおそれのある重篤な副作用で因果関係が否定できないものは、最も緊急性の高い区分として15日以内の報告が求められます。
- ウ(誤): 外国での重篤な副作用情報は「任意報告」ではなく、一定の条件のもとで報告義務があります。日本で販売される医薬品の海外での副作用情報は国内安全対策に直結するため重要です。
- エ(誤): 非重篤症例が報告の義務区分から完全に除外されているわけではありません。定期安全性報告(PSURまたは開発の安全性に関する定期的な最新報告等)の枠組みで報告・評価されます。
- オ(誤): 医薬品に起因すると疑われる感染症情報も副作用等報告の対象に含まれます。生物由来製品(血液製剤等)においては特に感染症報告が重要な位置を占めます。
【企業の副作用報告制度の全体像・国際的整合と期限区分の意義を深掘りする】
1. 薬機法における企業の副作用報告義務の法的根拠
薬機法第68条の10第1項(製造販売業者の報告義務)に基づき、製造販売業者は副作用等の情報を知った日から起算して一定期間内に厚生労働大臣(実務はPMDA)に報告することが義務付けられています。
具体的な報告内容・期限は薬機法施行規則第228条の20(医薬品副作用被害報告の基準)等で規定されています。
2. 報告期限区分の意義(なぜ15日と30日で分けるのか)
「重篤かつ未知の副作用(添付文書に記載のない新規副作用)」は最も緊急性が高く、15日以内の最速報告が求められます。この理由:
- 未知の重篤副作用は、多くの患者が継続使用している場合に新たな被害者が発生するリスクが最大
- 規制当局(厚生労働省・PMDA)が迅速に評価→緊急安全性情報発行・回収等の安全対策措置を取れるよう、迅速な情報提供が必要
「既知の重篤副作用」は添付文書に記載済みで医療関係者に認知されているため、相対的に緊急性が低く、より長い期限(30日等)が設定されます。
3. 外国症例報告の意義と日本での安全対策への影響
グローバルに販売される医薬品において、外国で先に重篤な副作用が発生するケースがあります。
例:
- 欧米でプソイドエフェドリン含有鼻炎薬での脳卒中リスクが報告→日本の製造販売業者も外国症例として報告義務→PMDAが評価→日本での規制対応
外国重篡症例報告は国際的な医薬品安全対策の中核です。WHOのUMC(Uppsala Monitoring Centre:VigiBaseを運営)等の国際副作用データベースとの連携においても、日本からの報告・外国からの情報取得が行われています。
4. ICH E2Aガイドラインと日本の報告期限の国際的整合
日本の企業の副作用報告期限区分は、ICH(医薬品規制調和国際会議)のE2Aガイドライン(臨床安全性データの管理:迅速報告のための定義と基準)に基づく国際的な基準と整合しています。
ICH E2Aの主要な区分:
- SUSAR(Suspected Unexpected Serious Adverse Reaction:予期しない重篤な副作用): 死亡事例は7日以内、その他の重篤例は15日以内(開発段階の治験では7日・15日)
- 市販後の迅速報告: 国内・外国の重篤な副作用→15日以内
日本の薬機法施行規則はこの国際基準に概ね整合した形で定められています。
5. 感染症報告の特殊性(特に生物由来製品)
血液製剤・ワクチン等の生物由来製品に起因する感染症(HIV・肝炎ウイルス等)は、副作用の中でも特別に重大な問題として扱われます。
生物由来製品の感染症報告には、一般医薬品の副作用報告とは別の枠組みが設けられており:
- 原料(献血血液等)に起因する感染症
- 製造工程での汚染による感染症
- 製品使用後の感染症
これらは「生物由来製品感染等被害救済制度」(→ch5_23で詳述)との接続においても重要な情報源となります。
6. 定期安全性報告(PSUR・PBRER)の位置付け
市販後の安全性データを一定期間ごとに集約・評価し、規制当局に提出する報告です。
- PSUR(Periodic Safety Update Report:定期的安全性最新報告): ICHガイドラインE2Cに基づく国際的な定期報告形式
- PBRER(Periodic Benefit-Risk Evaluation Report): PSURの後継として導入されたリスク・ベネフィット評価を含む報告形式
定期報告では非重篤事例の集積・利益リスクバランスの評価が含まれ、個別の迅速報告では見えにくい「慢性的な安全性傾向」を評価するための重要な制度です。
登録販売者は企業の報告制度の詳細を直接操作する立場ではありませんが、この制度の存在と意義を理解することで、医薬品の市販後安全対策の全体像の中での自分の役割(現場での副作用情報収集・報告)を正確に位置付けることができます。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第5章 第2節「医薬品の安全対策」(製造販売業者の副作用報告・期限区分関連記述) 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。