衛生管理者 関係法令(有害業務以外) 問75:労働基準法
年少者の就業に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア使用者は、満18歳未満の年少者を坑内で労働させてはならないが、この禁止は業務内容を問わず適用される絶対的なものではなく、保護者の同意があれば認められる。
- イ使用者は、年齢を証明する戸籍証明書を、年少者が就業する事業場に備え付けなければならない。正答
- ウ満15歳に達した日以後の最初の3月31日を経過していない者(15歳の年度末前)は、「児童」として原則として工業・農業・商業を問わず就業させることができない。
- エ満16歳以上の男性年少者は、坑内での業務に従事させることができる。
- オ使用者は、満18歳未満の年少者の就業については、その保護者の書面による同意を必ず得なければならない。
AI解説(初心者・標準・上級)
理解度に合わせて3レベルの解説を無料で読めます。根拠法令も明記。
正しいのはイです。労基法第57条第1項により、使用者は満18歳未満の年少者が就業する事業場に、年齢を証明する戸籍証明書を備え付けなければなりません。これは年齢確認の証拠を事業場に保持しておく義務です。
各誤り: ア→年少者の坑内業務禁止(労基法第63条)は絶対的禁止であり、保護者の同意があっても認められません。ウ→労基法第56条第2項には例外があり、非工業的事業の軽易な業務は行政官庁の許可で満13歳以上を修学時間外に使用でき、映画製作・演劇の事業は満13歳未満も使用できます。ウの「工業・農業・商業を問わず(例外なく)就業させることができない」という記述はこの例外を無視しており誤りです。エ→年少者(18歳未満)は年齢・性別を問わず坑内業務禁止です。オ→保護者の書面同意は就業の「法的義務要件」ではありません(未成年者の労働契約締結において親権者の代理は禁止されますが、親権者の同意は別論点です)。
年少者の就業制限(労基法第56条〜第64条)の全体像:
各選択肢の正誤と根拠:
- ア(誤): 労基法第63条は「使用者は、満18歳に満たない者を坑内で労働させてはならない」と定めており、業務内容・保護者の同意を問わず絶対的禁止です。坑内労働は粉じん・崩落・ガス等の高危険業務のため例外なく禁止されています。
- イ(正): 労基法第57条第1項により、満18歳未満の者を使用する場合は「年齢を証明する戸籍証明書」を事業場に備え付けなければなりません。虚偽申告による年少者の不法就労を防止するための書面管理義務です。
- ウ(誤): 「最低年齢」は労基法第56条が定めており、「義務教育終了前(15歳の年度末未経過者)」の就業は原則禁止です。ただし第56条第2項の例外として、非工業的事業の軽易・健康福祉に有害でない業務は所轄監督署長の許可で満13歳以上を修学時間外に使用でき、映画製作・演劇の事業は満13歳未満も使用できます。ウの「工業・農業・商業を問わず(例外なく)就業させることができない」という全業種絶対禁止の表現は、この例外の存在を無視しており誤りです。
- エ(誤): 坑内業務禁止(労基法第63条)は「満18歳に満たない者」全員に適用され、男女・年齢(16歳以上でも)を問いません。「16歳以上の男性は可」という記述は誤りです。
- オ(誤): 満18歳未満の者の就業に「保護者の書面同意を必ず得なければならない」という法律上の義務規定はありません。未成年者の労働契約については労基法第58条で「親権者・後見人の代理締結禁止」が定められていますが、就業ごとの保護者書面同意義務とは異なります。
【理論的背景】
年少者保護規定(労基法第6章:第56条〜第64条)は、心身の発達途上にある若年者を過重な労働・危険な業務から保護するために設けられています。国際労働機関(ILO)の最低年齢条約(138号条約)も参照しながら、日本では「義務教育終了(15歳の年度末経過)」を基本的な就業解禁の基準としています。
坑内業務禁止(労基法第63条)は「年少者だけでなく妊産婦・産後1年未満女性(第64条の2)」にも適用される特別厳格な規制です。坑内の物理的危険(崩落・粉じん・有毒ガス等)は年齢・健康状態を問わず深刻なリスクをもたらすため、完全禁止が維持されています。
【実務・条文構造】
年少者の就業に関する主要規定:
最低年齢(労基法第56条):
- 原則: 満15歳に達した日以後の最初の3月31日が終了するまで(義務教育終了前)は就業禁止(第56条第1項)
- 例外①(第56条第2項本文): 非工業的事業(別表第1第1号〜第5号以外)の職業で、児童の健康・福祉に有害でなく労働が軽易なものは、所轄労働基準監督署長の許可を受けて満13歳以上の児童を修学時間外に使用できる
- 例外②(第56条第2項ただし書): 映画の製作または演劇の事業については、満13歳未満の児童も同様の条件で使用できる
年齢証明書の備付義務(労基法第57条):
- 満18歳未満の者を使用する事業場に、年齢を証明する戸籍証明書を備え付けなければならない
- 目的: 年齢の虚偽申告による違法就業の防止
禁止業務一覧(労基法第62条〜第64条):
| 規定 | 禁止対象 | 禁止内容 |
|-----|--------|--------|
| 第62条 | 18歳未満 | 重量物取扱い・有害ガス暴露等の危険有害業務 |
| 第63条 | 18歳未満 | 坑内業務(絶対禁止・例外なし) |
| 第64条の2 | 妊産婦・産後1年未満女性 | 坑内業務(絶対禁止) |
深夜業禁止(労基法第61条):
- 満18歳未満は午後10時〜午前5時の深夜業禁止(原則)
- 例外: ①所轄監督署長の許可(交代制で業務上やむを得ない場合)、②演劇・映画業の児童の場合
未成年者の労働契約(労基法第58条):
- 親権者・後見人による「代理」での労働契約締結は禁止
- 親権者・後見人または行政官庁は、「未成年者に不利な労働契約」を解除できる(第58条第2項)
- 賃金の受取: 未成年者本人が直接受け取る権利(第59条)
【試験での位置づけ】
年少者の就業制限では「坑内業務の絶対禁止(18歳未満・例外なし)」「戸籍証明書の備付義務」「深夜業禁止(18歳未満・例外あり)」「親権者の代理禁止」が頻出です。「男性16歳以上は坑内可」「保護者の同意で例外可」という誤り選択肢パターンに注意が必要です。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 坑内業務絶対禁止の厳格性は、坑内の物理的環境(酸欠・ガス・粉じん・崩落等)が年齢を問わず深刻な危険を持つことに基づきます。「保護者の同意があれば」という例外を認めると、経済的理由による家庭内強制就労のリスクがあるため絶対禁止が維持されています。
- イ: 戸籍証明書の備付義務は「年齢の事後証明」のための書面管理です。採用時に年齢確認だけでなく「事業場に書面を備え付け続ける」義務がある点が重要です。電子化対応の議論もありますが、現行法は「戸籍証明書」という書面を求めています。
- ウ: 「義務教育終了前」という基準の例外(映画・演劇業への児童出演等)は、芸能分野での慣行を考慮したものです。ただし所轄監督署長の許可・保護者の同意・健康教育の確保等の条件が課されます。
- エ: 旧法(戦前)では「男性16歳以上は坑内業務可」という規定がありましたが、労基法制定(1947年)で全面禁止に改められました。この歴史的経緯を知ることで「男性年少者は可」という誤り選択肢の出典が理解できます。
- オ: 未成年者の労働契約は「未成年者本人が締結する(ただし親権者の同意を得ることが民法上の要件)」です。「保護者の書面同意を必ず得なければならない」という労基法上の義務規定はなく、民法の親権者同意(民法第5条)との混同が誤りの原因です。
【根拠法令】労働基準法 第56条(最低年齢)・第57条第1項(年齢証明書の備付義務)・第58条(未成年者の労働契約・親権者の代理禁止)・第63条(坑内業務の絶対禁止・18歳未満)・第61条(年少者の深夜業禁止)
【補足】満18歳未満の坑内業務は絶対禁止(保護者同意・年齢・性別の例外なし)。戸籍証明書を事業場に備え付ける義務あり。親権者による代理契約は禁止。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働基準法(労基法)第56条(最低年齢)・第57条(年齢証明書)・第58条(未成年者の労働契約)・第63条(坑内業務禁止)・第62条(危険有害業務禁止)。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。