衛生管理者 関係法令(有害業務以外) 問27:労働基準法
解雇に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア使用者は、労働者を解雇しようとする場合、少なくとも30日前に予告しなければならないが、天変地変等のやむを得ない事由による事業廃止または本人の責めに帰すべき事由による解雇の場合は、行政官庁の認定なしに即時解雇ができる。
- イ解雇予告手当(30日分の平均賃金)を支払えば、常に即日解雇が認められる。
- ウ業務上の負傷または疾病のために療養中の労働者は、その療養期間中および療養期間終了後30日間は解雇することができない。正答
- エ労働者が自ら退職を申し出た場合でも、使用者は解雇予告義務を負う。
- オ解雇予告除外認定を受けた場合、使用者は解雇予告も解雇予告手当の支払いも一切不要となる。
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正しいのはウです。業務上の負傷・疾病のために療養中の労働者(労基法第19条第1項前段)およびその療養期間終了後30日間は、使用者は解雇することができません(同条本文)。この30日間の解雇禁止は療養完了後の労働者が安定した形で就職活動できるよう保護する制度です。
各誤り: ア→天変地変等のやむを得ない事由による解雇でも「行政官庁の認定」が必要な場合があります(認定なしに即時解雇できるのは「本人の責めに帰すべき事由」の場合のみ)。イ→解雇予告手当を支払っても即時解雇できる場合と解雇制限期間中は解雇できない場合があります(療養中等)。エ→退職の申し出は労働者からの意思表示であり、解雇ではないため解雇予告義務は発生しません。オ→解雇予告除外認定を受けた場合は解雇予告も予告手当も不要ですが、解雇制限期間中の解雇とは別の問題です。
解雇制限・解雇予告の体系(労基法第19条・第20条):
各選択肢の正誤と根拠:
- ア(誤): 天変地変等のやむを得ない事由による事業廃止の場合の即時解雇には、行政官庁(労働基準監督署長)の認定が必要です(労基法第20条第1項ただし書)。認定なしに即時解雇できるのは「労働者の責めに帰すべき事由による解雇」の場合です。両方を「行政官庁の認定なし」とする表現が誤りです。
- イ(誤): 解雇予告手当を支払えば即日解雇が認められる場合がありますが(労基法第20条第1項後段)、業務上災害療養中・産前産後休業中の労働者には解雇制限(労基法第19条)があり、解雇予告手当を支払っても解雇できません。「常に即日解雇が認められる」は誤りです。
- ウ(正): 労基法第19条第1項の規定通り。業務上負傷・疾病の療養期間中およびその後30日間の解雇禁止は絶対的な制限です(天変地変等の認定がない限り解除できない)。
- エ(誤): 解雇予告は「使用者が一方的に雇用を終了させる場合(解雇)」に必要なものです。労働者からの退職申し出(辞職)は労働者の意思に基づく自発的な雇用終了であり、解雇ではないため解雇予告義務は発生しません。
- オ(正): 解雇予告除外認定(労基法第20条第1項ただし書・第21条)を受けた場合は、解雇予告も解雇予告手当も不要です。これは正しい記述です。ただし解雇制限期間中の解雇は別途禁止されており、認定があっても制限は解除されません。
【理論的背景】
解雇制限(労基法第19条)と解雇予告義務(労基法第20条)は異なる制度です:
- 解雇制限: 特定の状況下(業務上災害療養中・産前産後休業中)では解雇が絶対的に禁止される(解雇予告手当を支払っても禁止)
- 解雇予告義務: 解雇する場合に最低30日前の予告または30日分の平均賃金(解雇予告手当)の支払いが必要(要件を満たせば解雇は有効)
この2つを混同することが最大の落とし穴です。解雇制限(第19条)は「解雇そのものを禁止」し、解雇予告義務(第20条)は「解雇の方法を規制」します。
解雇予告手当を支払っても解雇できない場面(第19条が第20条に優先):
- 業務上負傷・疾病による療養期間中
- 療養終了後30日間
- 産前産後休業中(産前6週間・産後8週間)
- 産後休業終了後30日間
【実務・条文構造】
解雇制限の例外(労基法第19条第1項ただし書・第2項):
① 天変地変等のやむを得ない事由による事業継続の不能: 行政官庁の認定が条件
② 打切補償(療養開始から3年経過後も疾病が治らない場合に平均賃金1,200日分を支払う場合): 解雇制限が解除される
解雇予告の義務と例外(労基法第20条・第21条):
【原則】:
- 30日前に予告、または
- 予告なしに解雇する場合は30日分の平均賃金(解雇予告手当)を支払う
- 予告日数を短縮した場合は(30日-予告日数)分の予告手当が必要
【例外①: やむを得ない事由+行政官庁認定】:
- 天変地変等による事業廃止で認定を受けた場合: 予告・予告手当不要
【例外②: 労働者の責めに帰すべき事由による解雇+行政官庁認定】:
- 懲戒解雇等で認定を受けた場合: 予告・予告手当不要
【適用除外(労基法第21条)】:
- 試みの使用期間(試用期間)中の者(ただし14日を超えて継続して使用された場合は除外されない)
- 日々雇い入れられる者(ただし1か月を超えて引き続き使用された場合は除外されない)
- 2か月以内の期間を定めて使用される者(ただし期間超過継続の場合は除外されない)
- 季節的業務に4か月以内の期間を定めて使用される者
平均賃金の定義(労基法第12条):
- 直前の3か月間に支払われた賃金の総額÷直前の3か月間の総日数(暦日数)
- 計算式の分母が「労働日数」ではなく「暦日数」である点が重要
【試験での位置づけ】
解雇問題では「解雇制限(療養中・産前産後)と解雇予告義務の区別」「解雇予告除外認定(行政官庁の認定が必要なもの)」「解雇予告の期間(30日前)と予告手当(30日分の平均賃金)」の3点が頻出です。「解雇予告手当を支払えば常に即日解雇可能」という誤りは最頻出のパターンであり、解雇制限期間中はこれが許されないことが重要です。また「天変地変での即時解雇に行政官庁の認定が必要」と「労働者の責に帰すべき事由での即時解雇に認定が必要」という2つの認定場面の違いも出題されます。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 「天変地変等」と「労働者の責に帰すべき事由」の両方で「行政官庁の認定なしに即時解雇できる」という誤りは、認定要件が混同されているケースです。「労働者の責に帰すべき事由(懲戒解雇等)」での認定は行政官庁の許可的機能を持ちますが、天変地変等の認定は事業廃止の客観性確認のためです。
- イ: 解雇予告手当(30日分の平均賃金)は「予告を省略する代価」であり、「解雇禁止状態を解除する手段」ではありません。療養中・産前産後の絶対的解雇禁止(第19条)は、予告手当を支払っても突破できません。
- ウ: 正答。療養終了後30日間の解雇禁止は「社会復帰後の経済的安定を確保する」ためです。完治(または症状固定)してすぐ解雇されると、就職活動中の収入源がなくなるという問題への対応です。
- エ: 退職(辞職)と解雇の区別は重要です。労働者が自ら退職する場合(民法627条に基づく解約申し入れ)は、使用者の解雇予告義務は発生しません。ただし民法上の退職の申し入れ後2週間で雇用関係が終了します(無期雇用の場合)。
- オ: 除外認定(特に労働者の責に帰すべき事由による解雇での認定)は実務上ハードルが高く、認定要件(重大な規律違反・横領等)を満たさなければ不認定となります。認定があれば即時解雇が合法化されますが、解雇制限(第19条)との関係は別途検討が必要です。
【根拠法令】労働基準法 第19条(解雇制限:療養期間中・産前産後・その後30日間)・第20条(解雇予告:30日前予告または30日分予告手当)・第21条(解雇予告の適用除外)
【補足】解雇制限(第19条)と解雇予告義務(第20条)は別の制度。解雇予告手当を支払っても療養中・産前産後の解雇は禁止。「天変地変等の即時解雇」には行政官庁の認定が必要。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働基準法(労基法)第19条(解雇制限)・第20条(解雇予告・予告手当)・第21条(解雇予告の適用除外)。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。