第2章 人体の働きと医薬品14人体の構造と働き(リンパ系・免疫)

登録販売者 第2章 人体の働きと医薬品 問14:人体の構造と働き(リンパ系・免疫)

リンパ系・脾臓と免疫機能に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。

  • リンパ管は組織間液を回収してリンパ液とし、リンパ節を経て最終的に静脈に合流するため、体液(組織液)のバランス維持に寄与している。
  • 脾臓は血液を濾過して老化した赤血球・血小板を破壊するとともに、血液中の異物や細菌を除去するマクロファージが豊富に存在し、免疫機能を担う。
  • リンパ球はB細胞とT細胞の2種類のみからなり、B細胞はすべて抗体を産生する形質細胞に分化し、T細胞はすべてキラーT細胞として直接標的細胞を破壊する。正答
  • マクロファージ(大食細胞)は単球が組織に定着したもので、異物・細菌・死細胞等を貪食するとともに、取り込んだ異物の情報(抗原提示)をT細胞に伝達する役割を担う。
  • リンパ節は全身に分布し、リンパ液に含まれる細菌・ウイルス・がん細胞等をフィルタリングするリンパ球・マクロファージが豊富に存在する免疫器官である。
正答:リンパ球はB細胞とT細胞の2種類のみからなり、B細胞はすべて抗体を産生する形質細胞に分化し、T細胞はすべてキラーT細胞として直接標的細胞を破壊する。

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正答はウです。「B細胞はすべて形質細胞に分化する・T細胞はすべてキラーT細胞になる」という部分が誤りです。

B細胞には形質細胞(抗体産生)だけでなく「記憶B細胞」も生じます。またT細胞にも複数の種類があり、キラーT細胞(細胞傷害性T細胞: CTL)だけでなくヘルパーT細胞(免疫反応の調節)・制御性T細胞(免疫抑制)等があります。「すべて」という断定が誤りです。

他の選択肢はすべて正しい記述です。アのリンパ管による組織液回収と静脈への合流、イの脾臓による赤血球の破壊と免疫機能、エのマクロファージによる貪食と抗原提示、オのリンパ節のフィルタリング機能はすべて正確な記述です。

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各選択肢の詳細解説:

  • ア(正): 毛細血管から滲出した組織液の一部は毛細リンパ管に回収されリンパ液となります。リンパ液は鼠径リンパ節・腋窩リンパ節等を経て、最終的に胸管(左)・右リンパ本幹(右)を通じて鎖骨下静脈(左右)に合流します。リンパ浮腫はこの経路が障害された場合に生じます。
  • イ(正): 脾臓は最大のリンパ器官です。赤脾髄(古い赤血球・血小板の破壊・マクロファージによる貪食)と白脾髄(リンパ球が集積する免疫機能)の二つの機能区画からなります。
  • ウ(誤・正答): リンパ球の種類と分化は以下の通りです。B細胞の分化先: 形質細胞(抗体産生)および記憶B細胞(免疫記憶)。T細胞の種類: キラーT細胞(CD8⁺・標的細胞を直接傷害)・ヘルパーT細胞(CD4⁺・B細胞・CTLを助ける)・制御性T細胞(Treg・免疫反応を抑制)。NK細胞(自然リンパ球・MHC非拘束の細胞傷害)も広義のリンパ球系細胞です。
  • エ(正): マクロファージは「専門的抗原提示細胞(APC)」の一つです。貪食した異物(抗原)をMHCクラスⅡ分子に乗せてCD4⁺T細胞(ヘルパーT細胞)に提示し、免疫応答を開始させます。
  • オ(正): リンパ節は全身に約600〜800個存在します。カプセル状の組織に皮質(B細胞主体の胚中心)・傍皮質(T細胞主体)・髄質(マクロファージ)の区画があります。

免疫系の細胞種まとめ:

| 細胞 | 起源 | 主な機能 |

|---|---|---|

| B細胞 | 骨髄で成熟 | 抗体産生(形質細胞)・免疫記憶 |

| T細胞 | 骨髄→胸腺で成熟 | キラー(細胞傷害)・ヘルパー(調節)・制御 |

| NK細胞 | 骨髄 | MHC非拘束性の自然免疫的細胞傷害 |

| マクロファージ | 骨髄→単球→組織に定着 | 貪食・抗原提示・炎症メディエーター産生 |

| 好中球 | 骨髄(顆粒球系) | 一次防衛・細菌の貪食 |

上級誤答論破・根拠(手引き)まで深掘り

【自然免疫と獲得免疫の統合的理解】

免疫系は「自然免疫(innate immunity)」と「獲得免疫(adaptive immunity)」の二本柱で構成されます:

自然免疫(非特異的・即時反応・免疫記憶なし):

  • 担当細胞: マクロファージ・好中球・樹状細胞・NK細胞・マスト細胞
  • 認識機構: PRR(パターン認識受容体)→ PAMP(病原体関連分子パターン)を認識

- TLR(Toll様受容体): 細菌LPS・ウイルスRNA等を認識→炎症サイトカイン産生

  • 応答: 数分〜数時間で活性化。炎症・貪食・補体活性化

獲得免疫(特異的・遅延反応・免疫記憶あり):

  • 担当細胞: T細胞・B細胞(特異的抗原認識)
  • 認識機構: TCR(T細胞受容体)・BCR(B細胞受容体)による特異的抗原認識
  • 発動: 初回感染では5〜7日後に最大応答(記憶なしのため)
  • 二次応答: 記憶細胞による迅速・強力な応答(ワクチンの原理)

自然免疫と獲得免疫の連携:

1. 病原体侵入→マクロファージ・樹状細胞が貪食(自然免疫)

2. 樹状細胞がリンパ節に移動→抗原提示(MHCⅡへ)→ナイーブT細胞を活性化

3. ヘルパーT細胞がB細胞を活性化→形質細胞(抗体産生)+ 記憶B細胞

4. キラーT細胞がウイルス感染細胞・がん細胞を傷害

5. 抗体がオプソニン化(食食促進)・中和・補体活性化

【脾臓の機能と脾摘後のリスク】

脾臓の主要機能:

| 機能 | 詳細 |

|---|---|

| 赤血球・血小板の破壊(赤脾髄) | 老化・変形した赤血球→マクロファージが貪食→ヘムからビリルビン産生 |

| 血液貯蔵 | 赤血球を貯蔵。出血時に放出(ヒトでは機能は限定的) |

| 免疫機能(白脾髄) | B細胞主体の胚中心で抗体産生・T細胞区画でT細胞反応 |

| 莢膜多糖体抗体の産生 | 肺炎球菌・インフルエンザ菌・髄膜炎菌等の莢膜を持つ細菌に対する抗体産生 |

脾摘(脾臓摘出)後の感染リスク(OPSI: Overwhelming Post-Splenectomy Infection):

  • 脾臓がない→莢膜多糖体抗体産生の主要拠点を失う
  • 肺炎球菌・インフルエンザ菌b型・髄膜炎菌による電撃性感染のリスクが生涯にわたって上昇
  • 対策: 脾摘後の肺炎球菌ワクチン・ヒブワクチン・髄膜炎菌ワクチンの接種

【リンパ系とがんのリンパ節転移の仕組み】

がん細胞のリンパ節転移:

1. 原発巣のがん細胞が毛細リンパ管に浸潤

2. リンパ流によって所属リンパ節(sentinel node)に到達

3. リンパ節のマクロファージ・NK細胞による排除が不十分な場合→がん細胞が定着・増殖

4. 所属リンパ節を超えて遠隔リンパ節・血流を介して全身に転移

センチネルリンパ節生検(乳がん等での外科的応用):

  • 原発巣の最初に到達するリンパ節(センチネル=見張り)にがん転移があるかを組織学的に確認
  • 転移なしなら腋窩リンパ節郭清を省略 → 術後のリンパ浮腫リスク低減

登録販売者実務に関連するリンパ系知識:

1. リンパ浮腫への対応: がん治療後(リンパ節郭清後)のリンパ浮腫の顧客への情報提供(弾性ストッキング・リンパドレナージ等)は医師指導のもとで行われるため、登録販売者は状況確認と専門家への誘導が適切

2. 扁桃炎(口蓋扁桃): 扁桃もリンパ組織(Waldeyer咽頭輪の一部)。咽頭痛・発熱を伴う扁桃炎の顧客への受診勧奨の判断

3. 免疫低下患者へのOTC薬: ステロイド長期服用・免疫抑制薬服用中の患者へのOTC薬販売では、医師・薬剤師への確認を必ず促す(感染リスク・相互作用)

リンパ系・免疫の理解は、第3章の「かぜ薬・解熱鎮痛薬・アレルギー用薬」等の薬理作用理解の基盤となります。「なぜ抗ヒスタミン薬がアレルギーに効くか」「なぜ体が細菌と戦う際に熱が出るか」を理解するには、本章の免疫生理の知識が不可欠です。

<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): 正答ウ(B細胞はすべて形質細胞・T細胞はすべてキラーT細胞=誤り。記憶B細胞やヘルパー/制御性T細胞がある)で一意。ア(リンパ管→静脈合流)・イ(脾臓の赤血球破壊と免疫)・エ(マクロファージの貪食と抗原提示)・オ(リンパ節のフィルタリング)はいずれも正しく、誤りはウのみ。自然免疫/獲得免疫・脾摘後OPSIは手引き範囲を超えるが事実として正確。段差性維持。 -->

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第2章 第3節「循環器系」 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。

関連論点

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