第2章 人体の働きと医薬品34人体の働きと医薬品(肝臓・薬物代謝)

登録販売者 第2章 人体の働きと医薬品 問34:人体の働きと医薬品(肝臓・薬物代謝)

肝臓における薬物代謝に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。

  • 肝臓における薬物代謝は主にチトクロームP450(CYP)酵素系によって行われ、この酵素系は肝臓の肝細胞(小胞体)に存在する。
  • 薬物代謝の第I相反応には酸化・還元・加水分解などが含まれ、これによって薬物が活性を失う(不活性化される)場合も、活性代謝物が生成される場合もある。
  • 第II相反応であるグルクロン酸抱合は、薬物やその代謝物にグルクロン酸を結合させて水溶性を高め、胆汁・尿中への排泄を促進する。
  • グルクロン酸抱合によって生じた抱合体は、胆汁として十二指腸に排出された後、腸内細菌によって加水分解されて元の活性成分が再生されることがある(腸肝循環)。
  • 肝臓のCYP酵素は薬物によって誘導(活性促進)されることはなく、阻害(活性低下)だけが起こる。正答
正答:肝臓のCYP酵素は薬物によって誘導(活性促進)されることはなく、阻害(活性低下)だけが起こる。

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正答はオです。

肝臓のCYP酵素は「誘導(活性促進)」も「阻害(活性低下)」も両方起こります。「阻害だけが起こる」は誤りです。例えばリファンピシン(抗結核薬)やセントジョーンズワート(ハーブ)はCYP酵素を「誘導」(活性を高める)することが知られており、これにより他の薬物の代謝が速まって血中濃度が低下します。逆に「阻害」があると代謝が遅れて血中濃度が高くなります。どちらも薬物相互作用の原因となります。

肝臓の薬物代謝は第I相(酸化・還元・加水分解)→第II相(抱合:グルクロン酸抱合・硫酸抱合等)という順序で進み、最終的に水溶性が高まって排泄されます。

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薬物代謝の2相:第I相と第II相

| 段階 | 反応の種類 | 主な酵素 | 目的 |

|---|---|---|---|

| 第I相(Phase I) | 酸化・還元・加水分解 | CYP450系(CYP3A4等)、FMO、エステラーゼ等 | 官能基を露出・修飾 |

| 第II相(Phase II) | 抱合(コンジュゲーション) | UGT(グルクロン酸抱合)、SULT(硫酸抱合)等 | 水溶性↑→排泄促進 |

CYP酵素の誘導と阻害(オの誤りの根拠):

| 作用 | 内容 | 相互作用の方向 |

|---|---|---|

| 誘導(Induction) | CYP酵素タンパクの発現量が増加→代謝速度↑ | 他の薬物の血中濃度↓(効果減弱) |

| 阻害(Inhibition) | CYP酵素活性が低下→代謝速度↓ | 他の薬物の血中濃度↑(副作用・過量リスク) |

誘導の代表例: リファンピシン(CYP3A4等)、セントジョーンズワート(CYP3A4・P-gp)、フェニトイン。

阻害の代表例: グレープフルーツ(フラノクマリン→CYP3A4不可逆的阻害)、フルコナゾール(CYP3A4阻害)。

腸肝循環(エの正しい内容):

グルクロン酸抱合体は胆汁中に排出され十二指腸に分泌されます。腸内細菌(β-グルクロニダーゼ)がグルクロン酸を切り離すと、活性成分が再生され小腸から再吸収されます。これが腸肝循環(enterohepatic circulation)であり、薬物の体内での半減期を延長する効果があります。

各選択肢の解説:

  • ア(正): CYP酵素は肝細胞小胞体(ミクロソーム分画)に存在。正しい。
  • イ(正): 第I相では不活性化だけでなく、活性代謝物が生じることもある(プロドラッグ活性化等)。
  • ウ(正): グルクロン酸抱合による水溶性向上・排泄促進は正しい。
  • エ(正): 腸肝循環の記述は正しい。
  • オ(誤・正答): CYP酵素は誘導も阻害も起こる。誘導だけが起きる、阻害だけが起きるという一方的な記述はいずれも誤り。
上級誤答論破・根拠(手引き)まで深掘り

【肝臓の薬物代謝酵素の全体像とOTC医薬品への実務的影響】

CYP酵素系の種類と主な基質:

ヒトで重要なCYPサブタイプと代謝する主な薬物(基質):

| CYPサブタイプ | 代謝する主な基質(例) | 特徴 |

|---|---|---|

| CYP3A4 | ニフェジピン・エリスロマイシン・シクロスポリン・多くのスタチン | 最も多くの薬物を代謝(全体の約50%)。腸管にも存在 |

| CYP2D6 | コデイン・デキストロメトルファン・β遮断薬 | 遺伝的多型(PM/EM/UM型)が有名。OTCに関連多数 |

| CYP2C9 | ワルファリン・NSAIDs(一部)・スルホニルウレア | 遺伝的多型で出血リスク変動 |

| CYP2C19 | プロトンポンプ阻害薬・クロピドグレル | 遺伝的多型(日本人にPMが多い) |

| CYP1A2 | カフェイン・テオフィリン | タバコ(PAH)が誘導。カフェイン関連OTCに関連 |

OTC医薬品に関連する重要なCYP2D6多型:

コデインはCYP2D6によってモルヒネに代謝されます(活性化)。

  • 超高代謝型(UM: Ultra Metabolizer): 通常量で過量のモルヒネが生成→呼吸抑制・乳児への乳汁移行で死亡事例あり(授乳中の母親へのコデイン処方が問題)。
  • 低代謝型(PM: Poor Metabolizer): コデインがモルヒネに変換されない→鎮咳効果が出にくい。

これがコデイン配合OTC鎮咳薬の12歳未満禁忌・授乳中禁忌の薬理的根拠の一部です(令和8年手引き改訂)。

デキストロメトルファン(OTC鎮咳薬に多用)もCYP2D6で代謝されますが、コデインと異なりオピオイド活性を持つ代謝物を生じないため、依存リスクが低いとされています。しかし高用量では解離症状(幻覚・興奮)が生じる可能性があり、乱用される場合があります(CYP2D6との関係)。

第II相反応の代謝物の多様性:

第II相(抱合)反応は「毒性のある化合物を無毒化する」だけでなく、複雑な影響を持ちます:

1. グルクロン酸抱合(UGT: UDP-glucuronosyltransferase): 最も主要な抱合反応。胆汁排泄が多く腸肝循環に関与。ビリルビン(赤血球破壊で生じるヘム分解物)の排泄もUGTが担当→UGT欠損はジルベール症候群・クリグラー・ナジャール症候群の原因。

2. 硫酸抱合(SULT): グルクロン酸抱合と競合。一部の化合物では硫酸抱合体が活性化される(反応性スルフェート形成→DNA傷害性)。

3. グルタチオン抱合(GST): 反応性の高い求電子中間体を無毒化。アセトアミノフェン過量では肝臓内のグルタチオンが枯渇し、反応性中間体(NAPQI)が肝細胞タンパクと結合→肝細胞壊死(アセトアミノフェン肝障害)。

アセトアミノフェン(OTCに多用)の代謝と安全性:

アセトアミノフェンは:

  • 通常量: 約90%がグルクロン酸抱合・硫酸抱合(無毒→排泄)、約5%がCYP2E1でNAPQIに変換→グルタチオン抱合で無毒化。
  • 過量服用: NAPQI産生過多→グルタチオン枯渇→NAPQIが肝細胞タンパクにアルキル化→肝細胞壊死(急性肝不全の可能性)。
  • 飲酒(CYP2E1誘導): NAPQIがより多く産生→過量リスクが低い用量でも肝障害リスク↑。

これが「アルコール多飲者はアセトアミノフェンに注意」の薬理的根拠であり、添付文書の「相談すること」記載の背景です。

腸肝循環の臨床的意義:

腸肝循環が起こる薬物は半減期が延長します。コレスチラミン(コレステロール低下薬)は胆汁酸の腸肝循環を遮断してコレステロールを低下させる薬ですが、同様にグルクロン酸抱合体を腸で捕捉して腸肝循環を妨げることがあり、一部のOTC製品との相互作用に留意が必要です(ただしOTCでコレスチラミンは販売されていません)。

登録販売者として: 「飲み合わせが心配」という購入者への対応では、「グレープフルーツ・セントジョーンズワート等はCYP酵素に影響する可能性がある」という基本知識が、医師・薬剤師への確認を勧めるための根拠となります。

<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): 設問・正答オ(CYP酵素は誘導も阻害も両方起こるので「阻害だけが起こる」は誤り)は一意性・事実ともOK。第I相(酸化/還元/加水分解)・第II相(グルクロン酸抱合等)・腸肝循環・リファンピシン/SJWによる誘導・グレープフルーツ(CYP3A4阻害)・アセトアミノフェンのNAPQI/グルタチオン枯渇による肝障害・飲酒でのCYP2E1誘導等のYMYL記述は正確。CYP2D6多型とコデイン(令和8年改正で12歳未満禁忌)の記述も正確。修正不要。 -->

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第2章 第1節「消化器系・肝臓」 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。

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