登録販売者 第2章 人体の働きと医薬品 問22:人体の働きと医薬品(電解質・体液・腎臓)
電解質・体液の調節に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア体液は細胞内液と細胞外液(血漿・組織液)に分けられ、成人の体重の約60%が水分で占められており、細胞内液が約2/3(体重の40%)、細胞外液が約1/3(体重の20%)を占める。
- イナトリウムイオン(Na+)は主に細胞外液に多く分布し、細胞外液の浸透圧調節・血圧維持に重要な役割を担っている。
- ウカリウムイオン(K+)は主に細胞内液に多く分布し、神経・筋肉の興奮伝導に関与しており、血中カリウム値の異常は心臓のリズム障害(不整脈)につながることがある。
- エ腎臓は体液の量・電解質バランス・pHを調節する主要な臓器であり、糸球体での濾過と尿細管での再吸収・分泌を通じてナトリウム・カリウム等の電解質を精密に調節している。
- オアルドステロン(鉱質コルチコイド)はナトリウムの再吸収を抑制し、カリウムの再吸収を促進する働きを持つため、アルドステロンが過剰になるとむくみ・高血圧が生じる。正答
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正答はオです。
アルドステロン(鉱質コルチコイド)の働きが逆になっています。アルドステロンは腎臓の尿細管に作用して「ナトリウムの再吸収を促進し、カリウムの排泄を促進(≒カリウムの再吸収を抑制)」します。その結果、ナトリウムと水が体内に貯留してむくみ・高血圧が生じます。
「偽アルドステロン症」とはこのアルドステロン過剰状態と同様の症状(むくみ・高血圧・低カリウム血症)が医薬品成分(グリチルリチン酸など)によって引き起こされる副作用のことで、登録販売者試験の頻出論点です。
ナトリウムは細胞外液に多く(ア・イ正)、カリウムは細胞内液に多く(ウ正)、腎臓が電解質調節の主役(エ正)です。
電解質の体内分布の整理:
| 電解質 | 主な分布 | 主な役割 |
|---|---|---|
| Na+ | 細胞外液 | 浸透圧調節・血圧維持・神経伝導 |
| K+ | 細胞内液 | 筋肉収縮・神経興奮・心拍リズム調節 |
| Ca2+ | 骨・細胞外液 | 骨形成・筋収縮・血液凝固・細胞シグナル |
| Cl- | 細胞外液 | Na+と共に浸透圧調節 |
| HCO3- | 血漿・細胞内 | 酸塩基平衡(緩衝作用) |
各選択肢の解説:
- ア(正): 体液区分は登録販売者試験の基本知識。成人体重の約60%が水分(体重50kgなら30L)。細胞内液:細胞外液 = 2:1(体重の40%:20%)の比率。
- イ(正): Na+の正常血中濃度は135〜145 mEq/L(主に細胞外液)。Na+と水は常に一緒に動くため、Na+過剰では浸透圧上昇→水の保持→むくみ・血圧上昇につながります。
- ウ(正): K+の正常血中濃度は3.5〜5.0 mEq/L(低すぎると低カリウム血症・高すぎると高カリウム血症で不整脈のリスク)。K+は心筋の静止膜電位の形成に関わります。
- エ(正): 腎臓の糸球体では血液が濾過され(原尿)、尿細管で再吸収と分泌が起こります。ナトリウムは約99%が再吸収されます。この精密な電解質調節が体液の恒常性を維持しています。
- オ(誤・正答): アルドステロンは「Na+再吸収促進・K+排泄促進」です。選択肢オはNa+の再吸収を「抑制」、K+の再吸収を「促進」と逆に記述しています。アルドステロン過剰(原発性アルドステロン症等)ではNa+と水の蓄積でむくみ・高血圧が起こり、K+排泄増加で低カリウム血症が生じます。この機序は「偽アルドステロン症」の理解にも直結します。
【電解質・体液調節の恒常性メカニズムと偽アルドステロン症への接続】
レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAAS)の詳細:
体液・血圧調節はRAASという精密なシステムで制御されています:
1. 血圧低下・血液量減少 → 腎臓の傍糸球体細胞がレニンを分泌
2. レニン → 肝臓由来アンジオテンシノーゲンをアンジオテンシンIに変換
3. アンジオテンシンI → 肺のACE(アンジオテンシン変換酵素)でアンジオテンシンIIに変換
4. アンジオテンシンII → 副腎皮質を刺激してアルドステロンを分泌
5. アルドステロン → 腎臓遠位尿細管・集合管でNa+再吸収促進・K+排泄促進
6. Na+と水の体内貯留 → 血圧上昇・血液量回復
アルドステロンの細胞レベルでの作用機序:
アルドステロンは鉱質コルチコイドの一種で、細胞内の鉱質コルチコイド受容体(MR)に結合して核内転写因子として機能します:
- Na+チャネル(ENaC: Epithelial Na Channel)の発現増加 → 管腔側からのNa+取り込み増加
- Na+/K+-ATPaseの発現増加 → 基底側へのNa+汲み出し・K+取り込み増加
- → 管腔側へのK+分泌増加(K+排泄促進)
偽アルドステロン症(Pseudohyperaldosteronism)の機序:
グリチルリチン酸(甘草由来)などの成分が、11β-水酸化ステロイド脱水素酵素2型(11β-HSD2)を阻害することで起こります:
通常:
- コルチゾール(糖質コルチコイド)は11β-HSD2によって不活性型(コルチゾン)に変換され、MRに結合しない
グリチルリチン酸存在下:
- 11β-HSD2が阻害される → コルチゾールが活性型のまま残存 → コルチゾールがMRに結合 → アルドステロン様作用(Na+貯留・K+排泄)
この結果として:
- むくみ(浮腫): Na+と水の貯留
- 高血圧: 血液量増加
- 低カリウム血症: K+の過剰排泄 → 筋力低下・こむらがえり・倦怠感
- 血清カリウム値の低下(3.5 mEq/L未満)
偽アルドステロン症の初期症状(手引き準拠・受診勧奨の目印): 手足のだるさ、しびれ、つっぱり感、こわばりが初期に現れ、進行すると脱力感、筋肉痛、こむら返り、力が入りにくい等が生じます。これらは登録販売者が早期に気づくべき重要なサインです。<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): 厚労省「重篤副作用疾患別対応マニュアル 偽アルドステロン症」及び手引き記載の初期症状(手足のだるさ・しびれ・つっぱり感・こわばり)を追記。正答オ(アルドステロンのNa+再吸収抑制・K+再吸収促進=逆=誤)は一意で適切。正しくはNa+再吸収促進・K+排泄促進。ア(体液区分60%/40%/20%)・イ・ウ・エの記述も正確 -->
電解質異常と臓器別影響:
| 異常 | 症状・臓器影響 | 代表的な原因薬 |
|---|---|---|
| 低Na血症 | 倦怠感・頭痛・意識障害・嘔吐 | 利尿薬(処方薬)・過剰な水分摂取 |
| 高Na血症 | 口渇・高熱・意識障害 | 水分摂取不足・尿崩症 |
| 低K血症 | 筋力低下・こむらがえり・不整脈 | グリチルリチン酸・利尿薬 |
| 高K血症 | 不整脈(危険)・脱力 | ACE阻害薬・NSAIDs(腎機能低下時) |
登録販売者の観点からの重要ポイント:
1. グリチルリチン酸含有製品の使用上の注意: カンゾウ(甘草)を含む漢方薬・グリチルリチン酸を含む胃腸薬・かぜ薬は複数使用で1日摂取量が過大になるリスクがあります。「高血圧の方・心臓病の方・腎臓病の方」への販売では特に注意が必要です
2. むくみ・だるさが続く場合: 偽アルドステロン症の初期症状の可能性があり、グリチルリチン酸含有製品の服用歴の確認と受診勧奨が必要です
3. 電解質補給飲料との関係: 激しい運動・発汗時の過剰な水分(電解質ゼロ)摂取は低Na血症を引き起こす可能性があります。電解質補給の必要性について問い合わせがある場合に適切に対応できることが重要です
体液・電解質調節の理解は、第3章の成分(グリチルリチン酸・カンゾウ含有漢方)の副作用「偽アルドステロン症」を深く理解するための基盤です。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第2章 第2節「循環器系」・第3節「泌尿器系」 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。