衛生管理者 関係法令(有害業務以外) 問44:労働基準法
労働者名簿および賃金台帳に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア労働者名簿は各事業場ごとに作成する義務があるが、常時10人未満の労働者を使用する事業場は作成義務が免除される。
- イ賃金台帳には、労働者の氏名・性別・住所・賃金計算期間・労働日数・労働時間数・時間外・休日・深夜労働の時間数・基本給・手当等の賃金を記載しなければならない。
- ウ労働者名簿の保存期間は、労働者が退職・死亡した日から3年間である。
- エ賃金台帳の保存期間は、最後の記入をした日から3年間である。
- オ使用者は、労働者名簿・賃金台帳・雇入れ・解雇・災害補償・賃金等に関する重要書類を、いずれも5年間(当分の間3年間)保存しなければならない。正答
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正しいのはオです。労基法第109条は、「使用者は、各事業場ごとに労働者名簿・賃金台帳・雇入れ・解雇・災害補償・賃金等に関する重要書類を5年間保存しなければならない」と定めています。ただし2020年の民法改正(時効期間の延長)に伴う労基法の改正により、当面の間(経過措置)は3年間保存で足ります。
各誤りの要点: ア→労働者名簿は事業場規模に関係なく作成義務あり(10人未満の免除規定はない)。イ→賃金台帳の法定記載事項(労基則第54条)に「労働者の住所」は含まれない(住所は労働者名簿の記載事項)。よって住所を必須記載事項に含めたイは誤り。ウ→保存期間は「退職・死亡の日から5年間(当分の間3年間)」であり、「3年間」と断定するのは旧法の数値で不正確。エ→賃金台帳の保存期間は5年間(当分3年)であり、「3年間」と断定するのは旧法の数値で不正確。
労働者名簿・賃金台帳・書類保存の全体像(労基法第107〜109条):
各選択肢の正誤と根拠:
- ア(誤): 労働者名簿(労基法第107条)は全事業場(規模にかかわらず)で作成義務あり。10人未満の免除規定は存在しません(就業規則は10人以上が作成義務ですが、労働者名簿・賃金台帳は別)。
- イ(誤): 賃金台帳の法定記載事項(労基法第108条・労基則第54条)は、氏名・性別・賃金計算期間・労働日数・労働時間数・時間外/休日/深夜労働の各時間数・基本給/手当等の種類と額・控除額です。「住所」は含まれていません(住所は労働者名簿〔労基則第53条〕の記載事項)。本肢は記載事項に「住所」を加えている点が誤りです。
- ウ(誤): 労働者名簿の保存期間は、「退職・死亡の日から5年間(当分の間3年間)」(労基法第109条)。「退職・死亡した日から3年間」という年数は旧法の数値で、改正後は5年(経過措置3年)が正しい。
- エ(誤): 賃金台帳の保存期間の起算点は「最後の記入をした日から」が誤りで、「賃金を支払った日から」が起算点です(一般的解釈)。また保存期間は5年(当分3年)。
- オ(正): 5年間(当分の間3年間)が正しい保存期間(労基法第109条2020年改正)。
保存期間のまとめ(いずれも当分の間は3年):
- 労働者名簿: 退職・死亡後5年(当分3年)
- 賃金台帳: 最後の記入後5年(当分3年)
- 健康診断個人票: 5年(特殊健診は業務によっては30年・無期限)
【理論的背景】
労働基準法第109条の書類保存期間は、2020年4月1日施行の改正民法(債権法改正)に対応した労基法改正により、従来の3年間から5年間に延長されました。
背景として、民法の一般債権の消滅時効が「権利を行使できることを知った時から5年間(または権利を行使できる時から10年間)」に統一されたことがあります。これに合わせて、労働関係の金銭的請求権(未払い賃金請求・割増賃金請求等)の時効も「5年間(当分の間は3年間)」に延長されました(労基法第115条改正)。
書類保存期間も時効期間と同期させる必要があるため、第109条の保存期間も5年(当分3年)に延長されました。この「当分の間3年間」という経過措置は、事業者の実務的な対応期間を考慮した暫定措置であり、将来的には5年保存が完全施行される予定です。
【実務・条文構造】
労働者名簿(労基法第107条)の記載事項:
- 氏名・生年月日・性別・住所
- 雇入れの年月日・従事する業務の種類
- 退職・死亡の年月日とその事由(解雇の場合はその理由)
- 賞罰(懲戒処分等)
賃金台帳(労基法第108条)の記載事項:
- 氏名・性別
- 賃金計算期間
- 労働日数
- 労働時間数(法定内・時間外・休日・深夜の区分)
- 基本給・手当・その他賃金の種類と金額
- 控除額(社会保険料・税金等)
保存期間の起算点(労基法第109条・安衛則等):
| 書類 | 保存期間 | 起算点 |
|---|---|---|
| 労働者名簿 | 5年(当分3年) | 退職・死亡の日 |
| 賃金台帳 | 5年(当分3年) | 最後の記入の日 |
| 雇入れ・解雇・退職に関する書類 | 5年(当分3年) | その書類が作成された日 |
| 健康診断個人票 | 5年 | 健康診断を実施した日 |
| 特殊健康診断個人票(一部業務) | 30年または無期限 | 業務終了後 |
| ストレスチェック実施結果 | 5年 | 通知した日 |
注意点: 健康診断と労基法書類の区別:
- 健康診断の個人票(安衛法): 5年保存(改正による延長なし・元々5年)
- 労働者名簿・賃金台帳(労基法): 5年保存(当分3年)(2020年改正で3年→5年に延長)
この区別が試験で問われます。「健康診断の個人票は5年・労働者名簿は3年」と旧法で覚えていると誤答します。
両罰規定と罰則:
労働者名簿・賃金台帳の未作成・虚偽記載(労基法第107条・108条違反)は、30万円以下の罰金(労基法第120条)の対象です。
【試験での位置づけ】
労働者名簿・賃金台帳の頻出ポイント:
- 「労働者名簿の作成義務は規模を問わない」(10人以上・50人以上等の規模要件なし)
- 「保存期間は5年間(当分の間は3年間)」(2020年改正が重要)
- 「健康診断個人票は5年」(労基法書類と同じだが、改正対象外で元々5年)
- 「賃金台帳の記載事項(時間外・休日・深夜の各区分が必要)」
2020年改正による「3年→5年(当分3年)」という二重構造は、近年の試験で新傾向として出題されています。「3年間」とする選択肢は旧法の数値であり、「5年間(当分の間3年間)」が現行法の正しい表現です。選択肢の表現に注意して「3年」と「5年」のどちらが正しいかを文脈で判断する必要があります。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 労働者名簿・賃金台帳は、たとえ1人でも労働者を使用する事業場で作成義務があります。就業規則の作成義務(10人以上)と混同させる誤りが典型的な引っかけです。両者は異なる義務であることを明確に区別しておく必要があります。
- イ: 賃金台帳の「労働時間数の区分(法定内・時間外・休日・深夜)」の記載は、割増賃金の計算根拠を明確にするために重要です。一方、本肢が誤りなのは「住所」を必須記載事項に含めた点で、住所は労働者名簿の記載事項であり賃金台帳の法定記載事項ではありません。労働者名簿(氏名・生年月日・性別・住所・履歴・業務の種類・雇入年月日・退職/死亡年月日と事由)と賃金台帳の記載事項を取り違えさせる典型的な引っかけです。
- ウ: 旧法(改正前)では「退職・死亡後3年」でしたが、2020年4月施行改正で「5年(当分3年)」に延長されました。試験では「3年間」と「5年間(当分3年)」の両方が選択肢に登場するため、改正の有無を意識した回答が必要です。
- エ: 賃金台帳の起算点は「最後の記入の日から」とされることが多いですが、賃金支払い日・最後の記入日のいずれが起算点かは解釈により異なる場合があります。実務では「最後の賃金の支払い日から」と解釈するのが一般的です。
- オ: 「5年間(当分の間3年間)」という経過措置は、改正法附則において「施行後5年間」の見直しが明記されており、将来的に5年保存が完全施行されます。試験では「当分の間3年間」という表現の正確さが問われるため、正確な文言での暗記が重要です。
【根拠法令】労働基準法 第107条(労働者名簿)・第108条(賃金台帳)・第109条(書類の保存:5年間・当分の間3年間)・第115条(時効:未払い賃金等は5年・当分3年)・第120条(罰則:30万円以下罰金)
【補足】労働者名簿・賃金台帳は規模問わず全事業場で作成義務あり。保存期間は5年(当分3年)。健康診断個人票も5年。就業規則の作成義務(10人以上)と混同しないこと。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働基準法(労基法)第107条(労働者名簿)・第108条(賃金台帳)・第109条(書類の保存:5年間、当分の間は3年間の経過措置)。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。