登録販売者 第2章 人体の働きと医薬品 問26:人体の働きと医薬品(循環器・心臓・血圧・動悸)
循環器系の有害事象および心臓・血圧に影響する成分に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- アアドレナリン作動成分(メチルエフェドリン・プソイドエフェドリン等)は交感神経を刺激し、心拍数の増加・血圧の上昇をもたらすことがあるため、心臓病・高血圧の方への販売には注意が必要である。
- イカフェインは中枢神経刺激・強心作用を持ち、過剰摂取では動悸・不整脈が生じることがある。
- ウ抗ヒスタミン薬(ジフェンヒドラミン等)は抗コリン作用を持ち、心拍数を抑制する(徐脈を起こす)方向に作用するため、心臓病・不整脈の方には禁忌とされている。正答
- エセンソ(ヒキガエル科の分泌物由来の生薬)は強心作用を持つが、過剰摂取では毒性(嘔吐・不整脈等)が現れることがあり、1日用量中のセンソ含有量に制限がある。
- オ心臓病・高血圧・甲状腺機能亢進症の患者はアドレナリン作動成分を含む医薬品(かぜ薬・鼻炎用点鼻薬等)の使用に際して、特に慎重な対応(受診勧奨・医師への相談)が必要である。
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正答はウです。
抗ヒスタミン薬(ジフェンヒドラミン等)は抗コリン作用を持ちますが、この抗コリン作用は「副交感神経の抑制」を意味します。副交感神経は心拍数を「抑制(遅くする)」方向に働くため、それを抑制(ブロック)する抗コリン作用は「心拍数を増加させる(頻脈)」方向に作用します。「心拍数を抑制する(徐脈)」という記述は逆です。
なお、心臓病・不整脈の患者への抗ヒスタミン薬の使用に注意が必要であることは事実ですが、理由は「頻脈の悪化リスク(徐脈ではない)」です。
アドレナリン作動成分が血圧上昇・動悸を起こすこと(ア正)、カフェインの過剰摂取で動悸・不整脈(イ正)、センソの過剰摂取での毒性(エ正)はすべて正しい記述です。
自律神経と心臓・血圧への作用の整理:
| 系 | 心拍数 | 血圧 | 心拍出量 |
|---|---|---|---|
| 交感神経刺激 | 増加(頻脈) | 上昇 | 増加 |
| 副交感神経刺激 | 減少(徐脈) | 低下 | 減少 |
| 抗コリン作用(副交感遮断) | 増加(頻脈) | (上昇傾向) | 増加傾向 |
各選択肢の解説:
- ア(正): アドレナリン作動成分はβ1受容体刺激で心拍数増加・心収縮力増大→血圧上昇。α1受容体刺激で末梢血管収縮→血圧上昇。心臓病・高血圧・甲状腺機能亢進症・糖尿病の方はリスクが高く、添付文書の「相談すること」欄に記載されています。
- イ(正): カフェインはアデノシン受容体拮抗・PDE阻害・交感神経刺激増強等の作用を持ちます。過剰摂取では動悸・不眠・不整脈・血圧上昇が生じることがあります。複数のカフェイン含有製品(眠気防止薬・かぜ薬・鎮痛薬)の同時使用による重複摂取には注意が必要です(手引きは具体的なmg上限ではなく重複使用回避・短期使用を求めています)。
- ウ(誤・正答): 抗ヒスタミン薬の抗コリン作用は「副交感神経の遮断」です。副交感神経は心拍数を遅くする働きを持ち、その遮断(抗コリン)は心拍数を「増加(頻脈)」させます。「徐脈を起こす」という記述は完全に誤りです。不整脈患者への注意は必要ですが、理由は「頻脈・不整脈の悪化」であり、徐脈の悪化ではありません。
- エ(正): センソ(ヒキガエルの皮膚腺・耳腺の分泌物を乾燥させた生薬)はブファジエノライド系の強心配糖体様成分を含み、強心作用がありますが治療域が狭く、過剰摂取で嘔吐・不整脈等の毒性が現れます。1日用量は5mg以下と規定されています。
- オ(正): アドレナリン作動成分は心臓病・高血圧・甲状腺機能亢進症(甲状腺ホルモンが交感神経感受性を高める)・前立腺肥大(血圧上昇が排尿障害に影響)の患者では使用に特に注意が必要です。
【循環器系に影響する医薬品成分の薬理学的詳細と臨床リスク評価】
アドレナリン受容体の種類と各成分の作用プロファイル:
| 受容体 | 主な分布 | 刺激の効果 |
|---|---|---|
| α1受容体 | 末梢血管・膀胱括約筋 | 血管収縮・血圧上昇・排尿困難 |
| α2受容体 | 中枢・シナプス前 | ノルエピネフリン放出抑制 |
| β1受容体 | 心臓 | 心拍数増加・心収縮力増強 |
| β2受容体 | 気管支・血管 | 気管支拡張・血管拡張 |
OTC医薬品に含まれるアドレナリン作動成分のプロファイル:
| 成分 | 主な受容体作用 | 用途 | 心臓への影響 |
|---|---|---|---|
| メチルエフェドリン | α+β両方 | 咳止め(気管支拡張) | 心拍数増加・血圧上昇 |
| プソイドエフェドリン | α+β(αやや弱) | 鼻閉改善 | 心拍数増加・血圧上昇 |
| フェニレフリン | α主体 | 鼻閉改善・点眼(散瞳) | 末梢血管収縮・血圧上昇(心拍数は反射的に低下も) |
| ナファゾリン | α作動(点鼻用) | 鼻閉改善 | 全身吸収では血圧上昇リスク |
カフェインの薬理メカニズム詳細:
カフェインの主な作用機序:
1. アデノシン受容体拮抗: アデノシン(疲労・眠気・心拍数抑制のシグナル)の受容体(A1・A2A)をブロック → 覚醒・心拍数増加
2. PDE(ホスホジエステラーゼ)阻害: cAMP・cGMPの分解を抑制 → アドレナリン様作用の増強
3. カルシウム放出増強: 筋小胞体からのCa²+放出促進 → 心収縮力増強
カフェインの過剰摂取リスクが高い場面:
- かぜ薬・頭痛薬・眠気防止薬を同時使用(重複摂取)
- エナジードリンクとの同時摂取(市販薬のカフェイン + エナジードリンクのカフェイン)
- 妊婦・授乳婦(カフェインは胎盤通過・母乳移行)
なお、手引き(令和8年4月版)はカフェインの1日摂取上限を具体的な数値(mg)で定めてはいません。手引きが注意喚起しているのは「カフェインを含む複数の医薬品(眠気防止薬・かぜ薬・解熱鎮痛薬等)の同時使用による過量摂取」と「眠気防止薬を一時的・短期的な使用にとどめること(連用を避ける)」です。特定のmg数(例:1日◯◯mgまで)を断定して説明するのではなく、「カフェイン含有製品の重複使用を避ける」「眠気防止薬は短期使用にとどめる」という手引き準拠の指導が適切です。
<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): カフェインの1日摂取上限について検証。手引き令和8年4月版には具体的なmg上限の記載なし(手引きが扱うのは「複数のカフェイン含有医薬品の重複使用回避」「眠気防止薬の短期使用」)。本文中の「1日600mg超が目安」という断定的なmg数を手引き準拠表現に整理し、検証不能な数値断定を排除した。 -->
抗コリン作用と循環器系への影響(詳細):
ムスカリン性アセチルコリン受容体(M受容体)の種類と心臓への作用:
- M2受容体(心臓の洞房結節・房室結節): 副交感神経(迷走神経)の刺激 → K+チャネル開口 → 過分極 → 心拍数低下(陰性変時作用)
- 抗コリン薬(M受容体遮断): M2受容体ブロック → 副交感神経の抑制が解除されず → 実際は交感神経の相対的優位 → 心拍数増加(頻脈)
臨床的に問題となる状況:
- 高齢者への抗ヒスタミン薬(ジフェンヒドラミン等): 頻脈・不整脈リスク・認知機能への影響(抗コリン性認知障害)
- 緑内障患者: 眼圧上昇リスク(抗コリン作用で瞳孔散大→隅角閉塞)
- 前立腺肥大患者: 排尿困難悪化(膀胱排尿筋弛緩・括約筋収縮)
心臓への過負荷リスクが高い購入者への実務対応:
登録販売者が循環器リスクを確認すべき症状・疾患の組み合わせ:
1. 心臓病(不整脈・狭心症・心不全等)がある購入者
- アドレナリン作動成分・カフェイン・抗コリン成分の含まれる製品は「相談すること」の記載を確認
- 強心薬(センソ含有等)は専門家への相談を勧める
2. 高血圧のある購入者
- メチルエフェドリン・プソイドエフェドリン・フェニレフリン含有製品は「相談すること」の記載を確認
- 鼻炎用点鼻薬(ナファゾリン等)も全身吸収があれば血圧上昇リスク
3. 甲状腺機能亢進症のある購入者
- 甲状腺ホルモンはβ受容体感受性を増強するため、アドレナリン作動成分で過剰な心臓刺激が生じやすい
4. 自覚症状(動悸・息切れ・胸痛)がある購入者
- 一般用医薬品で対処するより先に医療機関受診を強く勧める
「心臓への影響がある成分を含む製品をお渡しする前に、心臓・血圧・甲状腺のご状態を確認させてください」という一言が、登録販売者の専門性を示す実践の場です。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第2章 第2節「循環器系」・第3章「主な医薬品とその作用」 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。