衛生管理者 関係法令(有害業務以外) 問43:安全衛生管理体制
労働災害の報告・届出に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア事業者は、労働者が業務上の負傷または疾病により死亡または休業した場合、労働者死傷病報告を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。
- イ業務上の負傷または疾病により、労働者が休業した日数が4日以上の場合は、遅滞なく(発生のつど)労働者死傷病報告を提出する。
- ウ業務上の負傷または疾病による休業日数が1日以上3日以下(1日から3日まで)の場合は、1〜3月、4〜6月、7〜9月、10〜12月の各四半期ごとに、翌月末日までに労働者死傷病報告を提出する。
- エ労働者が業務上の負傷により死亡した場合、事業者は当該死亡事故を速やかに所轄労働基準監督署長に電話等で報告したうえで、労働者死傷病報告を遅滞なく提出しなければならない。正答
- オ虚偽の内容を記載した労働者死傷病報告を提出した場合、労働安全衛生法に基づく罰則(50万円以下の罰金)の対象となる可能性がある。
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誤っているのはエです。選択肢エは「死亡事故は速やかに電話等で報告し、その後に労働者死傷病報告を遅滞なく提出」と述べていますが、安衛法が定める「重大災害の即時報告義務」(電話等による即時報告:安衛則第96条)は、死亡事故ではなく「同時に3人以上が罹災した労働災害」や「爆発・火災等の重大な事故」に適用されます。通常の死亡事故(1人死亡)は、重大災害の即時報告義務の対象外であり(もちろん遅滞なく死傷病報告は必要ですが)、「電話等による速やかな報告」を義務付ける規定はありません。したがって、エの「速やかに電話等で報告」という部分が誤りです。
労働者死傷病報告の制度と提出タイミング(安衛則第97条):
各選択肢の正誤と根拠:
- ア(正): 業務上の負傷・疾病による死亡・休業はすべて報告対象。パートタイム労働者・派遣労働者(派遣先事業者が報告)も含む。
- イ(正): 休業4日以上(死亡を含む)は「発生のつど」遅滞なく提出(様式第23号)。遅れなく速やかに報告するのが原則。
- ウ(正): 休業1〜3日は四半期(3か月)ごとに翌月末日までにまとめて提出(様式第24号)。頻度の軽減が図られている。
- エ(誤): 安衛則第96条が定める「即時報告(電話等)」の対象は、「火災・爆発・建物倒壊・機械等の破損」等の重大な事故または「3人以上が同時に罹災した労働災害」です。1人の死亡事故は重大災害の即時報告(電話等)の対象外。死亡事故の場合は「労働者死傷病報告を遅滞なく提出」が正しい手続きであり、電話等の即時報告義務はありません。
- オ(正): 安衛法第100条違反(虚偽報告・報告怠慢)は50万円以下の罰金(安衛法第120条第5号)。
重大災害(安衛則第96条)の即時報告対象:
- 火災・爆発
- 建設物の倒壊
- 機械、クレーン等の倒壊・折損
- 3人以上が同時に罹災した労働災害
→ これらは「遅滞なく」ではなく「直ちに(電話等で速やかに)」報告が必要。
【理論的背景】
労働者死傷病報告制度(安衛法第100条・安衛則第97条)は、労働災害の発生状況を行政(労働基準監督署)が把握するための情報収集制度です。把握した情報は、労働災害統計(死亡者数・休業4日以上災害数等)として公表され、労働安全衛生行政の施策立案の基礎データとなります。
「労働者死傷病報告」を提出しない(いわゆる「労働災害を隠す」ことを「労災かくし」と呼びます)行為は、法的に罰則の対象となるだけでなく、行政監督機関による立入検査・改善命令の引き金となります。虚偽の報告も同様に処罰対象であり、悪質な場合は刑事訴追に発展することがあります。
「重大災害の即時報告」(安衛則第96条)は、行政が迅速に現場に介入できるようにするための別個の仕組みです。死亡事故が即時報告の対象外(当然ながら遅滞なく死傷病報告は必要)であることは、試験では「電話報告義務があるかどうか」という形で問われます。
【実務・条文構造】
労働者死傷病報告の提出区分(安衛則第97条):
| 休業日数 | 提出タイミング | 様式 |
|---|---|---|
| 4日以上(死亡含む) | 遅滞なく(発生のつど) | 様式第23号 |
| 1日以上3日以下 | 四半期ごと翌月末日まで | 様式第24号 |
| 0日(不休) | 報告不要 | — |
(休業4日以上・死亡は「遅滞なく」様式第23号。休業1〜3日は四半期ごと様式第24号。不休は報告不要。この区分の数値を正確に押さえること。)
重大災害の即時報告(安衛則第96条)の対象事例:
1. 火災・爆発: 事業場内で発生した火災・爆発
2. 建設物等の倒壊: 建築物・機械・足場等の倒壊・折損
3. クレーン等の転倒: 移動式クレーンの転倒等
4. 3人以上が同時罹災: 一つの災害で3人以上が死傷(死亡・休業)した場合
5. その他重大な事故: 爆発性・発火性・引火性物質の漏えい等
→ 報告方法: 電話・FAX等で「直ちに」所轄労働基準監督署長に報告(様式なし・口頭でも可)
→ その後: 所定の様式による書面報告も必要
1人の死亡事故の手続き:
- 安衛則第96条の重大災害即時報告は原則対象外(1人の死亡は「3人以上同時罹災」ではない)
- 安衛則第97条の労働者死傷病報告(様式第23号)を「遅滞なく」提出
- 実務では、1人の死亡でも監督署への電話連絡・現場保存を行うケースが多いが、これは安衛則第96条の義務ではなく実務慣行または業種別指導によるものです
派遣労働者の場合:
- 派遣中の災害については、派遣先事業者が所轄監督署(派遣先の所轄)へ報告
- 派遣元事業者も当該情報を把握し、自己の所轄監督署へ通知が必要な場合がある
【試験での位置づけ】
死傷病報告の頻出ポイント:
- 「4日以上(死亡含む)は遅滞なく」「3日以下は四半期報告」という提出タイミングの区分
- 「重大災害(安衛則第96条)の即時電話報告が必要な場合」(3人以上同時罹災・火災爆発等)と通常の死亡事故(電話義務なし)の区別
- 「虚偽報告(労災かくし)は50万円以下の罰金」
試験では「死亡事故は電話で即時報告が必要か」という形で誤りの選択肢として登場します。また「休業1〜3日は報告不要」という誤り選択肢も定番です(不休のみ報告不要で、休業1〜3日は四半期報告が必要)。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 報告義務は「業務上」の負傷・疾病に限られます。通勤災害は別途、通勤災害報告の問題が生じます(通勤災害の報告義務は死傷病報告とは異なる)。派遣労働者が被災した場合は派遣先が報告義務者です。
- イ・ウ: 「4日以上は遅滞なく」「1〜3日は四半期(翌月末まで)」の区分を覚える際、「なぜ3日以下は四半期まとめ報告か」を理解すると記憶しやすいです。軽微な休業(1〜3日)は発生のたびに報告させると事業者の事務負担が増大するため、行政の合理化措置として四半期報告方式が採用されています。
- エ: 「死亡事故は電話で速やかに報告する実務慣行」と「法令上の義務(3人以上同時罹災等に限定)」を区別することが重要です。多くの企業では死亡事故発生時に速やかに監督署へ電話連絡しますが、これは法令上の義務ではなく実務上の適切な対応です。
- オ: 「労災かくし」(労働者死傷病報告不提出・虚偽記載)は労働行政において厳しく対応される問題です。発覚した場合、罰金刑に加えて労働基準監督署による重点監督・メディア報道等のリレピュテーションリスクが伴います。
【根拠法令】労働安全衛生法 第100条(報告義務)・第120条第5号(50万円以下罰金)、労働安全衛生規則 第96条(重大災害の即時報告:火災・爆発・3人以上同時罹災等)・第97条(労働者死傷病報告:4日以上は遅滞なく・1〜3日は四半期報告)
【補足】4日以上(死亡含む)は遅滞なく様式第23号。1〜3日は四半期翌月末までに様式第24号。重大即時報告(電話等)は「3人以上同時罹災・火災爆発等」が対象で、1人の死亡事故は電話義務なし。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働安全衛生法(安衛法)第100条(報告義務)、労働安全衛生規則(安衛則)第97条(労働者死傷病報告)・第96条(重大災害の報告)。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。