関係法令(有害業務以外)42安全衛生管理体制

衛生管理者 関係法令(有害業務以外) 問42:安全衛生管理体制

2019年4月施行の産業医・産業保健機能の強化に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。

  • 事業者は、産業医に対し、労働者の健康管理等を適切に行うために必要な情報を提供しなければならないが、情報提供の対象は労働者の健康診断結果に限られる。
  • 産業医が、労働者の健康を確保するために必要と判断した場合に行う勧告は、事業者への意見申述であり、事業者はその勧告に従う法的義務はない。
  • 事業者が産業医から受けた勧告の内容とその対応方針を、衛生委員会または安全衛生委員会に報告することは、努力義務であり、法令上の義務ではない。
  • 産業医は、健康上の問題があると判断した労働者に対し、本人の同意を得ることなく、その情報を事業者(人事担当者等)に提供することができる。
  • 事業者は、産業医から受けた勧告の内容と事業者の対応に関する事項を記録し、3年間保存しなければならない。正答
正答:事業者は、産業医から受けた勧告の内容と事業者の対応に関する事項を記録し、3年間保存しなければならない。

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正しいのはオです。産業医が事業者に勧告した場合、事業者はその勧告内容と対応に関する事項を記録し、3年間保存しなければなりません(安衛則第14条の3)。

各誤りの要点: ア→事業者が産業医に提供すべき情報は健康診断結果だけでなく、「長時間労働者の氏名・時間外労働時間数」「労働者の業務に関する情報」なども含まれます。イ→産業医の勧告は法的拘束力こそないものの、事業者は勧告を受けた場合に衛生委員会への報告義務があり、勧告を尊重しなかった場合の説明責任が課されます(事実上の拘束力)。ウ→事業者は産業医から勧告を受けた際、その内容を衛生委員会(または安全衛生委員会)に報告する義務があります(努力義務ではなく法令上の義務)。エ→産業医が労働者の健康情報を事業者へ提供する際は、労働者の同意が原則として必要です。

標準試験対策の基準レベル

2019年施行の産業医権限強化の全体像(安衛法第13条改正):

各選択肢の正誤と根拠:

  • ア(誤): 事業者が産業医に提供すべき情報(安衛則第14条の2):

- ①長時間労働者の氏名・労働時間(時間外・休日労働が月80時間超の者)

- ②労働者の業務に関する情報(産業医が必要と判断した場合)

- ③ストレスチェックの結果(集団分析結果)

健康診断結果のみに限定されていません。

  • イ(誤): 産業医の勧告は事業者に義務的考慮を求めます(安衛法第13条第4項)。事業者は勧告を受けたら①衛生委員会への報告、②勧告内容の記録(3年保存)が義務付けられています。従わない場合の直接罰則はありませんが、実質的な拘束力を持ちます。
  • ウ(誤): 安衛法第13条第6項により、事業者は産業医から勧告を受けた場合に衛生委員会(または安全衛生委員会)への報告が法令上の義務(努力義務ではない)です。
  • エ(誤): 産業医が労働者の健康情報を事業者に提供する際は、原則として本人の同意が必要。個人の健康情報は個人情報保護法上の要配慮個人情報に該当し、取り扱いには厳格な要件があります。
  • オ(正): 安衛則第14条の3により、勧告内容と事業者対応の記録・3年保存が義務。
上級誤答論破・根拠法令まで深掘り

【理論的背景】

2018年の働き方改革関連法による安衛法改正(産業医・産業保健機能の強化)は、従来「形式的な選任にとどまっていた産業医の機能を実質化する」ことを主眼としています。改正前の産業医は「選任されているが意見が無視されがち」「事業者との情報共有が不足し健康問題を見逃す」という課題が指摘されていました。

改正の核心は3点です:

1. 事業者から産業医への情報提供義務の明確化(安衛法第13条第4項)

2. 産業医の勧告を衛生委員会へ報告する義務化(第13条第6項)

3. 勧告内容・事業者対応の記録・保存義務(安衛則第14条の3)

これにより産業医の発言が「経営判断の一考慮要素」から「説明責任を伴う制度的入力」へと格上げされました。

【実務・条文構造】

改正後の産業医の権限・情報フローの全体像:

事業者→産業医への情報提供(安衛則第14条の2):

  • ①時間外・休日労働が月80時間超の労働者の氏名・労働時間数(当該情報が確定後、速やかに)
  • ②労働者の業務に関する情報(産業医が職務を行うために必要と判断したもの)
  • 健康診断の結果は従前から産業医へ提供されてきたが、これに加えて長時間労働情報等が追加

産業医の勧告(安衛法第13条第3項):

  • 産業医が事業者に「労働者の健康管理等について必要な勧告をすることができる」
  • 勧告は「権利」であり、必要と判断した場合に行使できる(義務ではない)
  • 事業者は勧告を尊重しなければならない(第13条第4項:義務的考慮)

勧告後の手続き(安衛法第13条第5項・第6項):

  • 事業者は勧告を受けたら「遅滞なく」衛生委員会または安全衛生委員会に報告する義務
  • 報告内容: 勧告の内容・事業者がとった措置またはとろうとする措置の内容
  • 衛生委員会がない事業場(50人未満)では関係する労働者への周知が義務

記録・保存(安衛則第14条の3):

  • 勧告内容と事業者対応を記録し、3年間保存
  • 保存期間:産業医の職務に関する記録一般は3年(健康診断の個人票は5年と異なる点に注意)

健康情報の事業者への提供における同意の原則:

  • 産業医が把握した労働者個人の健康情報は要配慮個人情報(個人情報保護法第2条第3項)
  • 事業者への提供には原則として本人同意が必要
  • 例外(緊急の場合・本人が同意できない状況等)も存在するが、試験では「原則同意必要」を覚える

【試験での位置づけ】

2019年改正(産業医権限強化)の試験頻出ポイント:

  • 事業者が産業医に提供すべき情報: 「月80時間超の長時間労働者情報」が追加された点
  • 勧告後の衛生委員会報告: 「義務」(努力義務や任意ではない)
  • 勧告の記録保存: 「3年間」(健康診断個人票の5年と混同しないこと)
  • 健康情報の事業者提供: 「本人同意が原則」

「産業医の勧告は法的拘束力がない(従わなくても罰則なし)」は半分正しいが、「勧告を受けた事業者は委員会報告・記録保存の義務あり」という実質的拘束力の仕組みを併せて理解する必要があります。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 産業医が労働者の健康管理を行うためには、健康診断結果だけでなく「その労働者がどれだけ働いているか」「どんな業務をしているか」を把握することが不可欠です。月80時間超の情報提供義務はこの観点から設けられました。
  • イ: 「従う義務はない」という表現は法的には概ね正確ですが、「衛生委員会報告義務」「記録保存義務」という手続き的義務が附随するため、実務上は勧告を完全に無視することは困難です。勧告に従わない場合でもその理由・対応方針を委員会で説明する必要があります。
  • ウ: 衛生委員会への報告を義務化した趣旨は、「労使双方の目の前で産業医の勧告内容を共有することで、事業者の恣意的な隠蔽を防ぐ」ためです。透明性確保の仕組みとして機能します。
  • エ: 産業医が把握した個人の健康情報の取り扱いは、「労働者の健康情報の取扱いに関するガイドライン(令和元年3月)」に詳細が示されています。事業者への情報提供は、労働者が同意しない場合でも「就業制限が必要な緊急の場合」等の例外があります。
  • オ: 3年保存という規定は、産業医関連の記録全般(勧告記録・巡視記録等)に適用されます。健康診断の個人票が5年保存であることと比較して覚えておく必要があります。特殊健康診断の個人票は5年(一部業務では30年・永続保存)であり、保存期間の違いは頻出です。

【根拠法令】労働安全衛生法 第13条第3項〜第6項(産業医の権限・勧告・委員会報告義務)、労働安全衛生規則 第14条の2(事業者の情報提供義務)・第14条の3(勧告の記録・3年保存)

【補足】産業医への情報提供は健康診断結果のみでなく月80時間超の長時間労働情報等も含む。勧告後は衛生委員会への報告と3年間の記録保存が義務。健康情報の事業者提供は原則として労働者の同意が必要。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働安全衛生法(安衛法)第13条第3項〜第6項(産業医の職務・権限・勧告)、安衛則第14条の2〜第14条の3(情報提供・勧告の記録保存)。2018年改正(2019年4月施行)による権限強化規定。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。

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