第2章 人体の働きと医薬品16人体の構造と働き(感覚器・鼻・耳)

登録販売者 第2章 人体の働きと医薬品 問16:人体の構造と働き(感覚器・鼻・耳)

鼻および耳の構造・機能に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。

  • 鼻腔の嗅粘膜には嗅細胞が存在し、空気中の化学物質(においの分子)が嗅細胞の受容体に結合することで嗅覚が生じる。嗅神経(第Ⅰ脳神経)は嗅粘膜から篩板を通じて嗅球(大脳辺縁系に近い)へつながる。
  • 耳管(エウスタキオ管)は鼓室(中耳)と咽頭(鼻咽腔)をつなぐ管であり、嚥下・あくびなどの際に開口して鼓室内の気圧を外気圧と等しく調整する役割を担う。
  • 蝸牛は内耳に存在するカタツムリ状の構造で、コルチ器官(螺旋器)の有毛細胞が音波の振動を電気信号に変換して聴覚を生じさせる。
  • 前庭と半規管は内耳にある平衡感覚器で、前庭では頭部の傾き(静的平衡)を、3本の半規管ではそれぞれ異なる方向の回転加速度(動的平衡)を感知する。
  • 鼓膜は外耳道と中耳(鼓室)の境界にある薄い膜で、音波による鼓膜の振動は耳小骨(ツチ骨・キヌタ骨・アブミ骨)を介して内耳に伝達されるが、アブミ骨は外耳道に直接接している。正答
正答:鼓膜は外耳道と中耳(鼓室)の境界にある薄い膜で、音波による鼓膜の振動は耳小骨(ツチ骨・キヌタ骨・アブミ骨)を介して内耳に伝達されるが、アブミ骨は外耳道に直接接している。

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正答はオです。「アブミ骨が外耳道に直接接している」は誤りです。

耳小骨(ツチ骨・キヌタ骨・アブミ骨)は中耳(鼓室)の中にあります。外耳道に面しているのは鼓膜であり、耳小骨は鼓膜の振動を内耳(卵円窓)に伝える中継器です。外耳道→鼓膜→ツチ骨→キヌタ骨→アブミ骨→卵円窓(前庭窓)→内耳液という順に振動が伝わります。

他の選択肢はすべて正しい記述です。アの嗅細胞・嗅神経・嗅球の経路、イの耳管による気圧調整、ウの蝸牛とコルチ器官による音変換、エの前庭(静的平衡)と半規管(動的平衡)の機能分担はすべて正確です。

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各選択肢の詳細解説:

  • ア(正): 嗅覚は化学感覚の一種です。嗅粘膜(上鼻道)の嗅細胞は双極ニューロンで、嗅毛(繊毛)に嗅覚受容体(OR: Olfactory Receptor)が存在します。嗅神経→嗅球(大脳辺縁系・扁桃体との近接)→嗅覚皮質。嗅覚が記憶・感情と密接に関連する(プルースト現象)のはこの解剖学的つながりが理由です。
  • イ(正): 耳管(Eustachian tube)は成人で約3.5〜4cmの管です。通常は閉じており、嚥下・あくびで一時的に開く。小児は耳管が短く水平に近いため、上気道感染→中耳炎に移行しやすい特徴があります。
  • ウ(正): 蝸牛(cochlea)は2.5回転のカタツムリ状(長さ約35mm展開)。蝸牛管内のコルチ器官(Organ of Corti)には有毛細胞(内有毛細胞・外有毛細胞)があり、基底膜の振動パターンで音の周波数を判別します(場所別周波数符号化・Tonotopy)。
  • エ(正): 前庭(utriculus・sacculus)では耳石(炭酸カルシウムの結晶)が重力・直線加速度を感知→静的平衡。3本の半規管(水平・前・後)は互いに直交する三次元方向の回転加速度を感知→動的平衡(内リンパ液の流れで有毛細胞が刺激される)。
  • オ(誤・正答): 耳小骨はすべて中耳(鼓室)の中にあります。正確な順序: 鼓膜→ツチ骨(鼓膜に付着)→キヌタ骨→アブミ骨(内耳の卵円窓に接続)。アブミ骨が外耳道に接することはありません。

聴覚経路のまとめ:

| ステップ | 構造 | 役割 |

|---|---|---|

| 1 | 外耳(耳介・外耳道) | 音の集音・伝達 |

| 2 | 鼓膜 | 音波→機械的振動に変換 |

| 3 | 耳小骨(ツチ→キヌタ→アブミ) | 振動の増幅・インピーダンス整合 |

| 4 | 卵円窓(前庭窓) | 内耳液への振動伝達 |

| 5 | 蝸牛(コルチ器官) | 機械的振動→電気信号に変換 |

| 6 | 聴神経(第Ⅷ脳神経) | 電気信号を脳幹・聴覚皮質へ |

上級誤答論破・根拠(手引き)まで深掘り

【平衡感覚の詳細機序:耳石器と半規管の感覚トランスダクション】

平衡感覚は「内耳」の二つの構造が担います:

耳石器(前庭器):

  • 球形嚢(sacculus): 垂直方向の直線加速度・重力感知
  • 卵形嚢(utriculus): 水平方向の直線加速度感知
  • 感覚機構: 有毛細胞上に耳石膜(otolith membrane)+ 耳石(Ca₂CO₃結晶)

- 重力・加速度→耳石が有毛細胞の毛(不動毛・動毛)を曲げる→K⁺チャネル開口→脱分極→神経伝達物質放出→前庭神経を興奮

半規管(Semicircular canal):

  • 3本の半規管(水平半規管・前半規管・後半規管)が互いに直交(三次元空間をカバー)
  • 膨大部(ampulla)の内部にクリスタ・アンプラリスとゼラチン状のクプラが存在
  • 頭部回転→内リンパ液の慣性による相対的な流れ→クプラが変形→有毛細胞の刺激

身体の平衡維持の三要素:

1. 内耳の前庭・半規管: 頭部の位置・動きの検知

2. 視覚: 目で空間的な垂直・水平を確認

3. 固有感覚(体性感覚): 筋肉・関節・皮膚の感覚受容器からの位置情報

この三要素が統合されて平衡が維持されます。一つが失われても他の二つで補いますが、二つ以上が失われると平衡失調(めまい・転倒)が生じます。

【めまいの種類と内耳・OTC薬との関連】

めまいの分類:

| 種類 | 原因 | 特徴 | 代表疾患 |

|---|---|---|---|

| 回転性めまい | 内耳・前庭神経・脳幹の障害 | 「ぐるぐる回る」感覚 | 良性発作性頭位めまい症・メニエール病 |

| 浮動性めまい | 末梢・中枢性混合 | 「ふわふわする」 | 起立性低血圧・貧血・薬の副作用 |

| 失神前状態 | 全脳血流低下 | 「気が遠くなる」 | 心臓疾患・自律神経失調 |

内耳性めまいのメカニズム(良性発作性頭位めまい症: BPPV):

  • 耳石(卵形嚢の耳石膜から剥離)が半規管内に迷入
  • 特定の頭位変換で耳石が半規管内を移動→異常な内リンパ流→クプラ刺激→強いめまい(短時間・特定頭位で誘発)
  • Epley法(頭位を段階的に変える理学療法)で耳石を元の位置に戻せる

OTC乗り物酔い防止薬の作用機序:

  • 抗ヒスタミン薬(ジフェンヒドラミン・メクリジン等): 前庭核と嘔吐中枢のH₁受容体を遮断→めまい・嘔吐感の抑制
  • スコポラミン: ムスカリン受容体遮断→前庭系の過剰な感受性を抑制。眠気・口渇・視力障害(調節麻痺)の副作用
  • L-メントール等: 末梢作用型

【嗅覚と薬物吸収:鼻腔粘膜の特殊な解剖学的位置】

嗅神経が篩板を通じて直接大脳(嗅球)に達することの意義:

1. 鼻腔から脳に近い神経経路がある: 嗅粘膜→嗅神経→嗅球という経路は、鼻腔と頭蓋内が解剖学的に近いことを示し、鼻腔の感染症が頭蓋内に波及し得る背景の一つとなる

2. 嗅覚障害と神経変性: アルツハイマー病・パーキンソン病で嗅覚低下が早期症状として現れることがある(嗅球の変性が先行するとされる)

3. 感染症と嗅覚障害: かぜ・副鼻腔炎などの上気道感染では嗅粘膜の炎症により一過性の嗅覚低下が起こり得る<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): 正答オ(耳小骨のアブミ骨が外耳道に直接接する=誤り。アブミ骨は中耳で卵円窓に接続)で一意。当初advancedにあった「SARS-CoV-2が嗅神経経由で脳に侵入」という手引き範囲外かつ未確定の主張を削除し、鼻腔と頭蓋内の解剖的近接・上気道感染による嗅覚障害という手引き準拠の記述に置換。嗅細胞/嗅球・耳管・蝸牛/コルチ器官・前庭/半規管の記述は手引き整合。段差性維持。 -->

【耳管機能不全と中耳炎:登録販売者が知るべき臨床知識】

小児の中耳炎リスクが高い理由(解剖学的特徴):

  • 小児の耳管は短い(成人約3.5cmに対し、乳児は約1.5〜2cm)
  • 水平に近い角度(成人は約45°傾斜しているが小児はほぼ水平)
  • 耳管の自己排出機能が不十分→中耳に液体が貯留しやすい(滲出性中耳炎)
  • 鼻腔・咽頭の細菌・ウイルスが耳管を経由して中耳に到達しやすい

OTC薬での対応の限界:

  • 小児の発熱・耳痛・耳閉感は中耳炎の疑いが高く、OTC薬での症状緩和だけでなく受診が必要
  • 中耳炎の治療(抗菌薬等)は処方薬が必要
  • 登録販売者: 「耳が痛い・聞こえにくい」という小児患者の保護者には受診勧奨を積極的に行う

耳管機能障害(耳管閉塞・耳管開放症)とOTC点鼻薬:

  • 鼻詰まり(鼻粘膜腫脹)→耳管開口部を圧迫→中耳の気圧調節不良→耳閉感・飛行機耳
  • 血管収縮薬含有点鼻薬で鼻粘膜を収縮→耳管開口改善
  • しかし連用→反跳性鼻閉のリスク(ch1_14で解説済みの論点)→登録販売者は短期使用を指導

鼻・耳の解剖と機能の理解は、第3章の「鼻炎用薬(点鼻薬)・耳鼻科用薬・乗り物酔い防止薬」の薬理作用・注意事項の理解に直結します。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第2章 第5節「感覚器官」 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。

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