登録販売者 第5章 医薬品の適正使用・安全対策 問23:医薬品の適正使用・安全対策(生物由来製品感染等被害救済制度)
生物由来製品感染等被害救済制度に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア生物由来製品感染等被害救済制度は、医薬品副作用被害救済制度と同一の制度であり、生物由来製品による感染症被害はすべて医薬品副作用被害救済制度として処理される。
- イ生物由来製品感染等被害救済制度の対象となる「生物由来製品」には、ヒト血液を原料とする血液製剤が含まれる。正答
- ウ生物由来製品感染等被害救済制度において、感染被害の原因となった製品の製造業者に製造上の過失(欠陥)があった場合でも、同制度による給付が優先的に適用される。
- エ生物由来製品感染等被害救済制度における給付の種類は、医薬品副作用被害救済制度と全く同一であり、請求期限も統一されている。
- オ一般用医薬品の中にも生物由来製品に分類されるものがあり、一般用医薬品として販売される生物由来製品による感染症被害は、医薬品副作用被害救済制度(一般用医薬品向け)が適用される。
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正答はイです。
生物由来製品感染等被害救済制度の対象となる生物由来製品には、ヒト血液を原料とする血液製剤(アルブミン・血液凝固因子製剤等)が含まれます。これらは1980年代の非加熱血液製剤によるHIV感染(薬害エイズ事件)等の教訓から、特別の救済制度が設けられています。
アは誤りで、生物由来製品感染等被害救済制度は医薬品副作用被害救済制度とは別に設けられた独立した制度です。ウは誤りで、製造業者に過失(欠陥)がある場合はPL法等による損害賠償が適切であり、感染等被害救済制度が優先されるわけではありません。エは誤りで、給付の種類は医薬品副作用被害救済制度とほぼ共通するものの、両制度はそれぞれ別個の制度として設けられており、給付内容・請求期限が完全に「統一されている」とまでは言えません。オは誤りで、一般用医薬品でも生物由来製品に分類されるものは感染等被害救済制度の対象となります。
生物由来製品感染等被害救済制度の概要:
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 根拠法 | 独立行政法人医薬品医療機器総合機構法 |
| 運営主体 | PMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構) |
| 対象製品 | 生物由来製品(血液製剤・ワクチン・生物製剤等) |
| 対象被害 | 生物由来製品の適正使用にも関わらず生じた感染症被害 |
| 資金源 | 生物由来製品の製造販売業者が拠出する拠出金(製品の種類・販売量に応じた負担) |
| 医薬品副作用被害救済制度との関係 | 独立した別制度(感染症特有の被害を対象) |
生物由来製品とは(薬機法上の定義):
人・動物・微生物・植物等の生物(細胞を含む)を原料・材料として製造される医薬品・医療機器等のうち、保健衛生上特別の注意を要するもの。主な例:血液製剤(全血・赤血球製剤・血漿・アルブミン・血液凝固因子等)、ワクチン(感染症予防用)、生物製剤(抗体薬・生物学的製剤等)
各選択肢の解説:
- ア(誤): 生物由来製品感染等被害救済制度と医薬品副作用被害救済制度は別個の独立した制度として設けられています。前者は感染症被害に特化し、後者は一般的な副作用被害を対象とします。
- イ(正): ヒト血液を原料とする血液製剤は「生物由来製品」の代表例であり、同制度の主要対象です。輸血や血液製剤の投与による感染症(HIV・C型肝炎等)に対する救済が制度の中核をなします。
- ウ(誤): 製造業者に製造上の過失(欠陥)がある場合、PL法上の損害賠償請求が適切な救済ルートです。感染等被害救済制度は「過失がなくとも生じた感染被害」(無過失補償)を対象とする制度で、欠陥製品による被害は対象外です。
- エ(誤): 生物由来製品感染等被害救済制度の給付の種類は、医薬品副作用被害救済制度(医療費・医療手当・障害年金・障害児養育年金・遺族年金・遺族一時金・葬祭料)と共通する給付を備えています。もっとも、両者は感染被害と一般的な副作用被害という異なる被害類型を対象とする別個の独立した制度であり、それぞれの制度として運営されています。給付内容・請求期限が両制度で「全く同一で統一されている」とする本選択肢の断定は適切ではありません。
- オ(誤): 生物由来製品による感染被害は、一般用・医療用を問わず「生物由来製品感染等被害救済制度」が適用されます(医薬品副作用被害救済制度ではなく)。
【生物由来製品感染等被害救済制度の設立経緯・薬害エイズ・薬害C型肝炎の歴史と制度設計の背景】
1. 制度設立の歴史的背景
生物由来製品感染等被害救済制度が医薬品副作用被害救済制度とは独立して設けられた最大の理由は、薬害エイズ事件・薬害C型肝炎事件という2つの深刻な薬害の経験です。
薬害エイズ事件(1980年代〜1990年代):
- 血友病患者が非加熱血液凝固因子製剤(濃縮血液製剤)を使用→HIV感染→発症
- 加熱処理によりHIVを不活化できることが判明した後も、非加熱製剤が使用され続けた(企業・国の対応の遅れ)
- 薬事行政・企業・医師の責任が問われ、長期の損害賠償訴訟が行われた
- 多数の血友病患者がHIVに感染するという深刻な被害が生じた<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): 検証困難な具体的な感染者数(約1,400人)の断定を削除し、「多数の血友病患者が感染」という検証可能な範囲の記述に変更。試験の主論点は生物由来製品の救済制度の存在意義であり、正確な人数は出題範囲外。 -->
薬害C型肝炎事件(1980年代〜):
- 血液製剤(フィブリノゲン製剤等)の投与を受けた患者がC型肝炎ウイルスに感染
- 2002年以降に被害者が明らかになり、集団訴訟へ発展
- 2008年「特定フィブリノゲン製剤及び特定血液凝固第IX因子製剤によるC型肝炎感染被害者を救済するための給付金の支給に関する特別措置法」が制定
これらの経験から「生物由来製品は感染症リスクという特有のリスクがある」として、一般医薬品の副作用被害とは別の専門的救済制度が設けられました。
2. 生物由来製品の感染リスクの特殊性
生物由来製品(特に血液製剤)が特別な救済制度を要する理由:
- 感染性病原体の不活化困難: 血液・生物材料由来の製品は、ウイルス・細菌・プリオン等の感染性病原体を完全に除去・不活化することが技術的に困難な場合がある
- 長い潜伏期間: HIV(平均10年)・C型肝炎(10〜20年)等は感染から症状発現まで長期間かかり、被害の発覚が遅れる
- 集団的感染のリスク: 同一ロットの血液製剤が多数の患者に使用された場合、同時に多数の感染被害が生じうる(一般的な副作用とは質的に異なる)
3. 制度の技術的な資金調達:拠出金制度
生物由来製品感染等被害救済制度は「医薬品副作用被害救済基金(製薬企業からの課徴金等)」とは別に、生物由来製品の製造販売業者が拠出する「拠出金」を財源とします。
拠出金の仕組み:
- 生物由来製品の製造販売業者は、製品の種類・販売量に応じた拠出金をPMDAに納付
- 感染被害が発生した際の救済給付の財源として積立
- 「保険」的な性格(多数の業者でリスクを分散して救済財源を確保)
これにより、仮に1社の製品で多数の感染被害が発生した場合でも、業界全体の拠出金で救済が可能な仕組みとなっています。
4. 医薬品副作用被害救済制度との比較
| 比較項目 | 医薬品副作用被害救済制度 | 生物由来製品感染等被害救済制度 |
|---|---|---|
| 対象被害 | 医薬品の副作用による健康被害 | 生物由来製品による感染症被害 |
| 対象製品 | 承認済みの医薬品(生物由来製品の一部を除く) | 承認済みの生物由来製品 |
| 資金源 | 製薬業界全体からの課徴金等 | 生物由来製品製造販売業者からの拠出金 |
| 感染症への特化 | 感染症は除外(別制度で対応) | 感染症被害に特化 |
| 設立経緯 | 1980年(サリドマイド・スモン等の薬害を受けて) | 薬害エイズ・薬害C型肝炎を受けて整備・強化 |
5. 現代の生物由来製品とリスク管理
現代の血液製剤・ワクチンは、製造技術の進歩(加熱処理・ウイルス不活化・遺伝子組換え技術等)により感染リスクが大幅に低下していますが、プリオン等では不活化が困難な感染性物質も存在します。このため、生物由来製品の感染リスク管理は引き続き重要な課題とされています。
登録販売者は生物由来製品を直接扱う場面は少ないですが、制度の存在と意義を理解することで、医薬品安全行政の全体像を把握し、適切な情報提供に役立てることができます。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第5章 第3節「医薬品の副作用等による健康被害の救済」(生物由来製品感染等被害救済制度の関連記述) 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。